壁に手をついて転倒を避ける人型ロボット、フランスの研究チームが公開

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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仏Inria社の研究者らは、同社が開発している人型ロボットTALOSが不意に転倒しそうになったとき、とっさにそれを回避する「コツ」のような能力を与えようとしています。

人型(ヒューマノイド)ロボットにとって、転倒を回避することは大きな問題です。ジャイロなどを使用して転ぶ前に姿勢変更や体重移動でバランスをとるロボットもありますが、それでも許容値を超えれば転倒は避けられません。そのため、開発者らは転倒からの復帰よりも、目的の動作を完遂する方向へ焦点を当ててきました。

しかし、実際にはものごとをすべてコントロールすることはできません。ヒューマノイドロボットを実用化しようと思えば、外的な要因から想定外の要因による転倒は避けられないと思うほうが正しそうです。

人間の場合はどうでしょうか。ほとんどの人は、なにかの拍子にバランスを崩して倒れそうになったとき、とっさに近くにあるものを使って倒れないようにするという、効果的な戦略を採用します。これはごく本能的な反応で、人は意識せずとも、たとえば手の届くところにある手すりなどを掴んだり、どこかに体重を預けたりして転倒を防止しようとします。その試みはうまくいくときもあれば失敗することもありますが、何もしないよりははるかに効果が期待できます。

ところが、本能的な動作そのものがないロボットにそれを期待するのは無理というもの。あらかじめ想定されていない体勢や状態に陥れば、ロボットはおそらく硬直したまま、バッタリと倒れることでしょう。また人間と同じように倒れないようリカバリーする動作を実現するには、状態検知から、何が起きているかを理解し、次にとるべき動作を計画し、なおかつ注意深く各部の力の入れ具合を制御するという一連の動作を、すべて瞬時に実行しなければなりません。

最も厄介なのは、最後の「瞬時に」という点で、今回の実験では、TALOSの足が破損し折れてしまった場合を想定して、人間のようにそばにある壁に身体を寄りかからせて姿勢を維持させる「損傷反射」システム、D-Reflexがテストされました。D-Reflexは、88.2万回ものシミュレーションによるトレーニングを重ねたニューラルネットワークを積んでおり、ロボットは姿勢が乱れた瞬間に人とほぼ同じ速さで壁に手を伸ばして、身体を安定させることができるとのことです。

実際の動きを見ればわかるように、ロボットはバッタリ倒れるようなことはなく、人が何かの拍子に足首をグキッとやってしまったときのような動作で壁に寄りかかります。動画では4度のテストを行い、そのうち3回で効果を発揮していました。

D-Reflexは現在のところ「壁に手をついて倒れるのを防ぐことができる」だけの段階であるため、まだ転倒を確実に避けることはできません。またとっさの回避行動後も、その姿勢を維持することもできません。もっといえば、いまの実験方法は静止した状態からの転倒を実験しているため、実際の動作中に不意に転倒モーションに入った場合には対処できないとのことです。

そのため研究者らは、今度は移動中にも対応する転倒防止システムを作ることを考えています。もし歩行中に足首をグネったりしても、付近にあるイスやテーブル、その他さまざまな物体をつかめるようになれば転倒が防止でき、さらに生身の人間に近づくことになります。もちろん故障の防止にもつながることでしょう。さらに発想を飛ばせば、逆にうまく故障を避けるような転倒のしかた、受け身を教えることもできるようになるかもしれません。


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《Munenori Taniguchi》
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