米CNETは先日、昨年11月から掲載していた金融知識の解説記事が、AIで生成したものだったことが発覚、さらにその複数の記事内容に誤りがあると指摘されて批判を浴びました。そしてCNET幹部は「当面」AIによる記事作成を中止するとしていました。
米CNET編集長のConnie Guglielmo氏は1月26日にこの件に関する調査報告記事を公開し、問題となったAIツールによる記事合計77本をすべてチェックしなおしたところ、半数以上の41本の記事に修正が必要な誤りがあったと述べています。
修正を入れた記事は、先日お伝えした金融知識の解説記事「What Is Compound Interest? (複利ってなに?)」や、Certificate of Deposit(譲渡性預金:CD)の解説記事、他に「ホームエクイティローンが民間住宅ローン保険に影響をおよぼすかどうか」といった記事などが含まれ、合計41本におよぶとのことです。ただ、多くの修正箇所は、企業名が不完全であったり、表現があいまいだったりするような小さな問題だったとGuglielmo氏は述べています。
ただ、いくつかの記事では「完全にオリジナルでないフレーズを置き換えた」とされており、AIが学習の際に参照したウェブページの文章の一部がそのまま書き写されたような状態だった模様です。
テクノロジー系メディアFuturismは、1月12日に、CNETが”CNET Money Staff”名義で公開した金融関連の記事のひとつに、以前Forbes Advisorに掲載された記事とほぼ同じフレーズが含まれていることを指摘しました。
ただ、AIは意図して文章を盗用することはないので、これは記事を公開する際にCNETの編集者が剽窃チェックツールを正しく使用できていなかったか、または元ネタになった記事を特定できなかったことにも問題があったと推測されています(意図せずコピペを含んでしまうのも問題ですが)。
なお、批判を受けはしたものの、CNETは今後も引き続きAIによるコンテンツを作リ続けたい方針のようで、Guglielmo氏は「われわれはAIツールの使用いったん停止しましたが、ツールの使用と編集プロセスにおいて人によるエラーとAIによるエラー、両方を防ぐことができると確信した時点で、それを再開する予定です」「このプロセスは必ずしも簡単で見栄えのするものではないかもしれないものの、われわれは生活をより良くしてくれると信じるこの新しい技術を、これからも受け入れていくつもりです」としています。
ちなみに、The Vergeが先週、匿名の元・現CNET従業員から得た話として伝えたところでは、CNETが米CBSから現在の親会社Red Venturesに売却されて以降、編集スタッフですら一部の記事がAI生成なのかライターよって書かれたのか判然とせず、これまで何本のAI生成記事が掲載されたのか分からないとのこと。
Red Venturesのビジネス モデルは、SEOによって特定のニッチなキーワード、たとえば金融商品やクレジットカードに関するワードを用いた、Google検索結果で上位に表示されるコンテンツを量産し、そのトラフィックから金融商品やクレジットカード開設の広告アフィリエイトリンクで稼ぐ仕組みとされます。
所有するBankrate、CreditCards.com、The Points Guyといったウェブサイトはいずれもこうしたクレジットカードやローンのアフィリエイト広告から収益化しているとされ、CNETの一連のAI生成記事も、この戦略の典型的な例だと考えて良さそうです。
ただ、CNETのようなテクノロジーニュースサイトの場合、SEO収益のためにAIで記事を量産するようになれば、ライターによる本来のニュース記事や、内容の正確性がCNETの中で軽視されるようになりはしないかが気になるところです。