ChatGPTといっしょに曲作りをしてみた。俺たちコンビ、けっこうやっていけるかも(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

Googleが怯え、Microsoftが全製品に組み込もうとしている、OpenAIが誇るチャットAI「ChatGPT」を始めてみました。最初にやってもらったのは「作曲」です。

AIを使った作曲では、最近ではGoogleの「MusicLM」、ちょっと前ならソニーPCLの「Flow Machines」あたりが知られていますが、そもそもこのカテゴリーはそう新しいものではありません。


Flow Machinesではビートルズっぽい音楽を作曲させる試みをして、そのサンプル曲を聞いてみたのですが、実際には自動作曲したものを人間がアレンジし、歌詞も人間がつける仕組み。どこが自動作曲なのかわからないものになっていて、その出来も含めてちょっと納得しかねる部分がありました。

ChatGPTはもちろん作曲をするためのAIではありません。出力できるのはテキストだけで、楽譜やMIDIやオーディオデータを出すことはできません(MMLは出してみせるけどデタラメ)。それでも曲を作る上での手助けにはなるのではないかと、こんな命令を与えてみました。

make new Beatles inspired ballad song and show chord progression and lyrics with some taste of John Lennon

ジョン・レノンのテイストが入った、ビートルズにインスパイアされたバラード曲のコード進行と歌詞を出してくれ。

そしたら、ちゃんと答えが返ってきたんですよ。

▲ChatGPTへの質問と回答

Verse 1:
Am G F C
I close my eyes and see your face
Am G F C
Memories of love and grace
Am G F C
A love that once was pure and true
Am G F C
But now it's gone, and I'm feeling blue

Chorus:
G C G Am
But in my mind, it's not the end
G C G Am
I'll hold on to the love we shared
G C G Am
And in my heart, you'll always be
G C G Am
My love, my friend

長いのでそのあとは省略しますが、ChatGPTは最後にこう付け加えています。

However, please note that this is an example and should not be considered as an actual song, Also the chord progression and lyrics are not original and might be copyrighted.

これはあくまでも一つの例として挙げたもので、本物の曲だと考えてはなりません。コード進行と歌詞はオリジナルではなく、著作権のあるものである可能性があります。

なるほど。まあこのシンプルすぎるコード進行で訴えられることはなさそうだし、そもそもコード進行に音楽著作権が生じることはほぼないので大丈夫でしょう。

歌詞はすごくストレートではありますが、ちゃんと一貫したラブバラードっぽい内容で、筋は通っているように見えます。「close my eyes」が「All My Loving」、「I see your face」が「夢の人」の歌詞を思わせるところが初期のビートルズ的と言えるのかもしれません。筆者は何曲か自分で英語詞を書いたことはありますが、そんなにスラスラとは出てきません。

これなら、あとはこれにメロディーを乗せるだけ。コード進行と歌詞があれば、メロディーには制約があるからなんとかなるかなと考えて、やってみました。

ChatGPTが作った歌詞とコード進行で曲を作る

作曲に使ったのはiPadのGarageBand。これに、ChatGPTが指定したコード進行をもとに一つ一つ楽器を重ねていきます。まずはアコースティックギターで全編をやってみます。GarageBandにはAutoPlayという機能があって、それぞれの楽器について4種類のスタイルを適用し、コードボタンを押すだけで自動演奏してくれます。それを使って、ピアノ、ベースと入れていきます。

▲iPad版GarageBand

GarageBandにはポール・マッカートニー愛用のヴァイオリンベースの音色もあるので、まあそれっぽくなります。

さらに、ドラマーはリンゴ・スターのスタイルを真似た自動プレイが可能。初期から中期にかけてのビートルズっぽいドラムサウンドになります。

Verse、Chorusを繰り返し、Bridge、Outroも入れます。

さらにお化粧としてChorusにはストリングスも入れます。これもコードを指定するだけの自動プレイ。

ギターソロも少し入れましょう。GarageBandには、スケールに合った音しか出せないリードギターが指を滑らせるだけで弾けるので、マイナーブルーススケールでチョーキングとか混ぜて適当なフレーズを入れます。

あとは歌詞を元に自分で歌を入れていくだけ。ボーカル入れと修正はLogic Proを使いました。ボーカルのピッチ修正が手軽にできるFlex Pitchが超便利なのです。要所要所でハモリも入れましょう。

▲Logic Proで歌入れと最終調整

メロディーを思いつくのが大変かと思いましたが、歌詞が決まっていて、コードもそこにあり、さらに自分の音域の制限とかもあるので、それに合うメロディーはけっこう限定されます。自由になんでもいいよと言われるより、多少の制約があった方がやりやすいのです。

そんな感じで半日かけて出来上がったのがこれ。なぜかビートルズからもジョン・レノンからも遠く離れたよわよわバラードになってしまったのは筆者の実力不足なので勘弁してください。

コード進行にビートルズっぽさは……強いていえばちょっと「Let It Be」っぽさはあります。C、F、G、Amの4つしか使ってないというところが。そして、「Am-G-F-C」と「G-C-G-Am」、そして「F-C-G-Am」の3パターンしかないのです。

それでもなんとかなったのは、歌詞がよくできてるから。ちゃんと韻を踏んでいるところもあるし、メッセージは一貫している。エンディングはちゃんとホロリとさせるフレーズがきます。「I'll sing this song, and you'll always be there」って筆者のことかと思いました。これまで歌詞の自動生成は20年近く試してきたけど、満足のいくものは出てこなかったんですよね。

あ、ChatGPTにもう一つ頼むのを忘れていました。曲のタイトルです。じゃあ次は曲のタイトルも入れたやつを頼もうとやってみたところ、やつが出してきたタイトルが「Mind Games」。

おい、それはジョン・レノンの曲そのものだろう。たしかにこれは自己申告通り、著作権に引っかかりそうです。

大学の時に組んでいたバンドでオリジナルをやろうってことになって、ギタリストが「曲作った」ってやってきて弾き出したけど、それには歌詞もメロディーもついていなかったのを思い出しました。

ChatGPTが歌詞とコード進行を、コード譜スタイルで出してくれるのはとてもありがたく、ChatGPTと共作して腕を磨いたりするのも未来的で良さげな感じではあります。

ミュージックビデオにするときには歌詞をプロンプトとして出てきた絵をMemeplexから出力して使いました。

▲ミュージックビデオの画像は歌詞をプロンプトとしてMemeplexに入力して出したものから選んだ

一発で出ないときには何度も出しています。精度が上がれば、歌詞を作るたびにそれをイメージした絵がDAWの中に表示されてインスパイアされるみたいなことが可能になったりして。

そういえば、DAWに音声で励ましてくれるプラグインを作っていたボカロPがいたのを思い出しましたが、ChatGPT組み込みは、Photoshop用のStable Diffusionプラグインと同じくらい便利なものになるかもしれません。

《松尾公也》

松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

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