イーロン・マスク氏は近年、テキサス州オースティンの南西にあるバストロップ郡の一角の土地を購入しており、この場所にテスラ、The Boring Company(TBC)、SpaceXの従業員が住むための「町」を作る計画を進めていると報じられています。
Wall Street Journalによると、マスク氏はTBCとSpaceXの施設からほど近いバストロップ郡に3500エーカー(約1417ヘクタール、ニューヨークのセントラルパークの約4倍)の土地を購入しており、そこに110戸の住宅の建設を計画しているとのことです。この新興住宅街は「Snailbrook」と名付けられる可能性が高く、住宅に加えて、プール、アウトドアスポーツエリア、ジムなどが装備される予定だとされています。またモンテッソーリ式学校の設置なども計画に含まれているようです。
TBCは昨年、従業員に対して入居希望者を募集していたとされ、その家賃は寝室が2~3部屋の住宅で月800ドル前後からと言われています。バストロップにおける一般的な住宅の家賃がだいたい月2200ドル以上であることを考えると、マスク氏の会社の従業員は、市場価格よりもはるかに安く家を借りられることになります。
一方で、居住者はマスク氏の会社から解雇されたり、退職したりすれば、30日以内に退居しなければならないと計画には記されているとのこと。米国では福利厚生として社宅制度を設けることはあまり一般的ではないものの、この町は実質的に、マスク氏の会社従業員向けの社宅街ということになりそうです。なお、この町から約30分ほどのところにはテスラのGigafactoryもあり、SpaceXの従業員がこの町に家を借りることも考えられそうです。
マスク氏はこの町を、州から認可を得たひとつの自治体にすることまで考えているようです。テキサス州の法律では、町が自治体としての認可を得るには少なくとも201人の住民が必要であり、郡裁判所から承認を得なければなりません。今回の件が報じられた時点では、バストロップ郡当局はマスク氏や代理団体から申請を受けていないとしています。
とはいえ、この計画にはマスク氏の私邸を建設するプロジェクトも含まれており、計画に詳しい人々によれば、それはSnailbrookから少し離れた場所になる可能性があるとのこと。これが本当なら、まだ自治体化の申請は出ていなくとも、入居する従業員の数が揃えば、遅かれ速かれ自治体化を申請し、町長を決める選挙も行われることになるはずです。
ただ、バストロップ郡の住民からは、Snailbrookプロジェクトが環境に悪影響をおよぼすのでは、と懸念の声が出ている模様です。TBCは当局に対し1日あたり最大14万ガロン(約53万リッター)の工業廃水をコロラド川(テキサス州内を流れる川)に排出することを申請しています。またTBCのトンネル掘削機のテストが、地下水や井戸に何らかの影響を与える可能性についても懸念されています。
Snailbrookの計画は、マスク氏の従業員向けの町を作ろうとする構想のなかの、ほんの一部分かもしれません。マスク氏は、テキサス州オースティンにテスラとSpaceXの施設を建設していた2021年当時「オースティンの大都市圏に住宅を増やす緊急の必要性がある」とツイートし、嘆願書を提出していました。さらにSpaceXの施設があるテキサス州ボカチカにも、やはり従業員向けを想定した「Starbase」と呼ばれる新しい町の建設計画を立てていたとのことです。ただこちらは、SpaceXの従業員がボカチカ周辺に住むようになったものの、町の計画がどこまで具体化したのかはわかっていません。