新型コロナワクチンに使われているmRNA(メッセンジャーRNA)が人間の遺伝子を書き換える、実はマイクロチップ入りで5G通信で操作されたり身体が磁化されるなどの主張は根も葉もなく、怪文書がそう言っているだけの陰謀論にすぎません。
が、実際に米ミズーリ州議会の共和党議員がこの主張に基づき、政府や学校、雇用主がmRNAや「マイクロチップを使ったワクチン」接種を義務づけることを禁止する法案を提出しました。
この法案を提出したビル・ハードウィック議員は、新型コロナ禍のもとで人々が「正気を失った」と考えており、当局や雇用主がワクチン接種を義務付けることを禁止するのは「正しいことだと感じている」と述べています。
本法案が禁止するのは新型コロナのワクチン接種義務づけだけではなく、mRNAワクチンの投与そのものも含まれます。つまり今後、コロナ以外の感染爆発が起こった場合も、mRNAワクチンそのものが対象となることに。
また「ヒトのDNAまたはヒトゲノムを編集または変更することを意図または設計した治療または処置」、および「皮膚の下に埋め込む機械的または電子的装置」すなわちマイクロチップの使用義務づけも禁止されています。
要はハードウィック議員は「mRNAワクチンが人々のDNAを書き換える」「新型コロナワクチンにマイクロチップが含まれている」という二大陰謀論を信じ切っているようです。そういえば、Twitterもすでに新型コロナの誤情報を規制しなくなっています。
さらに本法案では、すべての雇用主および公立大学に対し、反ワクチン的な「心から信仰する宗教的信念(道徳的信念も含まれる)」を持っている人に対して、あらゆるワクチン接種義務の免除を求めることさえしています。
しかも議員が個人的に暴走しているというわけではなく、ミズーリ州の下院議会は非公式の投票で本法案を可決。とはいえ、今後は第三読会を経る必要があり、そこで可決された時点で上院に審議が移されることになります。
もちろん反対意見も上がっており、例えば民主党のアシュリー・アウネ議員は本法案を「絶対に正気の沙汰ではない」と非難。またミズーリ商工会議所も「職場でワクチンを義務づける企業の法的権利に、政府が介入すべきではないと考えている」と語っています。
この法案は、全米各地でワクチン接種にブレーキを掛けようと、共和党議員らが起こしている数ある動きの1つに過ぎません。2023年内だけでも、すでに20州でワクチン接種免除に関する53もの法案が提出されているとのデータもあります。
もしもミズーリ州で法案が成立してしまったなら、やがて全米に波及し、ひいては新型コロナ以外のパンデミック対策に大きな支障をきたす可能性もあるはず。大きなうねりに発展しないよう祈りつつ、今後の展開を見守りたいところです。