ボーイング747に宇宙ロケットを装着し、上空からリリースすることで安価に衛星を軌道へ打ち上げるサービスの展開を目論んでいたVirgin Orbitが、事業継続のための資金を調達できなくなり、「当面の間」事業を停止することを明らかにしました。
CNBCはこの決定は木曜日の夕方に開催された全社会議で従業員に伝えられ、ほぼすべての従業員が解雇されると伝えています。Virgin Orbitのダン・ハートCEOは「残念ながら、この会社に明確な道筋を提供するための資金を確保できなかった」と伝え、「われわれにはもはや、いますぐに劇的かつ非常に痛みを伴う方針変更を実行する以外の選択肢がなくなった」と述べました。
米証券取引委員会(SEC)に提出された書類によれば、解雇は全社に及び、全体の85%に当たる675人が対象になるとされます。ハートCEOは「離職するすべての従業員に退職金パッケージを提供する」予定だと述べ、現金の支払い、福利厚生の延長、および新しい職場をみつけるためのサポートを提供するため姉妹会社であるVirgin Galacticとの間で雇用に向けた「パイプライン」を用意するとしました。
2017年にVirgin Galacticからスピンオフして設立されたVirgin Orbitは、改造したを施したボーイング747、通称Cosmic Girlに約230kgまでのキューブサットなどのぺイロードを搭載したロケットLauncherOneを装着して離陸させ、高度1~1.5万mでロケットを分離、点火して軌道へと届けるサービス。
2019年には上空でロケットを投下する試験を行い、続いてイギリス軍との間で小型人工衛星の打ち上げに関する契約を結ぶなど、当初の計画は順調なものでした。しかし、2020年に行った、初めてのLauncherOneへの点火打ち上げ試験では、ロケットの分離はできたものの、燃焼がうまく機能せず、打ち上げは失敗に終わりました。
とはいえ、失敗は成功のもとというように、この打ち上げ試験で得られたデータをもとに改善。開発を続けたVirgin Orbitは、つづく2022年1月に行われた2度目の打ち上げ試験では、みごとに10基のNASAのキューブサットを地球低軌道に届けることに成功。6月には初の商業打ち上げもこなし、Virgin Orbitは民間が開発したロケットでペイロードを軌道に届けることに成功した企業の仲間入りを果たしました。
そして、その後も2022年1月、7月と順調に打ち上げを成功させていたものの、今年1月に実施した英国の土地からの初の商用宇宙打ち上げを記念する「Start Me Up」イベントで問題が発生します。この打ち上げでは、ロケットは親機から正常に分離したものの、ロケットの上段に何らかの異常が発生し、ペイロードを失う格好に終わってしまいました。後の調査では、この異常の原因がたった100ドルの燃料フィルターだったことが判明しています。
これ以降、Virgin Orbitは資金調達が難しくなり、Virgin Groupを率いるリチャード・ブランソン卿から一時的に5500万ドルを得たもののの、それ以上の資金投下は得られず、ライフラインとなる投資家を探さなければならなくなっていました。