ポール・マッカートニー、AIでデモテープからジョン・レノンの歌声を取り出した「ビートルズ最後の新曲」を今年リリース予定と発言

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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英国の歌手ポール・マッカートニーが、カセットテープに収められたデモから故ジョン・レノン本人のボーカルだけをAIで取り出し、それを元にしたビートルズ最後の新曲を現在制作中であることを明らかにしました。

マッカートニーはBBC Soundsのポッドキャスト番組でAIについての質問に対し、まさにいまそれを駆使して楽曲制作に取り組んでいると答えました。そして、2021年にピーター・ジャクソン監督のもとで制作されたドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ:Get Back』の話を持ち出し、そのときにヨレヨレに劣化したテープから伴奏や背景ノイズを除去し、レノンの声を取り出す作業にAIを使用した経験が今回の作業に活用されていると説明しました。

マッカートニーは、「ビートルズ最後のレコードを制作するために、ジョンが残していたデモをもとにわれわれが作業し、ようやく仕上げたところだ。それは今年のうちにリリースされる予定だよ」と述べ、「AIのおかげでジョンの歌声を自然なものにできたので、あとは普通のレコーディングのようにミックスすればいい。ある意味、余裕ができたね」としました。

BBCは、このビートルズ最後の曲が何かはわからないものの、おそらく1978年にジョンが作曲しデモとして残された「Now And Then」だと予想を伝えています。この楽曲に関しては、マッカートニーも過去に「いつか完成させたい」とその考えを語っていました。

すでに、マッカートニーはグラストンベリー・フェスティバルを含む最近のステージにおいて、クリーンアップしたレノンのボーカルトラックを使用した楽曲「I've Got a Feeling」をセットに取り入れており、映像のレノンとの共演を演出しています。

すでに死去した音楽アーティストを、AIなどを駆使して再現することについては、業界の専門家らの間でも様々な意見が出ています。

たとえばモーションキャプチャーとリアルタイムのCG合成技術を用いたデジタルアバターで、全盛期のABBAを再現するライブツアーを大成功させたABBAのビョルン・ウルヴァースは、その制作過程を描いたドキュメンタリー番組『ABBA Voyage』に関するインタビューのなかで、自分たちのディープフェイクを作ることとそれを悪用される可能性について不安を述べています。

またマッカートニーも、レノンの声をAIで複製することについては「良い面もあれば、少々怖いと思う面もある。それがどうなっていくかは見守るしかない」と述べています。

ちなみに、注目されているビートルズの未完成曲『Now And Then』は、1995年にリリースされた『Anthology』シリーズの制作の際にも、ビートルズを再結成する場合に目玉とする新曲候補とされていました。しかし、メンバーはレノンのテープにあった別の2曲、『Free As A Bird』と『Real Love』をレコーディングし、当時バンドにとって25年ぶりの新曲として発表しています。

『Now And Then』が選ばれなかった理由については、プロデューサーのジェフ・リンいわく「この曲にはサビ(chorus)はあったものの、Aメロ(verses)がなく、ラフなバッキングトラックを録音しただけだった」と説明。また、マッカートニーは、当時はジョージ・ハリスンがこの曲を「fucking rubbish(酷いゴミ)」と呼ぶほど気に入らず、作業を拒否したことがボツになった理由だと、後に明かしています。

Anthologyでのビートルズ新曲のときには、ボーカルトラックだけを抜き出す技術は確立されていませんでした。このため、「新曲」でのレノンのボーカルはくぐもったような声質ですし、ローファイなピアノも残ったままです(ボーカルと一緒なので消せない)。Free As a Birdにはサビがなかったため、マッカートニーが作曲し歌っています。

現在ではジャクソン監督の会社が得意とする音源クリーンアップ技術はより一般的なものとなり、ボーカルだけ取り出す(ボーカルアイソレーション)ならそこそこ上手くできるオープンソースソフトが誰でも利用できるようになっています。

たとえばAIボイスチェンジャーとして人気のRVC WebUIには、UVR5というボーカル分離機能がついています。この技術を使って取得したボーカルトラックをさらにAIに学習させ、そのAIモデルに故人を含む歌手に勝手に歌わせることが可能です。

ですが、今回はAIを使ったといっても、ボーカルアイソレーションにAI技術を使っただけであり、「AIを使ってポールが勝手にジョンに歌わせている」というわけではありません。技術的にはもちろん可能ですが、そこまで踏み込んだものではないことを念押ししておきます。




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《Munenori Taniguchi》

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