アップルは先週から、空間コンピュータことVision Proの開発者向け機材貸し出しと、対面式のデベロッパラボの申込みを世界各地で開始しました。
しかし、これまでのところ米国でのデベロッパラボは申込みが少ないようだと、著名ジャーナリストが主張しています。
Vision Proのデベロッパラボは、アップルのエンジニアによる補助を受けつつ、実際のVision Proハードウェア上でvisionOS/iPadOS/iOSアプリを動作させて最適化できる場です。
アップルの社内事情に詳しいBloombergのMark Gurman記者によれば、現時点で申し込みが少なく空きが出ているものの、一部の開発者はラボが全米でもアップル本社のクパチーノ1か所でしか開催していないことを指摘しています。
実際アップルは、デベロッパラボの開催場所は「クパティーノ、ロンドン、ミュンヘン、上海、シンガポール、東京」だと述べています。少なくとも米国と英国、ドイツや中国、日本では1つの都市でしか開催しないと言っているわけです。
もちろん、「開催場所が国内で1箇所」だけが申込み状況が振るわない理由とは限りません。考えられる理由の1つは、ほとんどの開発者がまだVision Pro上でアプリをテストする準備が出来ていないこと。
一般消費者向けにVision Proが発売されるのは2024年初め、しかも当初は米国のみ。その時期が近づけば、ラボの申込みは増加する可能性は高いでしょう。またアップルも、その頃には米国でもクパチーノ以外の大都市、たとえばニューヨークで提供するかもしれません。
また、もう1つはVision Proデベロッパキットを申し込んで、アップルからの返事を待っている開発者が多いかもしれないことです。申請はそれぞれ審査され、「visionOSの機能を活用するアプリの開発に携わっている」と判断された人が優先的に選ばれます。デベロッパキットにはVision Pro実機の貸し出しも含まれており、実機でのテストのためにクパチーノまで行く必要もありません。
このデベロッパキットについては、申込みを承認された開発者は、まず計測アプリを使い、ヘッドバンドとライトシールのサイズを申告する必要があること、視力矯正レンズが必要な場合はカール・ツァイスから直接届けられることが公式の規約から明らかになっています。
このサイズ計測アプリは、2024年の一般販売時にユーザー向けに提供されるというiPhone用顔スキャンアプリと関係があるのかもしれません。
またデベロッパキット・プログラムの規約では、キットの取り扱いに厳重注意の義務を課しています。たとえば「DK(デベロッパキット)へのアクセス、DKの使用、およびDKの保管はすべて、お客様および御社の承認された開発者のみがアクセスできる、プライベートで安全なワークスペース(堅牢なドア、床、壁、天井で完全に密閉され、DKの使用中に施錠できるものなど)で行うことに同意するものとします。権限のない人(家族、友人、同居人、家庭の使用人を含む)が DKにアクセスしたり、見たり、扱ったり、使わないようにしなければなりません」。
また米MacRumorsは、アップルの開発者向けサイトで「キットを返品する際にAirTagのペアリングを解除する」ワークフローに言及していることから、アップルがAirTagを使ってVision Pro実機を管理していると推測しています。
これだけ管理が厳重であれば、デベロッパキットの申請が受理される開発者も厳選されるのかもしれません。