「クローン羊のドリー」作り出した発生学者イアン・ウィルムット氏が79歳で死去。

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Munenori Taniguchi

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1996年、世界初のクローン羊「ドリー」を作り出したチームを率い、再生医学研究の道を開いた再生学者、イアン・ウィルムット氏が死去したと、英エディンバラ大学が発表しました

クローン羊のドリーは、体細胞核移植(SCNT)と呼ばれるプロセスを用いて成体細胞からクローン化された初の哺乳類でした。

ドリーのケースにおいては、羊の卵を採取してDNAを除去し、それ以前に死亡し冷凍保存していた羊の乳房細胞から取り出したDNAに置き換えました。そして、この卵に電気刺激を与えることで受精した胚のように成長を促したのち、代理母となる羊に卵を移植して胎児として成長させ、誕生に至ります。

ドリーが実際に誕生したのは1996年でしたが、当初はそのことは公表されず、1997年に初のクローン羊誕生が明らかにされました。この発表に際して、ウィルムット氏はクローン羊の研究は新しい医療治療法を開発するための技術だというメッセージを込めました。

しかし、大衆の反応は、人間のクローンを作ることも可能なのか、それはいつになるのかなどといったものが大半を占めることになり、当時の米国大統領、ビル・クリントン氏によって、人間に対するクローンの実験を禁止することが宣言されました。

ドリーはその後2003年に寿命を全うしましたが、これまでに羊だけでなく、馬や牛などの哺乳類のクローンも作られ、さらにはマンモスを現代に復活させる研究も慎重に行われています。

ウィルムット氏は、1997年には遺伝子組み換えした最初のクローン哺乳類となる、羊の「ポリー」も作り出しています。ポリーは「血友病を持つ人々に欠けているタンパク質を生成する羊」を作る方法の研究のため、宿主となる羊の遺伝子にヒトの遺伝子を組み合わせて生まれました。

ウィルムット氏はその後エディンバラ大学に移り、再生医学用幹細胞を作る研究を行いました。現在ではIPS細胞を用いた研究が盛んになっていますが、ウィルムット氏は2008年にこれを指示する考えを表明し、ドリーを作った体細胞核移植の技術を放棄しています。またこの年にウィルムット氏はナイトの称号を授与されています。

2012年に退職した後、2018年にウィルムット氏はパーキンソン病であることがわかり、その後はこの病気の進行を遅らせるための新しい治療法の研究を後援していました。

ちなみに、ドリーの名前は歌手のドリー・パートンに由来すると言われています。また1997年にリリースされたジャミロクワイの大ヒット曲『Virtual Insanity』は、その未来的な技術に対する倫理的な懸念といったテーマの歌詞から、ドリーのことを歌ったのではないかとも一時期うわさされましたが、これに関してはドリーの誕生よりもレコーディングされた時期のほうが速かったことが判明しており、無関係とされています。


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