かつては世界最大を誇った巨大反射鏡が崩落したアレシボ天文台、電波天文台ではない再出発が決定

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Munenori Taniguchi

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米国科学財団(NSF)が、プエルトリコのアレシボ天文台を教育施設として再出発させるため、4つの機関に管理を移すと発表しました。

アレシボ天文台と言えば、1963年に完成した口径305メートルの巨大反射鏡がトレードマークの電波天文台。2016年に中国が500m球面電波望遠鏡(FAST)を完成させるまでは世界最大の反射鏡として知られています。映画『コンタクト』や『007/ゴールデンアイ』では、アレシボの巨大なボウルのような反射鏡が登場したのを覚えていることでしょう。1992年にそれまで確認されたことがなかった太陽系外惑星を初めて発見したのもこの施設でした。

しかし2020年8月、それまで地震やハリケーンの襲来にも耐えてきたアレシボ天文台の副鏡の一部が崩落して主鏡を壊し、同年12月にも主鏡の上に吊り下げられている900tのプラットフォームが落下して壊滅的な被害が発生したため、長年この施設に資金提供してきた米国科学財団をはじめとする運営者らは、アレシボの天文台、天文学研究施設としての役割を終了し、敷地内設備を教育施設として改修する方針を打ち出していました。

今回の発表では、アレシボを生物学やコンピュータサイエンスなどの科学教育と、地域社会への支援に重点を置く教育センター(通称アレシボC3)として運用していくため、米ニューヨーク州にある生物学・医学を専門とするコールド・スプリング・ハーバー研究所、米メリーランド大学ボルチモア・カウンティ校、プエルトリコ大学リオ・ピエドラス校、プエルトリコ・サンファンのUniversity of the Sacred Heartの4機関に運営を引き継ぐとしました。またNSFは、引き続き今後5年間で550万ドルを投じて、このプロジェクトを推進していく計画です。

コールド・スプリング・ハーバー研究所の関係者は、アレシボC3について「計算スキルの必要性、科学をすべての人の生活に統合する必要性を教育し、そして最終的にはコミュニティの人々に手を差し伸べることが、科学センターの役割だ」と述べています。すべてが計画通りに進めば、このセンターは 2024年初めに開設される予定。

アレシボC3は、部分的に天文学ではなく生物学、特に遺伝子研究の支援に移行するとしており、旧天文台周辺の動植物からDNAサンプルを収集し、短い遺伝子配列またはバーコードから標本を特定し、地域の生物多様性をカタログ化していく計画だとされています。

ただ、研究者のなかにはアレシボが天文学研究の第一線から退くことを残念に思う人もいるようです。NatureはアレシボC3の構想を打ち出しても、世界最大規模の望遠鏡を使用した観測や現場での活発な研究がなければ、以前ほど多くの有能な学生たちが集うのは難しいかもしれないとの懸念を伝えています。


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《Munenori Taniguchi》
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