Google Pixel 8 Proを使った感想。先代7 Proから買い替えの価値はある? 細かく試して出した結論(Google Tales)

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佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

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今年も10月に「Made by Google」イベントで新しいPixelスマートフォンが発表されました。

今回の「Google Tales」は、先代の「Pixel 7 Pro」ユーザーが「Pixel 8 Pro」を数日触ってみての感想です。なお、「Pixel 8」は持っていないので、ここではほぼ触れません。

▲Pixel 8 Pro(左)とPixel 7 Pro

パッと見は変わらないけど神は細部に宿る(見た目について)

Pixel 8 Proのカラーバリエーションは、先代と同じ3色で、Obsidian(黒)はそのままですが、Hazel(グレイ)とSnow(白)がなくなって、Porcelain(クリーム)とBay(青)になりました。私のはBayで、涼やかな水色です。ステンレスからアルミに変わったフレームはBayの場合はシルバーで、この組み合わせは上品な感じ。

▲カラーは3種類

先代からの見た目の違いとしては、まず、「なんだか傷が付きそうでやだなー」と思わせていたディスプレイのはしっこがカーブしている「エッジディスプレイ」ではなくなり、フラットディスプレイになりました。

▲Pixel 7 Proのエッジディスプレイ。ぶっちゃけ不評でした

私はディスプレイ保護シートもケースもなるべくつけない派ですが、保護シート派の人にとってはこれはとても嬉しい変更でしょう。

ケース付けない派にとってもう1つ嬉しいのは背面ガラスがマット加工になったことです。先代はつるっつるで滑りやすかったので、仕方なくケースを付けていました。マット仕上げでもけっこう滑らかではありますが、滑って落とすことはなくなりそうです。これは画像ではうまく表現できません。ぜひ触ってみてください。

そして、本当にわずかながら、先代より小さくなりました(高さ0.3mm、幅0.1mm、厚さ0.1mm)。手の小さい私にはとても助かります。重さは1g増えたんですが、小型化とマット仕上げで手に馴染むので、重くなったとは感じません。

背面のカメラバーには賛否両論ありますが、テーブルに仰向けに置いた時の安定性と、手に持ったときに人差し指がバーで止まって滑らない感じが私は好きです。バーの厚みが先代よりわずかに増し、仰向けに置いた時の傾斜がほんの少し大きくなりました。バーのはしっこのカーブもちょっと急になっています。

▲カメラバーが厚くなって傾斜が大きくなった(左がPixel 8 Pro)


熱くなる件

バッテリー容量は5000mAhから5050mAhに増えました。公称のバッテリー駆動時間は先代と同じ24時間以上で、スーパーバッテリーセーバーで72時間となっています。体感として、朝100%なら(私は動画とかゲームとか見ないので)1日持つ感じです。

先代は一所懸命働いたり無線充電したりすると、とても熱くなることがありました。

Pixel 8 Proはどうか? というと……残念ながら、やはり熱くなります。正確な比較はできませんが、ずっとPixel Standに置いたままにしたり、「レコーダー」アプリで長時間録音したりしていると、先代と同じくらい熱くなります。

正直、次に紹介する「温度計機能」で自分自身の体温を測ってくれればいいのにと思います。

謎の温度計機能(将来に期待)

Pixel 8 Proのウリの1つとして、「温度を測れる」というのがあります。「温度計」アプリを開き、カメラバーに新たに追加された温度センサーを測りたい物質に近づけてボタンをタップすると画面に温度が表示されるというもの。

▲温度計機能

コーヒーとか缶ビール(の缶の外側)とか測ってみましたが、150度まで測れると言われても、天ぷらの油につっこんで温度を測れるわけではないし、実用度はどうだろうという感じ。

▲コーヒーを測定。湯気が当たるのがなんだか嫌

▲缶ビール。外側はそれほど冷たくない(当たり前)

Googleさんは哺乳瓶のミルクの温かさを確認するのに便利と言ってますが、どうでしょう。実際には将来、これで測定した体温をFitbitに保存できるようにするのが真の目的のようです。米国で申請書をFDA(米食品医薬品局)に提出したそうです。

カメラのAI機能

Pixelと言ったらカメラ機能です。撮影が苦手でも、ある程度見られる写真が残せます。

物理的にも、背面のトリプルカメラの超広角が1200万画素から4800万画素にグレードアップし、奥行き感が増します。

でも、なんといってもプロセッサがさらにおりこう(Tensor G2からG3へ)になったことで可能になったAI採用の新機能がウリです。

集合写真で全員を「いいお顔」に合成できる「ベストテイク」、写真の主役の位置やサイズを直したりできる「編集マジック」、動画の音声のノイズを除去する「音声消しゴムマジック」、「マクロフォーカス」の強化、カメラの設定をマニュアルで操作できる「プロ設定」、夜景モードや天体写真、シネマティックぼかし、動画でも夜景モードにできる「動画ブースト」(近日提供予定。これだけクラウド側での編集になるそうです)など、盛りだくさん。この中から「編集マジック」「ベストテイク」「音声消しゴムマジック」「マクロフォーカス」だけご紹介。ちなみにデジタルズームは先代と同じ30倍までです。

「編集マジック」は消すだけじゃなく位置変更も

5月のGoogle I/Oで紹介していた「編集マジック」が使えるようになりました。主役以外を消す「消しゴムマジック」機能に加え、主役を中心に移動したり大きくしたりできます。バストショットで写っている主役を少し上にずらすくらいならあまり不自然にならないように胸から下を追加してくれますが、限界はあります。Tensor G3が頑張ってるようですが、生成にはそれなりに時間もかかります。

▲猫まるごとを大きくするのはわりと簡単

「トップショット」より一歩先行く「ベストテイク」

Pixelには以前から「モーションフォト」から一番良さげな画像を選ぶ「トップショット」という機能があります。被写体が1人(1匹)であれば、一番いい表情の画像を選びやすいですが、集合写真だと全員がいいお顔になる瞬間など、なかなかありません。そこで、変顔になった人の顔だけ数枚撮影した写真の中から選んで切り貼りする、というのが「ベストテイク」です。体の向きまで大きく違うと不自然になりそうですが、何枚かやってみたところ、さすがAI、わりと自然に変えられました。

「音声消しゴムマジック」でカラスの声でもメインにできた

写真用の「消しゴムマジック」はテレビCMのお陰で「フワちゃんが使ってるやつでしょ?」と言われるくらい有名です。「音声消しゴムマジック」は、その音声版。消えてほしい音を消す機能です。

デモでは人の声の背景の犬の鳴き声やサイレンを消すというのをやっていましたが、ちょっといじわるにカラスの鳴き声と飛行機の音という、どっちがノイズだか分からないようなサンプルで試してみました。

ちゃんとカラスの声だけになりました。AIは、「声」「音楽」「風」「自然」「ノイズ」などに聴き分けるようで、カラスの鳴き声は「自然」と、飛行機の音は「ノイズ」と判定したようです。

▲カラスの鳴き声だけに編集してもらえました

さらにドアップが撮れるようになった「マクロフォーカス」

「マクロフォーカス」は、被写体にカメラを近づけると自動で超広角レンズに切り替わり、ピントの合ったきれいな写真が撮れるというもの。花の写真を撮るのが好きなので、先代でもよく使っていました。

先代では近づけるのは3cmまででしたが、これが2cmまで近づけるようになりました。

▲このくらい近づいて撮影した薔薇(中央が8 Pro、右が先代)

「プロ設定」はプロじゃないと

「プロ設定」は、自動でプロみたいに撮影してくれる、のではなく、AIより上手に設定できるプロ向けの、手動でフォーカスやISOを調整できる機能です。つまり、私にはまったく関係ない機能ではあります。

▲プロ設定の画面

その他の使えそうなAI機能

AI機能はPixel 7でも使えるものも多いです。でも、Googleのハードウェアの親玉、リック・オステルローさんによると、Pixel 8 Proの生成AIモデルはPixel 7(Pixel 7 Proじゃないところが気になるけど)の最大150倍の計算量で実行するんだそうで、その能力を生かした機能がこれからも増えそうです。

英語版だと「通話アシスト」機能が電話の着信に代理で応対してくれて、スパムには礼儀正しく切り、必要な電話だと判断すると繋いでくれる機能が使えるんですが、これがいつ日本に来るかはまだ不明です。

「自動字幕起こし」はPixel 8 Proの、というよりAndroid 14の機能。[設定]→[ユーザー補助]→「自動字幕起こし」で設定すると、SNSの動画の音声を字幕にして見せてくれます。もともと聴覚障害者向けの機能ですが、音声オフにして見るときに便利です。設定しておくと、英語は日本語に翻訳した字幕を表示してくれます。

▲「自動字幕起こし」。翻訳もしてくれます

同じくユーザー補助機能に小さい文字を拡大して読めるようにする「拡大鏡」もありますが、これはカメラでズームするので代用すればいいかなと思います。

「レコーダー」の新機能も、Android 14になったら先代でも使えるようになったんですが、文字起こしで録音開始時点の言語を自動検出してくれるようになりました。これまでは、日本語設定にしておいて英語の話者を録音するとちゃんと文字起こしできなかったんで、助かります。ただし、ずっと前に「将来的には1つの録音中に複数の話者が多言語を話すとそれも検知してちゃんぽんに対応するよ」と言っていたと思うんですが、それはまだできないようです。

そして、これもいつから使えるかはまだ不明ですが、Made by Googleイベントでは、画面にWebページを表示した状態で電源ボタンを長押しすることで、そのページのテキストを読み上げたり、翻訳して読み上げるデモが披露されました。

Googleアシスタントに「Bard」を統合する「Assistant with Bard」もおそらく真っ先にPixel 8 Proで使えるようになるでしょう。

Pixel 8 Proは買いなのか?

Pixel 8 Proは先代より3万円以上高いです。先代を持っていたら考えちゃうところ。

ただ、Pixel 8シリーズからは7年サポートになるので、今年買って、しばらくそのまま、というのはアリだと思います。

それにしても7年って。「Pixel 15」が出ても、まだPixel 8が使えるということですよね。いろいろ墓場に持っていくことで知られるGoogleさんではありますが、まさかPixelシリーズがこの先7年続かないということはないですよね。

Pixel 8について触れてきませんでしたが、高機能を使い倒したいのでなければ、コンパクトになったPixel 8はかなり魅力的です。

これまで、無印とPro、さらに半年後に出るaシリーズの3モデルの位置づけがよくわからなかったんですが、大きくてもいいから最先端高機能がいい人のためのPro、コンパクトで使いやすい無印という感じに少しはっきりしました。そうなるとaシリーズはどうなるんだということで、個人的にはPixel 8aは出ないんじゃないかと思っております。

最後に、いつも自分のために作っている比較表を。先代から変わった部分を赤字にしてあります。

▲Pixel 7、Pixel 8、Pixel 7 Pro、Pixel 8 Proスペック一覧

《佐藤由紀子》

佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

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