AppleシリコンM3三兄弟、MacBook Pro、iMac。それぞれの買い時を考えた(村上タクタ)

ガジェット PC
村上タクタ

フリーランスライター。1969年京都府生まれ。バイク雑誌編集者に憧れて上京し経歴を開始。ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌、デジモノの雑誌をそれぞれ7〜10年編集長として作る。趣味人の情熱を伝えるのがライフワーク。@takuta

特集

M3シリーズチップセットと、それを搭載した14/16インチのMacBook Pro、そして24インチのiMacが発表された。全体として見れば、Macのシリーズがまた大きくアップデートされ、高い性能を得られるようになった。しかし、『我々個人の買い物』という側面で考えると、Mシリーズチップの進化と、価格、自分のニーズを組み合わせるのが、なかなか難しい……と思える発表会だったのではないだろうか?

たとえば、今回M2のMacBook Airを買おうと思っていた人は肩透かしを食らったわけだし、iMacがM2になったら買おう……と思っていた人は買い時を得られないまま、M3登場まで待ってしまったわけだ。Apple Silicon Macの買い時はなかなか難しい。

MacBook Pro 14インチ(M3)は、MacBook Pro 13インチの後継だが、位置づけは変わった

筆者が特に今回、興味深いと思ったのは『MacBook Pro 13インチの廃盤』と『MacBook Pro 14インチ(M3)への継承』だ。

MacBook Pro 13インチは奇妙な製品で、M1、M2世代においては、最新のMacBook Airと同じチップセットを、2016年から使っているMacBook Pro 13インチの古いボディに搭載して『Pro』として売っていたモデルだ。筆者としては『お勧めしない』としてきたのだが、「『Pro』の名が付くのに安価」ということで、案外人気だった。アップル曰く『世界で2番目に売れているノートパソコン』というほどの存在だったのだ。

▲MacBook Pro 13インチ(M2)は、名ばかりの『Pro』といってもいい、Airと同じチップセットを古いボディに乗せた製品だった

『古いボディに最新のチップセット』というのはアップルがよく使う手法。たとえば、iPhone SEシリーズなどがその顕著な例だ。筐体はiPhone 8という2017年に発売された製品のものを踏襲しているのに、発売当時(2022年3月)最新だったA15 Bionicを搭載して、低コストで高性能(かつ最新のOSに適合させやすい)製品を作り上げた。チップセットは大量に作れば作るほどコストの下がる製品なので、こういった製品を使って全体のコストを下げることができるのだ。

そんな手法を使った製品だった、13インチMacBook Proがついに終売となり、その後継はM3チップを搭載したMacBook Pro 14インチとなった。

米国では「1599ドルから。安い!」というアピールだったが、今の円安日本では24万8800円(税込)となってしまい。安い感じはしない。

とはいえ、美点も多い。

1600ニトのピーク輝度を持つ3024 x 1964ピクセルのLiquid Retina XDRディスプレイは最上級のものだし、フォースキャンセリングウーファーを備えた、6スピーカーサウンドシステムもノートパソコンとは思えない素晴らしいサウンドを実現している。1080pのHDカメラ、MagSafe 3、2つのThunderbolt / USB 4ポート、HDMIポート、SDXCスロット……と拡張性も十分だ。そういう意味ではMacBook Air(M2)よりかなりゴージャスなマシンになっている。これぞ、本来の『MacBook Pro』というべきだろう。

▲新しいMacBook Pro 14インチ(M3)は、『Proシリーズの末弟』というに相応しい製品になった

最大22時間という、おそらくノートMac史上最長のバッテリーライフも用途によっては大きなアドバンテージだ。

ただし、メモリは最大でも24GBとなっている。これはおそらくM3チップの制約で、いたし方のないところなのだろう。

MacBook Pro 14/16インチは諸手を挙げてお勧めできる高性能ノート

M3 ProとM3 Maxを積んだMacBook Pro 14/16インチについては、お値段相応、いや、お値段以上のハイパフォーマンスマシンとなっている。

動画編集、音楽編集、3Dグラフィックス、学術研究、ソフトウエア開発……などの、性能が必要だが、それに応じたコストはかけられる……とうい場合には、不満のないパフォーマンスを得られるはずだ。こちらは、予算さえあれば最大128GBのユニファイドメモリを搭載できる。

▲MacBook Pro 14/16インチは、プロ用ノートブックとして、欲しいだけの性能を得られる素晴らしいマシンだ。予算さえあれば……

Mシリーズチップは、だいたい世代ごとに15~20%ほど性能向上が見られるが、上位モデルはさらにメディアエンジンなど、カスタムテクノロジーが搭載され、速度の向上幅が大きいので、お買い得でもある(今回は最上位モデル以外はメモリ帯域が減っている……などの微妙な落とし穴があるようなので、その点は注意)。

予算さえあれば、好きなだけハイパフォーマンスなマシンを作れるMacBook Pro 14/16インチは、安心して勧められるモデルだ。

iMacは良いモデルだが、上位モデル登場の夢は実現せず

iMacに期待していた人はどうだろうか?

iMacにはついにM2搭載モデルは登場せず、M1から一気にM3搭載へとステップアップすることになった。「iMac M2が出たら買おう」と思っていた人は、長い間待たされた揚げ句、一気にステップアップになったというわけだ。

これ自体は喜ばしいことだが、インテル版27インチからの乗り換えを考えて、より大きなiMacの登場を期待していた人は、今回も残念な思いをすることになった。もう、大型のオールインワンモデルは出ないのだろうか?

▲従来と同じ7色のカラーをまとったiMac 24インチは『ホームコンピュータ』というに相応しい存在に仕上がっている。が、より大画面と高性能なチップを搭載したモデルを期待する声も多い

iMac 24インチは、一般の方のための普段使いのオールインワンとしては、非常に素晴らしいマシンだ。しかしながら、メモリは最大でも24GB。GPUも10コアまでと、性能向上の幅が狭い。iMac 27インチの上位モデルや、iMac Proのような『高性能オールインワンモデル』を期待する人は多いと思う。

アップルに言わせると、「Mac miniや、Mac Studioに大きなディスプレイを組み合わせて欲しい」ということになるのだろうが、31.5インチあたりのディスプレイにM3 ProやM3 Maxを組み合わせたiMacが出てもいいと思うのだが……。放熱システムを含めた設計が、iMac 24インチほどスマートに出来ないのだろうか? 今のところ期待は裏切られ続けている。

Magic Mouse、Magic TrackPad、Magic Keyboardが、Lightningコネクターのまま……という点も含めて、どうもこの分野には本腰が入っていないような気がする。

今のMacは『欲しい時が買い時』

おそらく、現状、一番多くの人に期待されているのはMacBook Air 13インチ(M3)だろう。

M1、M2の時に、世代の先陣を切って更新された、稼ぎ頭であるMacBook Airが登場しないのは少し不思議だ。MacBook Pro 14/16インチの登場に注目を集めるために、MacBook Airを後回しにしたのだろうか? アップルが12~2月の間に新製品を発表することはあまりないので、ここで発表されなければ春まで待つことになるのだろうか? まさか、iMacがM2搭載をスキップしたように、MacBook AirがM3搭載をスキップする……などということはないと思うのだが。

▲世代が分かりやすくなった分、最新世代のマシンを買いたくなる。しかし、出るかどうか分からないのだから、今欲しいマシンをすぐ買うべきだ

M3シリーズが登場しはじめると、M2世代のMac miniや、Mac Studio、Mac Proは少し色あせて見えるというか、M3世代搭載機を期待してしまう。しかし、前述の事情で、今出なければ春まで登場することはないだろう。

先にも述べたように、Mシリーズチップは世代の違いが分かりやすいから、つい最新世代のものが搭載されることを期待してしまう。しかし、世代ごとの性能差は15~20%。いつ出るか分からない新世代機を期待して待つよりは、今売ってるモデルを買って、一刻も早く使い始めた方がメリットは大きいのではないだろうか?

Mシリーズチップ搭載機は次世代機をつい待ってしまうが、『欲しい時が買い時』と思った方が良い。

中でも更新されたばかりのM3シリーズ搭載のMacBook Pro 14/16インチ、iMacは、今購入を検討しておくべきモデルだろう。

《村上タクタ》

村上タクタ

フリーランスライター。1969年京都府生まれ。バイク雑誌編集者に憧れて上京し経歴を開始。ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌、デジモノの雑誌をそれぞれ7〜10年編集長として作る。趣味人の情熱を伝えるのがライフワーク。@takuta

特集

BECOME A MEMBER

『テクノエッジ アルファ』会員募集中

最新テック・ガジェット情報コミュニティ『テクノエッジ アルファ』を開設しました。会員専用Discrodサーバ参加権やイベント招待、会員限定コンテンツなど特典多数です。