ロッキード・マーティンは、米空軍研究所(AFRL)が主導する原子力電気推進技術および宇宙船設計プログラムの契約を獲得しました。JETSONと呼ばれるこのプログラムでは、核リアクターで発電した電力を元にホールスラスターを駆動するシステムを開発します。
Joint Emergent Technology Supplying On-Orbit Nuclear(JETSON)プロジェクトの一環となるこの契約で、ロッキード・マーティンは3370万ドル(約5.1億円)の予算を得て、「高出力核電力および推進技術、および宇宙船設計の熟成」作業を行います。
宇宙探査機の動力源は、長年にわたり化学ロケットと太陽電池パネルが主に利用されてきました。しかし、木星軌道よりも遠くへ向かうミッションでは、推進剤の搭載量の問題などのため、ペイロードを制限したり、他の天体の重力を利用したスイングバイ航法を使って目的地を目指すことになります。
そして将来の有人探査において、深宇宙まで宇宙船を自力航行させようと思えば、現状は原子力を利用した方法に頼るのが現実的な選択肢となります。
ロッキード・マーティンは、このために核動力およびリアクターデザインの専門知識を持つSpace Nuclear Power Corp(SpaceNukes)およびBWX Technologies, Inc.(BWXT)と協力し、核分裂炉からの熱で発電し、その電力で電気機器と電気推進用のホールスラスターを駆動するシステムを開発します。
JETSONプログラムで開発される宇宙船は、NASAと米国エネルギー省(DoE)が2018年に示したKilopower Reactor Using Stirling Technology(KRUSTY)デモンストレーションに基づく核リアクターを備え、このリアクターが発する熱を利用してスターリングエンジンを駆動します。スターリングエンジンは、閉回路内のガスを外部から加熱・冷却し、その体積の変化により動力を発生し、ここでは発電に用いられます。このしくみにより、太陽電池パネルよりも大きな約20kWの電力を生み出せるとのことです。
JETSONプロジェクトは現在、予備設計のレビューを行っている段階であり、これが承認されれば、次のクリティカルデザインレビュー段階に進むことになるそうです。
ロッキード・マーティンのJETSONプログラムマネージャーで主任研究員のBarry Miles氏は「宇宙アプリケーション向けの核リアクターの開発は、宇宙の広大な領域での移動と探査方法を劇的に変える可能性がある」と述べています。そして、「高出力な電力サブシステム、電気推進から核熱推進、または核分裂地上電源まで、Lockheed Martinはこれらのシステムを政府機関および業界パートナーと共同で開発することにフォーカスしている」と付け加えました。