アップルの空間コンピュータこと「Vision Pro」は、消費者向けMRヘッドセットの中では非常に高性能であることは疑いありません。実際に使用した人々は、口々に体験の素晴らしさや、仕事にも耐えうる実用性の高さを強調していました。
しかし、広いユーザー層に普及する上で、ネックとなるのが3500ドル（約51万円）もの高価格です。そのためディスプレイ品質や性能面で妥協し、製造コストを下げてより安価にした後継モデルが開発中だと複数の情報源が主張していました。
またアップルの内情に詳しいBloombergのMark Gurman記者は、カメラやセンサーを減らし、着用者の表情を外に見せるEyeSight機能も削って半額程度（1500～2000ドル）にした廉価版に開発リソースを投入していると述べています。
そんななか、現在アップルが4種類以上のヘッドセットを開発中であり、そのうち1つで部品コストを半分にすることを目指していると台湾のDigiTimesが報じています。
同紙のサプライチェーン情報筋によると、アップルはBOM(部品コスト)を初代Vision Proの50％に減らすことを目標にしているとのこと。
これは、上記のBloomberg報道とも符合しています。既存のパーツの調達コストを下げ、あるいは廉価なパーツに置き換えることに加えて、一人暮らしや自室でヘッドセットを着用するユーザーには不要なEyeSightを省くことは一定の合理性があります。
もちろん、部品コストは総費用の一部に過ぎません。部品点数が少ないほど組立コストも安くなると思われますが、一方では簡素に作るためにも研究開発費がかかり、より広いユーザー層に届けるためのマーケティングや流通・販売などの間接費も発生するでしょう。
対象を開発者や新しもの好きのアーリーアダプタに特化し、当初は直営店での予約販売に絞った初代モデルとは異なるコストが生じる可能性もあり、「半分の価格」にするため様々な努力が注がれるのかもしれません。
この廉価モデルは2024年後半に試験生産が開始され、早ければ2025年後半に発売予定。また、次世代Vision Proは四種類を開発しているものの、そのうち製品化が確定しているのは直接の後継機と廉価版のみだと、DigiTimesは主張しています。
つまり「高性能・高価格を維持したアップグレード版」と「性能を妥協した価格半分バージョン」の2つは発売されても、残り2つはまだ検討中の段階であり、市場に出ない可能性もあるとしています。
ほか中国メディアの界面新聞は、アップルがVision Proの第2世代と第3世代製品についてやり取りを始めており、コストと価格を大幅に下げ、将来的に売上を増やすことを望んでいると報じています。
すでに廉価モデルはサプライチェーンも巻き込み、製造・販売を視野に入れて動き出しているようです。一時、開発中止された可能性もあると著名アナリストが主張していましたが、アップル社内ではiPhoneやApple Watchのようにシリーズ化していく方針が固まったのかもしれません。
もし今回の情報が正しく、また社内で大きな方針変更がない場合、最短で2年ほど待てば、iPhone程度ではないにしろMacBook Proの下位モデル標準構成程度の価格で、廉価版の空間コンピュータが買えるようになりそうです。
