太陽の大気中表面に、地球60個分以上もの巨大な穴が発生し、強力な太陽風が太陽系を吹き抜けています。
太陽の表面は内部から太陽から放出されている自由電子の散乱光である「コロナ」によって非常に明るく輝いています。この表面のコロナの温度や密度が低い部分はコロナホールと呼ばれ、紫外線の波長で観測すると周囲よりも温度が低いため暗く巨大な穴のように見えます。そしてコロナホールからはイオンや電子といった帯電粒子(プラズマ)からなる太陽風が周囲よりも高速で吹き出します。
そして現在、太陽には非常に大きなコロナホールが発生しており、数日前までその向きがわれわれの惑星の方を向いていました。太陽風が地球に到達するには通常2~4日かかるとされるため、地球には現在、このコロナホールが吹き出した太陽風がやってきていると考えられます。
太陽風からの粒子は地球の磁気圏に衝突し、磁力線に沿って極に方向転換され、そこで上層大気中に堆積します。 そこでは、大気の粒子と相互作用して、オーロラのような輝きが生まれます。そして地球の電離層と磁気圏で電流が増大すると、電力網、衛星の運用、無線通信、ナビゲーション システムに干渉する可能性もあります。
ただ、アメリカ海洋大気庁(NOAA)によれば、このコロナホールによって地球に届いた太陽風はせいぜいG1からG2レベルしかなく、太陽嵐としてはほとんど地上に影響を及ぼすようなものではなかったと報告しています。またすでに、今回の巨大コロナホールは地球からみて太陽の裏側のほうへ回転してしまっています。
より強力な太陽嵐は、コロナ質量放出と呼ばれる現象や太陽フレアによって発生します。 12月1日には、北海道で2003年10月以来20年ぶりのオーロラが観測されました。これは11月29日に発生した太陽フレアの影響とされています。コロナホールからの太陽風はこれらの現象に比べると比較的穏やかなものになるとのことです。
ただ、太陽は現在当初の予測よりも遙かに活動が活発になっており、約11年の太陽周期的にも2024~2025年に極大期を迎えるタイミングにさしかかっています。つまり、今後数年間は、今回のコロナホールのようなダイナミックな現象や太陽嵐が発生する可能性が高いとのことです。もしかしたら、われわれの国でオーロラが見られる機会がもっと増えるかもしれません。
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