アップルは米国において今週(ウェブサイトでは21日、店舗販売は24日)、Apple Watch Series 9およびApple Watch Ultra 2の販売を中止すると発表しました。
理由は、血中酸素モニタリング機能をめぐる医療・健康技術会社Masimoとの間の知的財産権紛争に関する、米国際貿易委員会(ITC)からの命令によるものとアップルは説明しています。
Masimoは2021年に光ベースの血中酸素モニタリングに関する特許侵害の疑いでアップルを訴えており、2023年1月に、裁判所はMasimoの訴えを支持する判決を下しています。そして10月になって、ITCが裁判所の判断を支持し、この問題に該当するApple Watch製品の米国への輸入を禁止する措置命令を下しました。この命令は現在米国政府に送られており、60日間の大統領審査期間の最中です。
審査は25日に終了し、そのまま通過が決定されれば、アップルは裁判所の命令に従い、当該Apple Watchの販売を停止しなければなりません。一方、大統領がこの審査に拒否権を発動すれば、販売停止は回避されるはずです。アップルとしては審査の結果がどちらに転んでも対応できるよう、先行して当該技術を採用している製品を販売中止とする措置を講じているということです。なお、Apple Watch SEは血中酸素モニタリング技術を搭載しないため、問題なく販売が継続されます。
なお、アップルは声明文で「ITCの命令に強く反対しており、Apple Watchを確実にお客様に提供できるよう、様々な法的および技術的な選択肢を追求」していると述べています。
ただ、ITCの裁定に対して大統領が拒否権を発動するのは、そう頻繁にあることではありません。前回、この拒否権が発動されたのはバラク・オバマ政権時、2013年のことで、このときはアップルがサムスンの特許を侵害しているとして、アップルの一部製品の米国への輸入を禁止する命令を出していました。それ以前の例はレーガン政権時にまでさかのぼります。