マサチューセッツ工科大学の学生たちが電気自動車の設計運用を研究するMIT Electric Vehicle Team(MIT EVT)が、水素燃料電池で動くバイクを開発しています。チームはラスベガスのCES 2024にもこの車体を出展しました。
十数人のメンバーで構成されるこのプロジェクトは、1999年型ドゥカティ900SSからエンジンまわりのコンポーネントや不要な部品を取り外し、代わりに水素燃料電池式の駆動システムを搭載するプロトタイプに仕立てました。チームはエンジンを取り外したこのバイクを”骨抜き”の意味もある「Toothless」と呼んでいるようですが、どちらかと言えば骨格は丸出しです。
元の900SSではエンジンのケーシングにマウントされていたリアのスイングアームは、エンジン~クランクケースが座っていたスペースに陣取った電動パワートレインに取り付けられています。
またDoosan Fuel Cell製の燃料電池システムには、車体のテール部分に搭載した航続距離延長のためのボンベから水素が供給され、継続的にエネルギーを取り出すしくみになっています。
チームは、このバイクについて「われわれはこの車両を完全に研究用として設計している」とし、「コンポーネントを交換したり、この設計がどの程度の性能を持っているか、実際のハードウェアからデータを取得することができる」としました。
カウルなども取り払われたこのバイクは決して見栄えの良いものではありませんが、チームは「このプロジェクトが水素の新しく創造的な用途を見つける手助けになることを願っている」とし、実証実験とチームが提供する情報のオンラインでの公開に加え、「エネルギー業界に刺激を与える」ことを期待して、プロジェクトとそこから得た学びを学術誌に発表することにも取り組んでいるとのことです。
このバイクの設計はオープンソース化され、他の電動バイク開発チームなど、誰でも自由に独自の手を加えて製作することを可能にしています。
なお、研究材料としてのこのバイクは手頃な価格ではあるものの、バイクに搭載するような小型の燃料電池システムがまだ高価であり、コスト的にはまだ商業用途に適しているとは言えないとチームは述べています。ちなみにDoosanはドローン用の小型軽量燃料電池や水素貯蔵・供給システムを生産しています。
チームメンバーのひとりは、水素エネルギーは長期的に見て化石燃料に代わるクリーンな燃料としての将来性があると考えており、「こうした実証プロジェクトを推進、開発し、このような技術がうまく機能することを示していくことが重要な課題だと考えている」としました。
ちなみに、この水素燃料電池バイクの製作において難しかったところは、電気モーター、水素タンク、燃料電池、ドライブトレインといったかさばるコンポーネントを、スペースが限られるフレームにうまく収まるよう搭載することだったとのことです。
既存のバイクメーカーでは、先月カワサキがNINJA H2 SXをベースとする水素エンジンバージョンを開発しており、1月から試験走行を開始すると発表していました。ただこれは同じ水素を燃料とするバイクでも、水素を直接燃焼させて動力を得るエンジン車で、水素燃料電池車とはしくが大きく異なるものです。
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