Googleリストラで製品とサービスはどう変わるのか。Copilot対抗で「妖精」出動?(Google Tales)

テクノロジー AI
佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

特集

年明け早々、Googleでのリストラが報じられました。なんだか不穏な2024年の幕開けです。影響を受けるのは、

1.Googleアシスタントを担当していた人たち

2.デバイス&サービスチームの再編

3.ARチームの大半の人たち

いずれも日常的にお世話になっている製品&サービスです。ユーザーにとってのそれぞれの今後について考えてみました。


▲Googleストアで購入できるハードウェア(他にもありますが、スマートスピーカーやディスプレイは「人気商品」には含まれていないようです。Nestカメラは私が画像に追加しました)

1. Googleアシスタントと会話できるようになる?

Googleアシスタント関連のリストラは、サービスの縮小ではなく、LLM(大規模言語モデル)版へのシフトを「迅速かつ集中的に実行するため」のもの(昨年7月にAxiosが報じた中の人による書簡より)だそうです。

Googleアシスタントは2016年のGoogle I/Oで発表されたので、誕生からもう7年になるんですね。ピチャイCEOはそのころからずっと、機械学習のAIの重要性について語っていました。Google I/O 2016では、将来的には一方通行ではなく、会話ができるようになるというデモも披露しています。

▲Google I/O 2016でGoogleアシスタントの未来を語るスンダー・ピチャイCEO。

昨年Bardが発表された際、Googleアシスタントとの役割分担はどうなるんだろうと思ったものですが、どうやらBardのチームがGoogleアシスタントも改良していくようです。

リストラされてしまう人たちは大変ですが、ユーザーとしてはGoogleアシスタントと会話できるようになるといいなと思います。

今のGoogleアシスタントは、質問やお願いに対して短く答えてくれたりタスクを実行したりしたら、それでおしまいです。

私が日常的に使っているのは、記事を書きながら「○○ドルは何円?」とかアニメのエンドスクロールを見ながら「○○(声優の名前)って誰?」とか食事の支度をしながら「元気の出る洋楽を聴かせて」とか「3分のタイマー」とか「ダイニングのライトをつけて」とかくらいです。

でも、BardやChatGPTは答えに対してさらに質問を重ねることで、会話を続けられます。○○って誰?の質問にプロフィールや出演作を答えてくれたら、その出演作はどんな話だったっけ?と重ねて質問したりできます。

しかも、ChatGPTアプリは流暢な日本語で日常会話の相手もしてくれます。これがGoogleアシスタントでもできるようになるといいな。

▲ChatGPTアプリとは音声で会話できます。見た目はそっけないですが。

Googleが「Pixie」というコードネームでPixel 9(仮)に新しいGoogleアシスタントを搭載するとも報じられています。

PixelのPixie。いいなあ。いっそGoogleアシスタントという名称をやめて正式にPixieという名前にしちゃえばいいのにとも思います。

Pixieというのはもともとは妖精さんの一種なので、Pixel以外のデバイスに宿っていてもおかしくはありません。

さらに、かつてのマイクロソフトのクリッパーやカイルくんのようにキャラになっててもいいかも。Copilotに統一して専用呼び出しキーまで作ってしまいましたが。

彼らはあまり役に立たなかった(というかむしろ鬱陶しかった)ので嫌われてしまいましたが、今のAIなら賢くなっているので大丈夫かも。できれば自分好みのキャラを生成できるといいな。

▲ばじぃさんに私用のPixieちゃんを作ってもらうんだイラスト:ばじぃ

2.寄せ集めハードウェア部門がまとまったらNestが元気になる?

デバイス&サービス部門というのは、Googleのハードウェア全般とそれで提供するサービスを担当する部門です。とはいえ、現状はPixel、Fitbit、Nestなどのチームが、それぞれ別々に設計やソフトウェア開発を行っています。

Android(2005年)もNest(2014年)もFitbit(2019年)も、買収して取り込んだものなので、それぞれチームの文化が違いそうです。AndroidチームはHTCのPixelチーム(2018)など、いろいろ取り込んでいます。

▲昨年10月のイベントでFitbitについて語っていたFitbitの共同創業者、ジェームズ・パークさん

ちなみにChrome OS搭載ノート「Chromebook」は、この部門ではなく、Chrome OSチームの管轄です。過去には純正Chromebookもありましたが、日本で販売されることなく、その後新モデルは出ていません。

そんな寄せ集め部隊を無理にまとめるのは素人目にも難しそうなので、ばらばらに動いているのも致し方なさそうです。

これを、ブランド横断で設計や開発を行うようにチームを再編するというのです。

現状だと、例えばPixelとNestでGoogleアシスタントの反応が微妙に違うこととか、Android TVとNestの連携が今ひとつなこととかが残念なのですが、これが改善されるかもしれません。

個人的に一番気になるのはPixelとFitbitのチーム統合です。今回の再編で、残念ながらFitbitの共同創業者はGoogleを去ってしまいますが、なんだか今は置き去りにされた感のある「Google Fit」(というオリジナルの健康管理アプリがあるんです)がFitbitと統合されるといいなぁ。

▲「Google Fit」と「Fitbit」。睡眠時間は、Google FitはNestで、FitbitはPixel Watch 2で測定しています。誤差が4分というのはすごい。

3.ARから完全撤退するわけじゃない

ARチームの「大半の従業員が解雇」されます。ARの中心的エンジニア、クレイ・ベイバーさんは昨年2月に退社しちゃってるし、7月には後を追うようにシニアディレクターのマーク・ルコフスキーさんも去りました。ルコフスキーさんは「Googleのコミットメントとビジョンの不安定さ」が退社の理由だとポストしています。

でも、GoogleはARから完全撤退するわけではなく、ARには引き続き深く取り組んでいくとコメントしています。

オリジナルのヘッドセットは当面作らないけど、AndroidスマートフォンでのARはがんばる、という感じだと思います。

実際、GoogleマップアプリのARを使った「ライブビュー」機能は、地図を読めない&方向音痴な私にとって欠かせない機能です。スマホを掲げたまま歩く姿はカッコ悪いですが、リアル映像に映る巨大矢印についていけば目的地に着きます。道沿いにあるショップの店名も教えてくれるし。

▲ライブビューの画面。東京の都市でやると、さらに周囲のお店情報も表示されます。以前は立ち止まらないと表示されなかったんですが、今は歩きながら確認できます。

これをフリーハンドで使えるコンパクトなメガネデバイスがあればいいのに、とすごく思います。現状でもXREAL Airなどスマートフォンの画像をオーバーレイするメガネ型ディスプレイがあって利用することは可能ですが、Pixelは直接繋ぐのに必要なDisplayPort Altをサポートしていないので使えないという問題が。

GoogleはQualcommとSamsungと協力してAR向けチップを開発すると言っているので、将来的にはオリジナルARメガネも実現するかもしれませんが、今のライブビューはとつぜん画面に「歩く時は気をつけてね」とか出て視界を遮るので、メガネにしてるとかえって危なそう。まだメガネ前提じゃないってことなんでしょうね。

そのためにも、剛腕リック・オステルローさんの下で、ハードウェア&サービス部門が一丸となってくれることに期待しています。


▲Googleのデバイス&サービス部門トップのリック・オステルローさん


《佐藤由紀子》

佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

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