47年前のポリフォニックシンセ「KORG PS-3300」が鍵盤1つ増やして復刻。1鍵盤あたり3VCO、両手両足でも足りない49同時発音

カルチャー Music
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

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1977年に発売され1981年までわずかな台数が売られた、コルグ(当時は京王技研)の伝説的セミモジュラー型シンセサイザー「PS-3300」が「PS-3300 FS」として復刻されることが決まりました。

PS-3300の価格は120万円と、コルグの製品の中でも最も高価でしたが、当時としては画期的なポリフォニックシンセサイザーでした。

どこが画期的だったかというと、この時点で最大の同時発音数を誇る、48音ポリフォニックを実現していたからです。その当時、ポリフォニック(複数の音を同時発音する)にするためには、鍵盤を複数の音源に割り当てる必要があり、そのための技術が別途必要だったのです。コルグやARPなどでは2音までは可能な製品は存在しましたが、それ以上になるとマイコン制御などの技術が必要となります。当時はまだ電子楽器へのコンピュータ利用が過渡期であり、そのための技術はまだ成熟していませんでした。そんな時代にコルグがどうしたかというと、鍵盤1つひとつに3個ずつのオシレーター(VCO)、フィルター(VCF)、アンプ(VCA)を用意。つまり、VCO、VCF、VCAが144個ずつあったわけです。ちょっと頭おかしいなと当時の筆者も思ったソリューションです。

もっともこのやり方はコストがかかる上、製品も大掛かりになります。時代はセミモジュラーによる拡張性よりも簡単に音色を切り替えられる機能の方が好まれるようになっていました。1978年にはSequential Circuitsが5音ポリのProphet-5を、1980年にはヤマハが8音ポリのCS-80を、それぞれ音色メモリ機能付きで出し、PS-3300の居場所は失われていきました。コルグ自身も1981年に安価な6音ポリフォニックシンセのPolysixを投入し、PS-3300の時代は終わります。

それでも他には出せない唯一無二のサウンドはキース・エマーソン、ジャン=ミッシェル・ジャール、ヴァンゲリス、クラフトワークなど著名なシンセサイザープレイヤーに愛されました。その後、多くのシンセサイザーマニアたちが、いつの日かPS-3300の実機に触ることを夢見ていたのです。

復刻版は鍵盤が1つ増えた49鍵。それに合わせてVCO、VCF、VCAの数もそれぞれ3つ用意して147個積んでいます。専用のキーボードも用意され、本体パネルには12個のマイクロチューニングノブもオリジナル同様にあります(3つ)。当時は、「純正律もこれでできます」という触れ込みでした。

PS-3300 FSはMIDIにも対応し、さらに256個までの音色メモリ機能も付属。ライブラリアンアプリも用意されています。

開発にはオリジナル版の技術担当だった伝説のエンジニア、三枝文夫氏も加わっているそうなので、オリジナルサウンドの踏襲は保証されたようなもの。あと気になるのは価格と発売時期でしょうか。執筆時点では日本のサイトには情報がありません。

ところで、音源が1系統だけの弟分「PS-3100」は、おそらくあまりニーズがないと思われます。

《松尾公也》

松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

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