注目のガジェットが発売されれば、すぐにそれ分解して中身を見せてくれるプロのIT解体屋 iFixit が、先週米国で発売されたばかりのApple Vision Proを入手、さっそく解体しています。
Vision Proはこの高価なヘッドセット製品を「アップルの最も複雑なハードウェア」と述べ、そのデバイスが高度な設計技術のうえに構築されていることや、実際に使用した時に感じた課題などを説明しています。
分解の様子を解説する動画では、まずヘッドセットとバッテリーパックからの電源コードの取り外し方に始まり、ヘッドバンド、フェイスクッション、シール部品、そしてスピーカーが内蔵されているテンプル部のパーツを順に除去、顔に密着するゴーグル部分だけにします。
次に、ドライヤーによる加熱で接着剤を軟化させ、前面を覆うガラスを剥がし取ります。そしてさらにもう1枚の、縁へ行くほど黒くなっている磨りガラスのようなパーツを外します。
すると現れるのは、不気味に浮かび上がるユーザーの顔。これはレンチキュラーレンズと呼ばれる、表面にかまぼこ状の細かいうねりを形成することで、左右の目にそれぞれ異なる角度からの画を見せて立体的に感じさせるしくみを利用していることが説明されます。これは見る角度によって絵柄が変わるシールなどと同じ原理です。
続いては、顔に接する側のパーツを順に外していく作業ですが、ここは小さなネジや粘着テープ、ブラケット、フラットケーブルのコネクターのオンパレード状態。細かな作業の連続で、しっかりメモしておかなければ、再び組み立てようとしたときに困ったことになりそうです。左右のディスプレイユニットが中央のフレームから外れると、再び細かい分解作業の先に、大きなレンズと小さなディスプレイパーツが顔を見せました。
一方、ヘッドセット前面部分の解体に取りかかると、まずは前面下部のカメラアレイ部分が外れます。そして、やはり無数のネジとコネクターをひとつひとつ外していくと、この製品の心臓部であるメイン基板が姿を見せました。左右2つに分かれた基板は、中央をフラットケーブルで結ばれており、顔の形状に合わせて湾曲している本体にすっきり収まるようになっています。
Vision Proの分解作業は、最初の電源コードやヘッドバンドの取り外し以外は「Virtual Nightmare(バーチャルな悪夢)」だとiFixitは評しています。一般消費者がこの高価なヘッドセットを分解することはまずあり得ませんが、動画を見れば、それがわれわれ素人には手出しできない作業であることが、あらためてよくわかります。
おそらく将来のモデルで改善されるべき点として、iFixitはVision Proが現実世界をパススルーでユーザーに見せるときに「2010年代のウェブカメラのような」タイムラグがあると述べました。そして、これは最悪の場合、映像酔いを起こしたり、現実の動作と見えている視界のラグのせいで何かに蹴躓いて転倒する可能性があると指摘しています。
なお、iFixitは、このヘッドセットにはまだ調べるべきことがたくさん残っているとし、次回は内部ディスプレイとセンサーアレイについて詳しく説明して、修理可能性のスコアを評価するとしています。