AI生成の巨大ペニスを生やしたネズミ画像、査読付き科学誌の論文に載ってしまい科学界困惑。学術的にもデタラメ

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Munenori Taniguchi

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査読付きのオープンアクセス科学論文誌Frontiersは、掲載した論文にAIで生成した巨大なペニスを持つラットの図が使用されていたことで、科学者コミュニティをザワつかせています。

Frontiers in Cell and Developmental Biologyに今週掲載された「Cellular functions of spermatogonial stem cells in relation to JAK/STAT signaling pathway」は、中国の西安市紅会病院と華東交通大学の研究チームが執筆した論文

哺乳動物の精巣の幹細胞と、細胞内の炎症やがんの仲介に関与するシグナル伝達経路との関係について調べた内容です。

しかしその論文に添えられている挿絵の画像を見ると、真っ先に目に飛び込んでくるのは自分の身体よりも巨大なペニスを起立させ、誇らしげに微笑むラットの絵でした。

どうやらそれは、本文で詳細に研究結果を述べられているラットの精巣、シグナル伝達経路、幹細胞に関するイラストのようですが、まるで不正確なものであり、引き出し線に記されているラベルの名称なども意味不明でした。

挿絵の問題はこれだけではありませんでした。続いて示された画像は、論文に記されている複雑なシグナル伝達経路を図示化したつもりのようですが、そのポップでカラフルな画風とは裏腹に、描かれている経路やラベルはカオスと言うほかありません。

3つめの画像に至っては、ラットの幹細胞の生物学的特性を示すものだと思われますが、なんだかゾンビの吐瀉物で焼き上げたピザのメニュー表のようです。

研究者らは論文のなかで、挿絵は画像生成AIのMidjourneyを用いて出力したものだと記しています。

Frontierは論文著者向けポリシーで、添付する挿絵に生成AIを使用することを許可してます。そうした画像にはAIによる生成物であることを明記する必要があり、この著者もそれに従っています。

しかし今回の問題はそこではなく、使用するAI生成コンテンツの正確性に関する部分です。ポリシーでは、著者は「生成 AI テクノロジーによって作成されたコンテンツの事実の正確さを確認する責任があります」さらに「生成AI技術によって作成された、または生成AI技術を使って編集された図表は、原稿に記載されたデータを正確に反映していることを確認しなければならない」とされています。

今回の論文はそれらの部分がまるでガバガバなまま、どういうわけか掲載にまで至ってしまっていました。

Frontiersは「ポリシーと出版倫理」について記したページで「結論に影響を与えない図に誤りがある場合」や「誤ったラベルが貼られた図がある場合」などは、訂正を提出することができるとしています。

そして今回の論文記事については見出しの最初に「An expression of concern」と注意書きを加え、論文に関する懸念の表明と調査の開始を明らかにしていました。なお、記事執筆時点ではこれが「Retraction」に変わっており、どうやら論文は撤回された様子です。


《Munenori Taniguchi》
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