イーロン・マスク氏は、自身が所有するX (Twitter)を短文が中心のソーシャルメディアから、長尺の動画番組や長文記事も配信するプラットフォームに変えることを宣言し、元テレビ番組パーソナリティなどと独占配信契約を結んできました。
先週金曜日には元CNNのMC、ドン・レモン氏がX上で配信する予定のトーク番組『The Don Lemon Show』に初回ゲストとして出演し、インタビューに応じています。
しかしレモン氏は、マスク氏へのインタビュー収録の数時間後、Xから番組とのパートナーシップ契約を解除されたと述べました。
これは、Xのリンダ・ヤッカリーノCEOがXを「ビデオ・ファースト」のプラットフォームにすると宣言した翌日のできごとです。
レモン氏は水曜日、Xへの投稿で「マスク氏は私に対して怒っている」、(マスク氏は「言論の自由絶対主義者」を自称するが)「どうやら、私のような人間から自分に向けられる質問には、マスク氏は「言論の自由絶対主義」を適用しないようだ」と述べています。
一方、Xは「われわれは『The Don Lemon Show』が、検閲のないXでコンテンツを公開することを歓迎します。Xはクリエイターが作品を広め、新しいコミュニティとつながるためのプラットフォームを提供できると信じています」
「しかし、他の企業と同様に、われわれはビジネスパートナーシップについて決定する権限を留保しています。慎重に検討した結果、Xはこの番組と商業的に提携しないことを決定しました」とコメントを発表しました。
収録で、レモン氏からマスク氏に対して行われたインタビューでは、大統領選挙から、今年Wall Street Journalが報じた某億万長者の薬物使用疑惑まで、広範な話題が取り上げられた模様です。
そして、レモン氏はXで「かなり突っ込んだ質問をした」としつつ「どれも敬意を持った質問だった」「良い会話ができた」「どうやら、マスク氏にとっては違ったようだ」と感想を述べています。
マスク氏は番組とのパートナーシップを解消した理由を訪ねたXのフォロワーに対して、その内容が「ソーシャルメディア上の番組だが基本的にCNNと変わりがなかった」と述べ、「CNNが瀕死である事実が示すようにそれでは役に立たない」としました。
さらに「本物のドン・レモンではなく(元CNN社長の)ジェフ・ザッカーがドンを通して話しているだけで、真実味に乏しかった」と主張しています。
Xは、より多くのオリジナル・コンテンツを配信するための主要な戦略のひとつとして、1月に『The Don Lemon Show』を配信することを発表していました。
同様にXと配信契約を発表したなかには、元ハワイ州選出の下院議員トゥルシー・ギャバード氏や、スポーツ解説者のジム・ローム氏をメインMCとする番組が予定されているほか、昨年FOXニュースのMCを解雇されたタッカー・カールソン氏も自身の番組の契約を結んでいるとされます。
しかし今回のレモン氏の番組のキャンセルは、同社の戦略に疑問を投げかけるものになるかもしれません。
レモン氏は現在、『The Don Lemon Show』の初回エピソードをXだけでなく、YouTube、その他のポッドキャスト・プラットフォームで配信する予定だとされています。また、数百万ドルとされるXの契約金支払いが拒否された場合に備え、法廷闘争の準備をしているとのことです。
ちなみに、レモン氏は約1年前、CNNの放送中に元共和党大統領候補のニッキー・ヘイリー氏に対する性差別的、また年齢差別的な発言をしたことが引き金となり同報道機関を解雇されています。