高価なiPad Pro(M4)は性能も極上、iPad Air(M2)は現実的選択。実機を触ってiPadの買い時を考えた(村上タクタ)

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村上タクタ

フリーランスライター。1969年京都府生まれ。バイク雑誌編集者に憧れて上京し経歴を開始。ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌、デジモノの雑誌をそれぞれ7〜10年編集長として作る。趣味人の情熱を伝えるのがライフワーク。@takuta

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Appleイベント「Let Loose」で発表された新製品。実際に手にしてみた印象は、iPad Pro 13インチの驚異的薄さと、Apple Pencil Proの機能の強力さ。とはいえ、現実問題として購入するならiPad Airが好バランスではないかと思う。

100g軽くなって、予想より大幅性能向上

とにかく、M4搭載のiPad Proはすごい。筆者が試用したのは13インチモデル。バッテリー容量の関係なのか、今回のiPad Proは11インチモデルの5.3mmに対して、5.1mmととても薄い。前モデルが6.4mmだったことを考えると、1.3mmも薄くなっている。6.4mmが5.1mmになるのだから、厚さを20%削減したことになる。

薄さばかりではない。パフォーマンスも圧倒的だ。

3nmプロセスのM3から、第2世代3nmプロセスのM4では、あまりパフォーマンスが上がってないのではないかという説があったが、シングルコアで比較して19%、マルチコアで比較しても23%も向上している。

まだ、第2世代3nmプロセスのiPhoneもMacも出ていないのに、先陣を切ってiPad Proに搭載されたことから、「ディスプレイエンジンが搭載されただけで、基本的性能は変わっていないのではないか?」と、うがった見方をしていたが、まったくそんなことはなかった。

Mシリーズチップは、同等仕様のマシンであれば世代ごとに15~20%性能が向上しているのだが、今回も同様ということになりそうだ。仮に、毎回20%ずつ性能向上が図れるのであれば、3世代離れているM1とM4では1.2^3=1.728倍の性能ということになる。進化速度としては十分だろう。

GPUのメタルのスコアも、5万3207と、前のM2搭載機と比べても17%向上している。

見たことがないほど美しいディスプレイ

そして、一番のキモはディスプレイの美しさだ。

コントラストがとても高いタンデムOLED搭載のディスプレイは、これまで見たどのアップル製品(サイズ感の違うiPhoneを別にして、iPadやMacと比べると)よりも美しい。

写真に撮っても、解像度は下がるし、コントラストや彩度に関してはあなたが見ているディスプレイに左右されるので、伝わりにくいと思うが、従来のiPad Pro M2と比べてもコントラスト比は大きいし、最新のMacBook Proに匹敵するか、少し上回るぐらい。この美しさをタブレットで体験できるのは感動だ。

今回一緒に試用したM2搭載のiPad Air 11インチと見比べると、コントラスト比、彩度などに大きな差を感じる結果となった。

お絵描きクラスター必携の、Apple Pencil Pro

さらに今回の注目は機能の増したApple Pencil Pro。

価格はApple Pencil(第2世代)と同じなので、後継機種と捉えていいと思うが、今回発表されたiPad Pro(M4)や、iPad Air(M2)では、Apple Pencil(第2世代)が動作しないというのが残念なところ。旧来のユーザーは絶対に買い替えねばならないということで、これは意地悪な仕打ちだ。

新しいApple Pencil Proの追加機能は3つ。スクイーズと、バレルロールと、触覚フィードバックだ。

スクイーズはApple Pencil Proを持つ手に力を入れて、強くつまむような動作をすると作動する。Apple Pencil Proのある位置に小さなメニューが現れて、ペンシルでそれを選ぶことができるというものだ。

これまで、ペンを動かしてメニューを開かなければならなかったのが、対応アプリであれば、ペンのある位置に直接メニューが現れる。絵を描いている時に、集中を切らさずにペン先や、色、太さを変えることができるのはとても便利だ。

2番目はバレルロール。Apple Pencil Proに軸方向の回転センサーが加わった。たとえば、カリグラフィーペンや平筆のようなペン先の時に、回転させることで太くなる方向を変えることができる。これもシチュエーションによっては便利そうな機能だ。ペン先を画面に着ける前にホバー機能でペン先の形状を確認できるのも便利だ。

3番目は触覚フィードバック。iPhoneなどでもお馴染みのTapticエンジンで、指先にコツコツと振動を伝えてくれる。スクイーズやダブルタップが動作した時のフィードバックとして振動が返ってくる。とても分かりやすい機能だと思う。

iPad Proは、もうハイエンドプロ用機材

すでに話題にもなっている通り、iPad Proは非常に高価になった。

ただ、単に高価になっただけでなく、性能も上がってるのだから、想定ユーザーがよりプロ寄りに広がったと見るべきだろう。

プロ仕様のカメラや、音楽機材なのだと考えれば、1TBモデルで、11インチが27万2800円、13インチが32万2800円という価格も納得できる。Apple Pencil Pro、新しいMagic Keyboard、AppleCareなどを含めると40万円を超えてしまうので、一般ユーザーとしては高価過ぎると思う。プロの道具としてはいたし方なしというところか。当然、円安の影響も大きいので、これは仕方のないところ(だが高い)。

現実的にiPad Air(M2)で困ることもほとんどない

というわけで、選択肢に上がってくるのはiPad Airだ。

iPad AirだってM2チップを搭載しているし、処理能力は十分に速い。ハイエンドなプロはiPad Proを選ぶとしても、一般的なプロユース(言い方として微妙だが)ならiPad Airでも十分だと思う。

もし、3Dグラフィックス、動画の編集、写真の仕上げなど、マシン負荷が大きく、高コントラスト、高彩度な表現をディスプレイで確認する必要があるのなら、iPad Proを選んだ方がいいだろう。

ワープロ、表計算や、プレゼンテーションなど、一般的なビジネスワーク、写真や動画を扱うのでも、さほど高い負荷ではない、仕上がりに対してシビアな状況にはないというならiPad Airでも十分だと思う。

今回、iPad Airに13インチが登場したのも大きなポイントだ。

絵を描く人、グラフィックワークをする人は画面は大きい方がいいと思うのだが、iPad Airの13インチという選択肢ができたことで、絵を描くけど、そこまで高性能な処理が不必要、という人はこちらを選ぶこともできるようになった。

当然、iPad Proのディスプレイは美しいが、そもそもマンガ家さんのようにモノクロの絵が中心であれば、高彩度も、高コントラストもあまり関係ない。11インチの512GBで15万0800円、13インチの512GBで18万0800円というのもがぜん魅力的な選択肢になるのではないだろうか? 筆者の母は日本画家で中学や高校で絵画を教えていたが、我々兄弟の幼い頃にも常々大きな紙に描くように言っていた。絵を描くなら13インチの方がいいと思うが、処理速度はAirでもなんとかなると思うのだ。

もちろん、カラーのグラフィックを扱う機会が多いなら、iPad Proの方が魅力的だが、高コントラスト、高彩度のディスプレイを見ながら描いても、受け手の方がそんなディスプレイを使っているとは限らないのだから、それを考えてもiPad Airでいいように思う。

円安の中、iPad(第10世代)は、なんとかGIGAの価格に

今回のiPad Air/Pro登場における価格改定で気になったのは、もっとも低価格のiPadの価格だ。

GIGAスクール構想第2期の端末価格は、1万円上積みされたとしても5万5000円。

iPad(第9世代)が廃番になってしまうと、6万8000円のiPad(第10世代)が最安値になるが、これでは学校にiPadを導入するのが難しくなってしまう。円安が反映されるとさらに価格が上がる可能性もある。

その点をヒヤヒヤしながら見守っていたのだが、円安にも関わらず、一番安いiPad(第10世代)の価格は1万円安くなり5万8000円、学割で5万4800円とギリギリGIGAスクール構想第2期の予算で購入できる価格となった。このあたりは、かなりいろいろな政治的判断があったのだろうが、まずはひと安心というところである。

対して、iPad miniは円安が反映されて2回目の値上げとなった。価格は64GBで8万4800円と、まったくminiではない値段となった。こちらは、いまだにA15 Bionicチップ搭載ということなので、買い時ではないということだろう。いつも、iPad miniのモデルチェンジサイクルはとても長いので、ゆっくりと待つしかないだろう。

《村上タクタ》

村上タクタ

フリーランスライター。1969年京都府生まれ。バイク雑誌編集者に憧れて上京し経歴を開始。ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌、デジモノの雑誌をそれぞれ7〜10年編集長として作る。趣味人の情熱を伝えるのがライフワーク。@takuta

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