PCゲームの人気拡大でますます注目されるようになったゲーミングモニタ。
家庭用ゲーム機でも一昔前まではリビングのテレビに接続してプレイするのが当たり前でしたが、最近ではテレビを見ない世代が増えていることもあり、自室のPCモニタに接続している人のほうが多いかもしれません。
PCモニタでゲームを楽しむなら、せっかくならばゲーミングモニタを使いたいところ。とはいえ、ゲーミングモニタは通常のモニタと比べると価格が高めで手を出しづらいということもあります。
そんな悩みを解決してくれそうなエントリークラスのゲーミングモニタ、「AVISTA」シリーズをドウシシャが発売しました。
この記事ではまずゲーミングモニタって何?とゲーミングモニタ選びに重要な機能を解説しつつ、「AVISTA」シリーズのレビューをお伝えします。
ゲーミングモニタとは?
そもそも、ゲーミングモニタと一般的なモニタとの違いは何なのでしょうか。実際のところ、ゲーミングモニタに明確な定義はありませんが、一般的には動きの速いゲーム映像を滑らかに表示できる高リフレッシュレート、一瞬の反応が勝敗を分けるFPSや格闘ゲームにも追従できる高い応答速度、そしてG-SyncやFreeSyncなどのVRR機能がゲーミングモニタの特徴的な仕様です。
一般的な事務作業向けのPCモニタは、リフレッシュレート60Hz・応答速度5ms程度のものが大半です。これに対してゲーミングモニタでは、リフレッシュレート120Hz以上、応答速度1ms以下の製品が増えています。
リフレッシュレートとは、1秒間に何回画面を書き換えられるかを示すもので、単位としてはHz(ヘルツ)が用いられます。120Hzであれば、1秒間に120回画面を書き換えられるということ。
似て異なるものとしてFPS(Frame Per Second)もあります。こちらは、1秒間に何フレームを送信できるかを指す数字で、リフレッシュレートが表示側(モニタ側)の性能であるのに対し、FPSは送信側(ゲーム機やPC側、あるいはゲームタイトル)の性能です。
最新世代ゲーム機やゲーミングPCでプレイするゲームが120fpsなどの高フレームレートに対応していても、モニタ側が60Hzまでしか対応していないのであれば、表示は60Hz(1秒間に60回の書き換え)になってしまいます。
逆にゲームが60fpsまでしか対応していない場合、144Hzなどの高リフレッシュレートなモニタを使っても、滑らかな表示になるわけではありません。
応答速度も画面表示に関わる指標ですが、こちらは色の切り替わりの速さのこと。最近では中間色から中間色への切り替わり速度であるGTG(Gray to Gray)や、モニターの色が黒→白→黒と変化する際の速度を表したMPRT(Moving Picture Response Time)の値を表示することが多くなっています。
1msであれば、色の切り替わりに1ms(0.001秒)かかるということです。応答速度が速いほど残像感が少なく滑らかな映像となります。
ゲーミングモニタでもう一つ重要なのが、NVIDIAのG-SyncやAMDのFreeSync(AdaptiveSync)などのVRR(Variable Refresh Rate:可変リフレッシュレート)機能です。簡単に言ってしまうとゲームのフレームレートとモニタのリフレッシュレートを同期させることで、滑らかな映像を実現する機能。
リフレッシュレートとフレームレートが合っていないと、画面の表示途中に次の画像が送信されてきてしまい映像がずれて表示されるティアリング(またはテアリング)や、一瞬止まったようにカクつくスタッタリングなどが発生することがあります。
G-SyncやFreeSyncはこれを防止するもので、オフィスユースでは問題になることはほとんどありませんが、ゲーミングモニタでは必須の機能です。
ドウシシャのゲーミングモニタ「AVISTA」シリーズ
ドウシシャのオリジナルブランド「AVISTA」シリーズは、23.8インチ FHD(1920×1080ピクセル)の「DGF230SBB」、27インチ 2K(2560×1440ピクセル)の「DGQ270SCB」、27インチ 4K(3840×2160ピクセル)の「DGX270SCB」、計3モデルの展開です。
▲ドウシシャのAVISTAシリーズ、23.8インチのDGF230SBB
3モデルとも非光沢、いわゆるノングレアパネルを採用しており、室内での照明の反射などによりゲーム画面が見づらくなることを防ぎます。
液晶パネルには、応答速度の速いFAST IPSを採用。1msという高速応答に加えて、従来のIPS同様に上下左右とも178°の広視野角も備えています。
リフレッシュレートは、23.8インチの「DGF230SBB」がHDMI、DPともに180Hz。27インチ2Kの「DGQ270SCB」はHDMIが144Hz、DPは180Hz対応。27インチ4Kの「DGX270SCB」は、HDMIが144Hz、DPとType-C(DisplayPort Alt Mode)は160Hz。
格闘ゲームや動きの少ないRPGなどは、ゲーム側で60fps固定の作品も多く、そこまで高いリフレッシュレートが必要になるわけではありません。一方、高いフレームレートに対応するApex LegendsやVALORANTなどのFPS(First-Person Shooter)、あるいはファイナルファンタジーXIVやBLUE PROTOCOLのようなMMORPGでも、リフレッシュレートの高いゲーミングモニタを使うことで、画面全体が滑らかに見やすくなり、遠くにいる敵の動きも捉えやすくなるほか、照準をあわせるエイムもしやすくなります。
リフレッシュレートが144Hz以上あるAVISTAシリーズは、ゲーミングモニタとしては十分な描画性能で、一般的な60Hzのモニタと比べると1秒間に2倍以上の情報を描画できることになります。
なお、家庭用ゲーム機ではPlayStation 5やXbox Series X|Sが最大120fps、Nintendo Switchは60fpsまでなので、AVISTAシリーズならこれらのゲーム機でもフルの性能を発揮できます。
▲DGF230SBBの背面。VESAマウント(100×100)に対応しています。背面左下には、盗難防止用のケンジントンロックも備えます
▲スタンドは高さ調整や回転機能はなく、上に15度、下に5度のチルト機能のみ対応
入力インターフェースは、DGF230SBBがHDMI 2.0×2、DP1.4×1。DGQ270SCBはHDMI 2.0×2、DP1.4×2。DGX270SCBはHDMI 2.1×2、DP1.4×1、USB Type-C×1。
DGX270SCBのUSB Type-Cは、USB PD85Wでの給電にも対応しています。
▲DGF230SBBのインターフェースは左からDCポート、HDMI1、HDMI2、DP、ヘッドホンジャックを備える
▲DGF230SBBのACアダプタ出力は12V/3A
ハードウェアだけではなく、ソフトウェア面でもAVISTAはゲーミングモニタとしての使い勝手が考えられています。
モニタのソフトウェアといっても、OSDで設定をするぐらいではと思うかもしれません。それはその通りなのですが、ゲーム用途で使いやすいよういくつかの工夫が施されています。
▲OSDの画面もどことなくゲーミング風
映像モードには「標準」や「映画」「テキスト」などのほか、「RTS」や「FPS」といったゲームジャンル別の設定も用意されています。
HDRにも対応しており、映像モードから設定可能です。また、AVISTAシリーズはHDR10をサポートしており、専用の映像モードとして「HDR」「HDRゲーム」「HDRシネマ」も用意されています。
一般的なモニタでは、HDRを有効にすると輝度調整ができなくなるものが多いですが、「HDRゲーム」と「HDRシネマ」は輝度調整も可能となっています。
ガンマ値や色温度の設定も映像モード毎に設定可能です。色温度は6500K(ケルビン)での設定ではなく、「暖色」「ノーマル」「寒色」の3段階。ほかにユーザー設定によりRGB値での調整が可能です
▲映像モードでは、FPSやRTSなどのゲームジャンル別のプリセットも用意されています
▲DGF230SBBのOSD操作は、すべて背面にあるナビゲーションスティックで行います。なお電源ボタンも搭載されておらず、物理ボタンはこのナビゲーションスティックのみで操作できます
ゲーム向けの設定は「ゲーミング設定」としてまとめられています。Adaptive-Sync/VRRのオン/オフや、画面上にリアルタイムでフレームレートを表示できる「FPSカウンター」、画面上に中央位置などをわかりやすく表示する「照準」などの設定も用意されています。
▲ゲーム関連の設定は「ゲーミング設定」としてまとまっています
ゲーミング向けの機能としては、MPRT(Moving Picture Response Time)も備えています。アンチモーションブラーとも呼ばれる機能で、フレーム間に黒い画像を挿入することで、液晶パネル特有の残像感(モーションブラー)を軽減する仕組みです。
AVISTAシリーズでは「オフ」「低」「高」「1ms」が選択できます。後者になるほど残像低減の効果は高くなりますが、それに比例して輝度は落ちてしまいます。
MPRTはリフレッシュレート120Hz以上でのみ利用可能で、Adaptive-Sync/VRRとの併用もできません。基本的にはAdaptive-Sync/VRRのほうを利用することになると思いますが、接続するPCやゲーム機がAdaptive-Sync/VRRに対応していない場合にはMPRTを試すといいでしょう。
なお、これらのソフトウェア機能に関しては、今後アップデートで改善していく予定とのこと。現状でも大きな不満があるわけではありませんが、Adaptive-Sync/VRRとMPRTの併用などには期待したいところです。
Apex Legendsを実際にプレイ
実際に23.8インチのDGF230SBBで「Apex Legends」をプレイしてみました。ゲームプレイの快適さは、利用しているPCに依存するところが大きいですが、画面上では残像感などもなく問題なくプレイできました。
撮影時に設置した右上にはライトがあり、他のディスプレイやノートPCなどでは照明が反射してしまうのですが、DGF230SBBはノングレアパネルなので反射はほとんど気になりませんでした。
これなら、画面を見やすくするために部屋を薄暗くして反射を防ぐといったことをしなくても問題なさそうです。
▲ノングレアの画面は、照明の反射を気にすることなく快適にプレイできます
国内メーカーによる国内サポート
ドウシシャという名前は、多くの人がどこかで一度は聞いたことがあるのではないかと思いますが、『あっ、ここにもドウシシャ!』というキーワードどおり、衣食住全般の身近な製品を企画・開発・販売する日本の会社で、東証プライム市場に上場しています。
ルーツをたどると、1974年に大阪で個人事業として始まったという歴史の長い企業で、1990年に現在の「ドウシシャ」に社名を変更しています。ディスプレイ関連の製品ついても今回が初というわけではなく、ORIONブランドで液晶テレビやスマートテレビを販売しています。
Amazon等では、あまり馴染みのないメーカーが高性能をうたうゲーミングモニタを安価に販売していることもあります。最近はそうした製品であっても意外と問題なく使えるものが増えていますが、故障したときにサポートに連絡が取れない、修理のために製品を海外に発送する必要があるなど、いざというときに困ることも。
安価で馴染みのないブランドだから駄目ということはもちろんありませんが、本当に商品説明どおりの性能で、サポートも安心できるのか、見分けるのは簡単ではありません。
その点、ドウシシャであれば、一般消費者向けの販売を長年続けてきているだけに、電話やメールなどでの国内サポート体制も整っている点で安心できます。
エントリーモデルとして過不足ない選択肢
ゲーミングモニタは、リフレッシュレート240Hzの4K表示、有機ELやミニLEDバックライトにHDR 1000対応など、上を見れば切りがありませんが、性能に比例して価格も桁違いに上がっていきます。
AVISTAシリーズは、ゲーミングに必須の高リフレッシュレートと高応答速度、HDR対応、Adaptive-Sync/VRRなどの機能を備えつつ、手頃な価格を実現しています。なにより、液晶テレビなど家電を長く扱ってきた国内企業によるサポートがある点は大きな強み。初めてゲーミングモニタを購入する人にとって、安心して決められる選択肢となりそうです。
「AVISTA」23.8インチ FHD(1920×1080ピクセル)「DGF230SBB」