アップルは4月にApp Storeの審査基準を変更し、後からゲーム(ROM)を追加できるタイプの「レトロゲーム機エミュレータ」を名指しで解禁しました。
それ以来、マルチゲームエミュレータ「Delta」や「RetroArch」など様々なアプリが登場しています。
ますますラインアップが充実を深めるなか、App Storeで入手できる初のニンテンドー3DSエミュレータ「Folium」が配信開始しました。
ほか対応するレトロゲーム機は ゲームボーイアドバンスおよび ニンテンドーDS。ただし、これら2つは無料アプリのDeltaがサポートしています。
対応コントローラは Backbone One、Nintendo SwitchのJoy-ConやProコントローラー、PlayStationのDualShock 4やDualSense、Xboxワイヤレスコントローラといったところ。
このFoliumは、現在App Storeに存在している唯一の3DSエミューレータ。とはいえ、注意点がいくつかあります。
1つは、700円の有料アプリとして収益を上げようとしていること。最近、有料サブスクリプションで稼いでいたNintendo Switchエミュレータ「Yuzu」の開発者が任天堂に訴えられ、240万ドル(約3億7000万円)の和解金を支払った上に提供中止に追い込まれたことを考えると、大胆な動きです。
(ゲーム機メーカーの許諾を得ずに、同じゲームが動く互換性のあるエミュレータを作ること自体は原則的に合法であり、以前から多くのエミュレータが問題なく配布されてきました。
一方で、動作のためにオリジナルのファームウェアなど著作権保護されたコードを必要とする場合や、世代が新しいゲーム機では多い暗号化やプロテクト等への対処方法によっては権利侵害と見なされる場合もあり、こうした点では訴訟がおきることもあります)
これまでApp Storeで公開されて話題となった任天堂ハード系エミュレータは、いずれも無料アプリでした。そのなかで有料としたことが、いかなる反応を招くのかは現時点では不明です。
第2に、アップルはエミュレータにつき、高速な動作を可能とするJIT(Just-In-Time)コンパイルを許可していません。非正規アプリストアで人気を集めたゲームキューブ/Wiiエミュレータ「DolphiniOS」はパフォーマンスが低下する可能性があるため、App Storeでは公開が難しいと述べていました。
ファミコンやメガドライブなど、数十年前のハードであれば問題ないが、ゲームキューブやWii、さらには3DSなど、新しめのゲーム機については、JITなしには荷が重く(特に古めのiPhoneであれば)処理落ちなどが起こる恐れもあるわけです。
DolphiniOSの場合、JITありとナシでどれだけ挙動に差が出るのかは、以下の動画でご確認ください。
すでに入手して実用しているユーザーも、「最適化とカスタマイズの面で、まだまだやるべきことがある」と評しています。
第3に、上記のDeltaやRetroArchなどのマルチゲームエミュレータが、将来的に3DSのサポートを無料で追加する可能性もあります。
これらの事情を承知した上で、なおかつ3DS用ゲームのROMデータを合法的に用意できるのであれば、「iPhone上で3DSゲームを楽しむ」手段の1つとなります。
ただしゲームのROMデータは、音楽や映画、他のソフトウェアと同じく、著作権者が認めていない場合、また著作権法に定められた例外を除き、複製して配布したり、違法と知りながらダウンロードする等の行為は、権利侵害として罪に問われる可能性があります。
権利者がオープンに配布しているゲームや、合法的に入手できデータ化できるゲームなど、権利的に問題がないROMを遊ぶことが前提です。