輪番制?ドコモ・ソフトバンク・KDDIが3日連続で通信障害。報告ルール変更で可視化の面も(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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 まるで輪番制かのごとく、ドコモ、ソフトバンク、KDDIの順に、3日間連続で通信障害が発生しました。

ソフトバンクを除いた2社は影響範囲がやや狭く、エリアが限定されていたり、音声通話だけもしくはデータ通信だけといった形。

現状では、3社とも総務省の定める大規模通信障害には当てはまりません。とは言え、偶然にしてはあまりにもできすぎた並びだっただけに、ユーザーには驚きの声が広がっています。

 最初に障害が起こったのはドコモです。同社の通信障害は、22日の16時37分ごろに発生。16時54分までおよそ17分間、影響が続きました。

発生直後はエリアが特定されていなかったものの、その後、中国・四国エリアに限定した通信障害だったことが報告されています。

また、初報では「音声通話とデータ通信」と案内されていたものの、復旧報では「データ通信」のみに障害の起こったサービスが絞られています。

(22日に発生したドコモの通信障害。原因は現在特定中。当初は音声通話も範囲に含まれていたが、その後、詳細が判明した段階でデータ通信のみに変更された)

 翌23日には、ソフトバンクで通信障害が発生しました。こちらは、12時5分に発生。復旧したのは13時26分で、およそ1時間21分におよびました。

こちらは、ドコモとは逆で、影響したのは音声通話のみ。データ通信は可能だったこともあり、気づかなかったユーザーもいたはずです。また、ドコモと同様、復旧報が出された後、影響範囲の情報が更新され、音声通話の中の緊急通報には影響がなかったことが確認されています。

(翌23日には、ソフトバンクに通信障害が発生した。こちらは時間がやや長く1時間を超えたものの、音声通話のみ。緊急通報にも影響はなかったことが後から判明した)

 これで終わりかと思いきや、翌24日には、KDDIでも通信障害が起こってしまいました。

こちらは、19時34分から20時3分までの約29分間。ソフトバンクと同様、データ通信には特に影響がなく、音声通話とSMSのみ、利用がしづらい状態になっていました。

影響範囲は、北海道から神奈川県、山梨県あたりまでの東日本エリア。範囲としては、ドコモより広いものの、全国規模の通信障害ではありませんでした。

(24日にはまさかKDDIまで……という事態に。こちらも、ソフトバンクと同様、音声通話とSMSのみの障害だった。自動復旧ができたのか、期間は29分と短かった)

 1カ月で2社ぐらいに通信障害が起こるならまだしも、大手3社が代わる代わる、毎日通信障害を起こしたのは衝撃的でした。一瞬、キャリアを狙ったサイバー攻撃なのか、と思ってしまったほどです。

そんな陰謀論やオカルト的な憶測を呼んでしまいそうな3社連続の通信障害ですが、原因は調査中。ただ、あくまで通信障害で、影響範囲も影響サービスも異なるため、発生確率は低いものの、単なる偶然と見てよさそうです。

 とは言え、3社連続で障害が起こったことが認知・拡散されやすい制度的な必然性があるのも事実です。

実は23年2月に、総務省の電気通信事故検証会議の中の周知広報・連絡体制ワーキンググループが発表した取りまとめで、ユーザーへの報告が発生から「原則30分以内」に義務付けられるようになりました。実際、各社ともこのルールに則りつつ、通信障害が発生した直後に案内を出しています。

(▲総務省のワーキンググループで策定された「電気通信サービスにおける障害発生時の周知・広報に関するガイドライン」から抜粋。原則30分以内の公表が求められている)

 もっとも、複雑なシステムで構成されるモバイルネットワークの障害原因や範囲を短時間で特定するのは容易なことではありません。

先に挙げたように、各社とも、当初発表した情報は軒並み「確認中」となっていました。ドコモのように、実は音声通話には影響がなかったケースもあり、結果として「誤報」になってしまっていることすらあります。

これは、ネットワーク側に何らかの障害を検知した場合、即座に周知しなければならないルールを順守した副作用と言えそうです。

 特にドコモの通信障害のケースは、わずか17分間、データ通信がつながりづらくなるだけの状態でした。これだと、情報がなければ単にいつものパケ詰まり(失礼!)と区別するのは難しいはずです。

実際、X(旧Twitter)で障害発生当日に絞って「ドコモ 通信」や「ドコモ つながらない」で検索してみましたが、第一報が報じられる前に、そのような指摘をしている投稿はほぼ見つかりませんでした(つながらなかったので、指摘できなかった可能性もありますが)。

(▲ドコモの場合、初報では原因はもちろん、障害発生のエリアや対象サービスも確認中だった)

 むしろ、その後のパケ詰まりと思われる状況を大規模な通信障害だと勘違いしているような投稿や、パケ詰まり気味なドコモのネットワークを揶揄するような投稿の方が目立っていた始末。

それを見たユーザーがドコモやドコモショップに問い合わせる可能性があることを考えると、発生場所も特定できていない段階で告知した方がよかったのかどうか、周知方法については考えさせられました。

 周知方法もできるだけ広範にということになり、例えばKDDIの通信障害では、au PAYのトップ画面にその旨が告知されていました。

筆者が気づいたのも、ローソンで支払いをしようとしたタイミングでした。その意味では、広く、あまねく知らせることに成功している一方で、au回線で短時間電話できなくても特に困らない筆者が無駄に焦って情報収集することになってしまったのも事実です。

 23年に周知・広報が厳格化、迅速化された結果として、それを速報的に取り上げるメディアも増え、ユーザーが目にする通信障害情報が増えていることは間違いないでしょう。

3社が3日間連続で通信障害を起こしてしまったのは偶然ではあるものの、以前と比べ、このような偶然が可視化される可能性は上がっていると言えるでしょう。

(▲一連の通信障害は日経新聞も速報として報じていた。一方で、以前までの基準で公表が復旧後、しかも一部地域で20分以内だったとしたら、ニュースにならなかった可能性はある)

 実際、継続時間が2時間以上、もしくは影響利用者数が3万人を超える電気通信事故は、総務省に四半期報告をする必要があります。

この件数は、詳細な様式の報告が22年で約7500件。1日あたり2件以上になります。より軽微な簡易な様式の報告だと、6万件にも上ります。

モバイルネットワークを運用するキャリア以外も多く含まれている点は割り引いて考えなければならないものの、確率論で考えると、3キャリア連続ということが起こっても不思議ではありません。

(▲総務省の「令和4年度電気通信事故に関する検証報告」より抜粋。22年は、軽微なものまで含めると7万件に近い事故が起こっている)

 ガイドラインはKDDIの大規模通信障害後に、周知のあり方を見直すために策定されたものですが、やや条件が厳しすぎる印象があることは否めません。

ルールを厳格に守っている点は評価できる一方、ザックリすぎる情報は、関係のないユーザーにも混乱を招いてしまいかねません。

影響を受けるユーザーにとっては、迅速な情報提供は不可欠のものですが、せめて地域なり影響サービスなりの対象範囲をもう少し絞り込めた段階で出すようにした方がいいのでは……と感じました。

《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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