変形・合体する左右分割キーボードNAYA Createを試す。トラックボールや3Dマウス着脱でカスタマイズ自在、ソフトも強力な多機種対応

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Ittousai

Tech Journalist. Editor at large @TechnoEdgeJP テクノエッジ主筆 / ファウンダー / 火元

欧州発のスタートアップNAYAが開発するモジュール式キーボード、NAYA Create の試作機を試してきました。

NAYA Create はワイヤレスの左右分割式で自由に配置でき、手首と腕への負担を軽減するキーボード。


特徴は、

  • モジュール交換式:ホームポジションのまま親指で操作できる位置に特徴的な円形のマウントがあり、タッチパッドやトラックボール、3Dマウスといった入力機器を追加・交換可能

  • エルゴノミクス設計:本体が折れてテント状に立ち上がり、腕や手首の負担が少ない角度で使える

  • 強力なソフトウェア:キー配列の変更はもちろん、組み合わせやアプリにあわせたショートカットなどを複数レイヤーにわたって設定でき、キーボード本体に記録。簡単に切り替えて使える

さらに多機種対応(Windows / Mac / iOS / iPadOS / Android / Linuxほか)、低遅延無線・Bluetooth・有線のハイブリッド接続、打鍵感や静音性の好みで軸(キースイッチ)を交換可能、左右のキーボード本体をマグネットで背中合わせにしてコンパクトに持ち運べる、カスタマイズできるRGBライトなど、至れり尽くせりの仕様です。

海外クラファンで115万ユーロ獲得

NAYA Createを開発するNAYAはオランダ発のスタートアップ。国際見本市CES 2023 / 2024に出展してイノベーション・アワードを獲得したほか、Kickstarter で実施したクラファンは開始5分で目標を達成し65万ユーロ超を調達、ウェブストアでの予約販売を含めてすでに114万ユーロ、日本円にして1億8000万円近くを集めています。

日本では Kibidango (きびだんご)が8月29日からクラウドファンディングを実施中。超早割28%オフなど安価に手に入る支援メニューを提供しています。

Kibidangoは弊誌テクノエッジの会員コミュニティ『テクノエッジ アルファ』に専用の『Kibidangoチャンネル』を設けている縁もあり、今回はアルファ会員と一緒に、NAYA Createのプロトタイプ実機に触れて開発者と直に話せるごく少人数の内覧会に参加してきました。

(ここで宣伝:テック好き・ガジェット趣味者のための会員制コミュニティ『テクノエッジ アルファ』では、NAYA Createの他にも発売前・日本未上陸の最新製品を試せる限定イベントや、生成AIなど最新技術を学べるオンラインワークショップ、同好の士で盛り上がったり情報交換できるDiscordサーバなど多数の特典を用意しています。まだ加入していないかたはぜひご検討ください。・会員制コミュニティ『テクノエッジ アルファ』第二期会員の募集を開始します )。

試作機ながら作りは堅牢、『山折り』で手首の負担軽減

内覧会では開発者Kalinさん・西さんによる紹介プレゼンに続いて、NAYA Create 本体とタッチパッド(NAYA Touch)を動作する状態で試せました。

(▲プレゼンに加えて1on1でアルファ会員にアドバイスしてくれたKalin Popov氏。リードソフトウェアデベロッパー。)

実際に触れた第一印象は、比較的コンパクトなのに作りが堅牢で安定していること。目立つリング状のモジュールマウント部と、本体のフレームはアルミ製のユニボディ構造でできており、いかにもガジェット感ある外見を裏切ってかなりガッシリしています。

キーボードの二箇所に関節(フリクションヒンジ)があり、最大27%まで角度をつけられる(テンティングできる)のも特徴ですが、こちらもガタつきなく適度な抵抗があり、少なくとも打鍵では勝手に動いたり伸びたりしない感触でした。

「左右分割完全ワイヤレス・モジュール式ポインタや入力デバイス」だけでもお釣りが来るほどの仕様ですが、開発陣がもっとも重視する点のひとつは、ユーザーにより好みの場所と角度に設置して、手首や腕への負担を軽減し、姿勢を改善することで、健康と生産性向上に貢献すること。

自然に腕を下ろしたり、体の前に手を伸ばした負担のない状態と比較して、キーボードを打つ際は手のひらを揃えて下に向けることで、腕と手首を内側に捻った状態になっており、疲労や心身の不調につながるという、市販のエルゴノミックキーボードや縦型マウス、傾いたトラックボール等の宣伝文句でもよく聞くアレです。

NAYA Createでどう実現するかというと、モジュール部分とメインのキーボード部分のヒンジを山折りして角度をつける「テンティング」で、手首と腕のひねりを軽減します。

キーボードの先入観を崩す自在なポジション

個人的には手首を手の甲側に曲げた状態の打鍵に負担感があり、手首の高さを稼ぐリストレストが手放せませんが、NAYA Create も比較的薄いとはいえまだ17mmほどあり、平らに置いた状態ではやはり手首より高い位置で打つことになります。

しかしNAYA Createの強みは、テンティングの角度による角度と同時に、左右分割で設置場所や角度も好みに合わせられること。

打鍵姿勢の好みは人により千差万別ですが、個人的に短時間試した範囲では、鍵盤面を斜めに角度をつけたうえで、左右ユニットを並行ではなくV字型に置くことで、手のひらを体に近い方に向けたしっくりくる状態にできました。

(▲ ケーブルはデモ用にバッテリーを節約しているため。製品としては完全ワイヤレス対応)

このように角度・配置が自在なNAYA Createですが、左右分割のキーボード自体が一般的ではないため、眼の前に置かれて自由に試せと言われても、多くの人にとっていきなり好き放題に実験するのは難しく、キーボードが置いてある場所と角度に手のほうを合わせがちになりそうではあります。

もし実物を試す機会があれば、あるいは画像と寸法をもとにシミュレーションするならば、まず手を自然に負担のない状態でテーブルに置き、そこにあわせるかたちでキーボードを置くと考えると真価が分かるはずです。

モジュールはオーバーキル気味の4種類。3Dマウス「Float」に多機能ダイヤル「Tune」も

左右分割と変形以上の特徴は、左右ユニットの大穴に追加のモジュールを選んでセットして使えること。

モジュールの種類は

Naya Touch: いわゆるタッチパッド。マルチタッチジェスチャにも対応。表面は微細なテクスチャつきマットガラス素材。直径66mm。

Naya Track: いわゆるトラックボール。サイズは40mm径。XY軸でマウスポインタ移動のほか、ボールをひねるZ軸回転でスクロールにも対応。ボール基部に4ボタン。

Naya Tune: ダイヤルコントローラ+ジェスチャーパッド。指先に手応えがあるハプティックフィードバックで、滑らかな回転からカチカチとしたクリック感までプログラマブルな抵抗感。天面はタッチでジェスチャー入力対応。

Naya Float: いわゆる3Dマウス。ジョイスティック的に倒す動き、ひねる動き、各方向に押す動きで6軸入力。基部にダイヤル。3D系のアーティストやデザイナー、プログラマ御用達。

タッチパッドとトラックボールの交換式まではともかく、動画や音楽クリエーター向きのダイヤル(ノブ)、3Dデザイナー向きの3Dマウスまである、異様に力の入ったラインナップです。

こうした入力機器は各社がキーボードの横や手前に添えて使う専用品を販売していますが、NAYA Createは親指で操作したり、手の移動を最小化する位置に選んでセットできる点が強み。

今回のアルファ会員内覧会では、このうちタッチパッドと、ダイヤルのTuneの感触を試せました。タッチパッドはサラサラした感触のガラス製で、まあ一般的なもの。親指で使うことが前提で、直径はLet'snote的に狭いものの、2本指・3本指のジェスチェにも対応します。

後述するソフトウェアによるカスタマイズでは、タッチパッドを4分割してそれぞれに機能を割り当てるといった使い方も。

予想外に良かったのが、ダイヤルコントローラの Naya Tune。重みのあるアルミ削り出しのダイヤルコントローラで、回転のほか押し込みと、トップの面もタッチでジェスチャ入力に対応します。さらに円弧を描けるLEDリングライトまで。

電気的に抵抗を変えることができ、滑らかな回転もクリック感のあるカチカチも、ある範囲を超えると抵抗があるといった設定も可能。

最大限に活かすには編集アプリなり側と連携が必要になりそうですが、ユーザー側で好みやワークフローに応じて切り替えるだけでも便利そうです。

感触が気に入ったのでつい色々と開発者を問い詰めてしまいましたが、Tuneの天面部分はポインタとしてもデータをとれるものの、面積が小さくタッチパッドのかわりとしては快適でないため、たとえば回して動画のタイムライン上を移動して、ジェスチャパッド部分をスワイプしてカットといった使い方を想定しているとのこと。

市販のノブやダイヤルは使えば便利でも、キーボードから遠い位置では生産性が落ちること、持ち歩きを想定していないものも多いことを考えると、NAYA Createで右手側にはタッチパッドかトラックボール、左手側にはダイヤルをセットしてコンパクトにまとまるのは実に良さそうです。

3Dマウスまである!

3Dマウスは、デザイナー以外にはあまり触る機会がないデバイスですが、前後左右に「倒す」動きのほか、ひねる・各方向に押し込む・引くを加えて、6軸を操作できるジョイスティックのようなもの。

たとえばGoogle Earthのような3D地図なら、上下左右の移動と拡大縮小に加えて回転、俯瞰から鳥瞰に角度変更といった操作を、画面上のボタン操作やモード切り替えの必要なく、直感的に操作できます。

NAYA Floatは、3Dマウスの代表的な製品である3Dconnexionのスペースマウスにそっくりの外見で、ほぼ同じように操作します。

てっきりライセンス品かと思いましたが、3DマウスのIPのいくつかは最近になって期限切れを迎えたため、各社が製造できるようになったとのこと。

NAYA Float は5mmという広い可動域や、基部のダイヤルなどが特徴。ただこちらは動作する実機に触れていないため、ノールックで追加するか悩ましいところです。

強力なカスタマイズソフトウェア。複数配列を本体に記録

これだけ多機能なキーボードだけに、ソフトウェアによる強力なカスタマイズができるのも特徴のひとつ。

画面上のNAYA Create にキーや機能をドラッグ&ドロップする操作で、キーマッピングを自在に交換できます。

デフォルトでは小指の負担軽減を目的としたのか、エンターが左上にあり人差し指で押すという独特の配置になっているため、まずはしっくりくる配置を探すことになりそうです。

モジュールマウント部の下に親指で押しやすい3つの独自キーがあり、デフォルトではこれを押すことで「レイヤー」を切り替え、複数のキーマッピングを素早く利用できます。

たとえばホームボジションをテンキー列にする、Fキーとカーソル移動、あるいはアプリごとのマクロのトリガーキーなど。

複数のレイヤーをまとめたものが「プロファイル」で、NAYA Create本体にこのプロファイルを複数記録できるため、基本的なキー配列変更についてソフトウェアを常駐させる必要はありません。

プロファイル等のカスタマイズはエクスポートでき、さまざまなアプリにあわせたカスタマイズプロファイルをオンラインでユーザーどうしが共有しています。

「カラビナで腰に下げたい」「ウェアラブル化して立ったまま使いたい」等の無茶振りも

アルファ会員向け内覧会では、開発者に直接質問したり使い方のコツを訊くことができ、無茶振り気味のフィーチャーリクエストも飛び出しました。

NAYA Createは底面にマグネットがあり、左右の本体を背中合わせに収納できますが、この状態でモジュールマウントのリングにカラビナなどを引っ掛けて、周囲に見せながら(?)持ち歩きたい!もそのひとつ。

開発者いわく、マウント部分は堅牢なアルミ製フレームなので引っ掛けて持っても問題はないものの、キーは一般的なキーボードと同様にキーキャップやスイッチが外せる構造になっているため、むき出しで持ち歩くのは推奨できないとのこと。まあそれはそう。

とはいえ、ユーザーの勝手なModや自作アクセサリとしては、背中合わせ状態のNAYA Createをカバーするミニマムなシェルケースなども作れそうです。

もうひとつは「腿にくっつけてウェアラブル化して、立ったまま使いたい」。ここまで来るとオウンリスクで勝手にやってください感がありますが、海外クラファン予約者にもこれを狙っているユーザーが居るらしく、こっちも勝手マウントが作られるかもしれません。

Kibidangoでは超早割28%オフ・早割25%オフの特典も

KibidangoでのNAYA Createの価格は、本体が9万3800円のところ、執筆時点で残りわずかな超早割では28%オフ6万7480円。

組み合わせるモジュールは、NAYA Touchが通常1万4800円のところ20%オフの特別価格で1万1800円、多機能ダイヤルのNaya Tuneが通常2万9800円のところ20%オフ2万3800円、3DマウスのNAYA Float は標準3万4800円が20%オフ特別価格で2万7800円など。

このほか、交換用のキースイッチもワンセット9200円のところ、本体支援者限定の20%オフ7400円など。試作機を試した際には、軽く静かな打鍵音にややクリック感がある「プレミアム」が装着されていました。

(キーの支援特典は若干ややこしく、追加のキースイッチを希望しない場合は中程度のクリック感がある「タクタイル」で届き、「プレミアム」をオプションで指定した場合は最初からプレミアムスイッチの状態で届きます。

それ以外、静音性がもっとも高くカチカチしない「リニア」、むしろ音と手応えがないと打鍵した感覚がないという人のための「クリッキー」を選ぶと、キーボード本体はデフォルトのタクタイルが装着された状態で届き、オプションのスイッチは自分で換装することになります。

モノがキーボードだけに、コンセプトが良くても実際に手に馴染むか、特に指が届くか、格子状のオーソリニアに慣れるか等はユーザーしだいの面はありますが(キーボード自体を斜めに置けるので、配列は斜めに並ぶ必要がない思想)、左右分割で完全ワイヤレス、トラックボールや3Dマウス等を一体化できる市販キーボードというだけで非常にユニークな存在。

手首や肩の不調に悩みエルゴノミクスキーボードを探している人向けの実用にはもちろん、ガジェット的なカスタマイズや多機能を楽しむキーボードとしても欲しくなる製品です。

Naya Create|設定も形状も自由自在!直感的操作可能な分割式キーボード(By Naya事務局) - Kibidango(きびだんご) : クラウドファンディング型EC

NAYA - Modular Keyboard

《Ittousai》

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