マイクロソフトが看板ゲームシリーズのひとつ Halo を制作する新組織 Halo Studious の設立と、複数の新作を開発中であることを発表しました。
あわせて、従来の作品で使用してきた内製の独自ゲームエンジンにかわり、今後はEpicのUnreal Engine 5 (UE5)を採用することを明らかにし、UE5で作成した新たなHalo世界のプレビュー『Project Foundry』も動画で公開しています。
マイクロソフトの『Halo』は、2001年に初代Xbox本体と同時発売したファーストパーソン・シューティングゲーム『Halo: Combat Evolved』(Halo: CE)から続くシリーズ。
メインシリーズは現時点で最新の『Halo Infinite』(2021年)まで6作品を数え、ゲームセンター向けガンシューティングなどスピンオフを含めれば膨大な数のゲーム作品と、ベストセラー小説群、アニメから実写まで多数の映像作品を生み出してきました。
Bungieが(当初はMac向けに)開発した第一作『Halo: CE』以来、最新作『Halo Infinite』(2021年)まで、開発スタジオは変遷しても一貫して内製のゲームエンジンである Halo Engine (またはBlam! Engine)、Slipspace Engine を採用してきたシリーズですが、20年以上の歴史ではじめて、他社製の汎用ゲームエンジンで制作することになります。
マイクロソフトはこの変更について、対戦部分を基本プレイ無料のライブサービスゲームとして運営している『Halo Infinite』以来、ゲーマーの求めるコンテンツの量とリリース頻度がますます高まっていることを理由のひとつとして挙げています。
独自ゲームエンジンは維持に大きなコストがかかり、Unreal Engine 5など他社ゲームエンジンが採用する新機能に追従するにも長い時間と費用が必要になります。
また新作やアップデートのために開発チームをスケールするうえでも、独自エンジンの場合は新規の開発者がゲーム本体に手を付ける前にまずエンジンを習得するコストが必要になるといったハードルにもつながります。
こうしたことから、マイクロソフトは内製エンジンを捨て、Epicとの密接な協力のもと最新の Unreal Engine 5を採用し、開発リソースを新規コンテンツや新作ゲーム自体に集中させる決断を下したとの説明です。
(さらに補足するなら、マイクロソフトが自社ゲームのマルチプラットフォーム化に舵を切って久しい現状では、Xbox専用ならともかく、他社に匹敵する最新ゲームエンジンを自社で開発したうえPCにも他社ゲーム機にも移植・維持する、しかも一社の1シリーズでしか活用しないのはあまり現実的とは思えません)
開発体制の変更にあわせて、従来 Halo シリーズを担当してきた 343 Industries を改組し、新たに Halo Studious を設立します。
Halo Studious のヘッド Pierre Hintze 氏は、Haloの歴史にとってBungie時代(初代から3)が第一章、343 Industries 時代(4から6 / Infinite)が第二章、新スタジオ Halo Studious は新たな第三章のスタートと表現しています。
『Project Foundry』は、 エンジン切り替えの判断より前に、スタジオ内部で研究のため開始したプロジェクト。
Unreal Engine 5の最新技術を使い、従来のHaloシリーズで印象的な3つの世界(バイオーム)と、キャラクター、武器等を再現し、従来のファンの期待に応えられるか、「Haloの魂」を保てるか、今後の新作の基盤になるかを検証するための取り組みです。
映像では、従来のシリーズ作品で見慣れた景色が、従来ではあり得なかったスケールと精細感で描かれています。
(針葉樹林帯、氷の世界に続いて描かれるグロテスクな異世界は、初期作品で物語の焦点となった寄生生物フラッドに覆われた惑星。過去作でもフラッドに侵食されたステージはありましたが、このスケールで描かれたことはなく、新鮮といえば新鮮ではあります)。
Halo Studiousによると、この Project Foundry は開発中の新作そのものではなく、かといって映像だけの技術デモでもない、将来の新作実現に向けた調査、トレーニングツールとされています。
今後の新作については、複数の作品が開発中であること以外に情報なし。現行のHalo Infinite はSlipspace Engine のまま今後もサポートやアップデートを継続します。
マイクロソフトはゲーム開発スタジオの買収や統廃合を頻繁に繰り返しており、特に近年はゲーム業界全体で続くリストラの流れのなかで、Haloシリーズの343 Industries に対してもレイオフを実施してきました。
しかし今回の発表では、新作に向けて新規スタッフを募集しており、実際に「リードゲームシステムデザイナー」や「クリエイティブディレクター」を含む7つの職種で求人を掲載しています。
以下余談。Halo シリーズの、特に本国での人気には様々な側面がありますが、特に初期の作品では独特のフィジックス(物理シミュレーション)によるアクションと戦闘の手応えも大きな魅力のひとつでした。
最新作の『Halo Infinite』も、現在の基準では技術的・ビジュアル的に目を見張る作品とはあまり見なされないものの、伝統的なFPSの『迷路』的なステージから、オープンワールドの広いフィールドまで、壮大なスケールの人工天体をシームレスに構築した点など、野心的な取り組みがありました(当初発表のビジョンをどこまで実現できたか、作ったハコのポテンシャルをどこまで発揮できたかはさておき)。
ゲーム開発の規模や技術が以前とは比較にならないほど高度化したいまでは、汎用ゲームエンジン採用は時代の流れではありますが、車輪部分を他社に任せて活用に集中することで、また驚くようなゲーム世界を見せてほしいものです。