バーチャルシンガー作り放題・作曲しまくりの新時代到来。AI作曲サービスSunoで「ボーカリスト指名」が可能、自分の声での新曲も(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

歌詞や音楽スタイルを入力すればAIがボーカルを含んだ楽曲を自動生成してくれるサービス「Suno」に待望の新機能が追加されました。「Personas」(ペルソナ)です。

この機能はProとPremierの有料ユーザーのみに開放されています。


■従来のSunoでは歌手を指定できなかった

これはどういうものかというと、気に入ったボーカルなどの音楽スタイルを維持しつつ、別の楽曲を生成できるという機能。Sunoでは多様な音楽スタイルを生成できますが、その一方で、特にボーカルの声は同じものを再現するのは非常に困難です。

そのため、歌手を指定できる機能を求める要望はローンチ時点からありました。

筆者の場合は、ステム音源化によってボーカルトラックを独立させ、そこにVocoflexやSeed-VCでボイスチェンジャーをかけることで、同じ声質を再現しています。

それでも難しいことがあります。例えば、ハーモニー、コーラスがかぶっている場合には、f0(主旋律の周波数)を取得するのが困難になるため、プロンプトでコーラスが出ないような工夫をしなければなりませんし、それは必ず成功するわけではありません。

また、声質は真似できても、歌い方、表現技法はまた別です。Personasはその問題を解決できるかもしれません。

■ペルソナの作り方

では、この「Personas」機能はどういうものかを見ていきましょう。

まず、筆者お気に入りのボーカルを作ってみます。「痺れてる」という、ブルースロックを歌っていたシンガー。当然名前はありませんが、VOW WOWの人見元基の歌い方に非常に近いものを感じました。

…メニューのCreate>Make Personaを指定すると、バーチャルシンガーのキャラクターを設定する画面「Create a Persona」が現れます。ベースにしているペルソナは「痺れてる」。これに名前、アバター画像、説明文をつけます。

アバター画像は、この中でテキストプロンプトで生成もできますが、今回は「痺れてる」の歌詞からChatGPTにシンガーのイメージを描写させ、それをMidjourneyで生成したものを使いました。

一番下に、Publicという項目があります。これを公開にすると、他のSunoユーザーもこのキャラクターを使えることになります。

これで、「ヴァウ」というバーチャルシンガーのペルソナができました。

LibraryメニューにできたPersonas画面からアクセスできます。

新規のペルソナを作成することも、作成済みペルソナの修正や、新曲の作成に進むこともできます。

■同じ声で新曲を作ってみる

では、今回作成したヴァウというペルソナで新曲を作ってみましょう。

この画面からCreate with Personaというボタンを押すと、Personaにヴァウが指定され、その音楽スタイルがStyle of Musicに入った状態になります。

あとは歌詞を入れれば、似た曲調の新曲が出来上がります。

5月に作った、元曲のボーカルと比較してみると、同一性が維持できていることがわかると思います。

これは、同じ音楽スタイルで生成したのですが、音楽スタイルを変えることもできます。

元曲はブルースロックですが、新曲では「jazz, blues, guitar, citypop, rhodes, acoustic piano, gospel, r&b」というプロンプトに変更して、ジャジーなテイストにしてみました。あまり変えすぎると、局長だけでなく、ボーカルが全く違うものになることもあります。

■架空バンドのボーカリストによる新曲も可能に

以前Sunoで作った架空のプログレバンドによる架空のコンセプトアルバム。現在Apple Musicなどで配信中ですが、そこででっち上げた架空のボーカリストであるリリー・フォードの新曲も、これで作れるのではないかと思い、やってみました。


元曲はSunoで作ったものなので、それをベースにすればOK。名前はLily Ford、アバター画像はその時作ったものをそのまま使えます。

あとは、歌詞を入れるだけ。今回はタイトルだけ考えて、それをフルにするのもSunoがやりました。

2曲生成して、片方は男性ボーカルになってしまいましたが、もう1曲は本物(は存在しないけど)のリリー・フォードっぽいものに。声質だけでなく、歌い方も含めたシンガーとしての一貫性を保っています。

現時点ではPersonas機能は完璧とは言えないようですが、うまくハマるととんでもなく簡単に、一貫性のあるボーカルで曲をいくらでも生成できるようになります。

有料ユーザーは200回までのペルソナ生成と、ペルソナによる楽曲生成が特典として付与されています。それ以降は10クレジットを消費します。

バーチャルシンガーと作曲AIが組み合わさった、まさに新時代の到来と言えるのではないでしょうか。

Suno Personas歌手「ヴァウ」による4曲を連続で聴けるようにしました。


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■取り込んだボーカルオーディオの歌い方で新曲も

さらなる実験をしてみました。妻の歌声を10秒くらいのオーディオクリップをUpload Audioし、それをExtendしてフル楽曲とした上で、その曲をベースに妻音源とりちゃんのペルソナを作成することができました。

アップロードしたオーディオをそのままペルソナにはできないので、いったんExtendした楽曲を使います。

これを元に新曲を作ってみたのがこちら。

歌い方はともかく、声質は近づいている気がします。

歌声から直接ペルソナを生成することはまだできませんが、このやり方であれば、自分の声をSunoに取り込んで、自分の声での新曲を自由に作っていくことも可能。自分の歌声もペルソナ化してみました。

まだやってはいませんが、このペルソナをPublicにすれば、Sunoの加入者なら誰でも僕たちの声で曲を作れるようになるのです。ドキドキしますね。

11月2日追記:同じ方法で、オーディオで歌声を取り込んでExtendしたものをペルソナ化しようとしたらできなかったという報告を受けました。自分でも試したところ、現在ではオーディオ取り込みで作成した楽曲はペルソナ化できなくなっているようです。ひょっとしたら、他人やアーティストのオーディオデータを取り込んだものが発見されたか、そういった著作権上の懸念があったため、制限をつけたのかもしれません。ただ、筆者と妻の歌声については、ペルソナはそのまま使えています。

《松尾公也》

松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

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