非接触で個人認証を行うシステムの1つとして、人間の目を使う虹彩認証は人と人の接触を避けるコロナ期間中に注目が高まり、コロナ後も非接触決済用途などの需要が高まっている。
韓国のAJ2社(Gil-soo Jeong CEO)は新たな虹彩認証技術を開発し、生体認証の活用範囲を広げようとしている。日本企業との共同開発を行うことで新技術を実現した。
AJ2は虹彩認証分野で25年の歴史を持つ企業で、カメラモジュールやIR-LEDの独自開発を続けてきた。同社の技術は外部照明の影響を受けず、虹彩の画像を高解像度でキャプチャし、正確に本人認証や分析を行うことが可能だ。
今回開発された「3m虹彩認証デバイス」は3メートル離れた場所からでも虹彩認証を行うことができる。
▲3メートル離れた場所から虹彩認証が可能
この装置は日本のレンズメーカーのタムロンと共同開発を行い実現した。タムロンの25倍ズームレンズをCCTVカメラに統合し、顔と虹彩の認証を3メートルの距離からも可能にした。
一般的に虹彩認証は1から2メートル程度が距離の限界だが、この装置はより遠い場所からも個人認証が可能になる。なおタムロンの販路を通しこの装置をグローバルに展開する予定とのこと。
めがねをかけていても裸眼同様に3メートルの距離から虹彩認証が可能である。現在実証テストが行われており、2025年には製品の量産化を始める予定だ。
▲裸眼だけではなくめがねをかけていても3メートルから認証可能
AJ2の虹彩認証技術装置は30cmの認証技術が米国国防省の認証を受けており、量産製品の納入実績もある。またなお生体認証データは個人のプライバシーを守る点で各国で規制が行われている。
特にEUの規制は強く、ユーザーの同意なしにデータを取得することは禁止されている。今回の技術はユーザーの同意があるときのみ認証させることも可能だ。
▲ユーザーの同意無しでは認証を行わない
AJ2は東京で2024年10月23日から25日まで開催された「2024 Japan IT Week 秋」でもこの「3m 虹彩認証デバイス」を発表し、タムロンとの共同販売に向けたMOUを締結した。
今後は決済システムだけではなく、百貨店や大型ショッピングセンターなどの顧客管理プログラムに応用するなど、様々なビジネスソリューションへ応用することも可能だ。顧客識別が容易になることで小売店には大きなメリットがある。
▲AJ2 CEOのGil-soo Jeong氏(左)
AJ2は今後も虹彩認証技術を進化させることで業界での競争力アップを目指す。生体認証を使った新たなビジネスソリューションは多くの企業から注目を集めそうだ。日本でも同社の装置が今後多くのシーンで使われるだろう。
▲小売店を中心に採用が広がるだろう