ユニークなV字型のVRヘッドセットで知られるPimaxが、同社初となる小型モデル Pimax Dream Air を発表しました。
Pimax Dream Air はApple Vision Pro超えを謳う片目3840 x 3553の高精細マイクロOLEDディスプレイを採用しながら、200g以下と軽量なPC VRヘッドセット。
■ 最小クラスの「フル機能」VRヘッドセット
高精細なマイクロOLEDパネルが出回るようになり、小型VRヘッドセットも各社が発表していますが、Pimax Dream Air は外部にベースステーションが不要なインサイドアウト式セルフトラッキング、内蔵アイトラッキング、空間オーディオ対応スピーカーとマイクも一体化した点が特徴です。
Pimax社による表現は「世界最小クラスのフル機能8K解像度VRヘッドセット」。
Pimaxは大きな従来型のVRヘッドセット Pimax Crystalシリーズも販売しており、ハイエンドモデルのCrystal Super は2025年1月からの出荷予定。
製品の棲み分けとしては、Crystalシリーズはレーシングやフライトシムなど、主に座って体験するVR向け、Dream Air は体を動かすルームスケールや、持ち歩くユースケース向けとなっています。
■ 仕様詳細。兄弟機Crystal Super OLED版との違い
動画での初公開に続き、Pimaxは技術BlogやFAQで詳細を追加しています。そちらもあわせてまとめると、
仕様
片目あたり3840 x 3552、計27MPのマイクロOLEDパネル。リフレッシュレート90Hz
自社開発パンケーキレンズで視野角102度(水平)
アイトラッキングカメラ内蔵(アバター等の視線反映に加えて、瞳孔間距離(IPD)自動調整・注視点を高精細に描画する動的Foveatedレンダリング対応)
広角トラッキングカメラ x4によるインサイドアウト式6DoFヘッドトラッキング、コントローラトラッキング、ハンドトラッキング。
視力補正は遠視-300~近視900Dまで、別売り対応。
オプションで従来のライトハウス式SteamVRトラッキングにも対応。
SteamVR / 自社Pimax Playプラットフォーム互換
パススルー表示はモノクロ。基本的にはVR用
空間オーディオ対応スピーカー、マイク
取り外し可能な電動調整ストラップ。柔らかく後頭部が平坦で「横になって動画視聴やVR体験もしやすい」
本体200g以下(外装が開発中なので正式な数字は後日)
付属コントローラはリングなし小型。ボタン等はPimax Crystalシリーズ共通
Pimaxは従来型VRヘッドセットのハイエンドモデル Pimax Crystal Super を2025年1月より出荷予定ですが、そちらのマイクロOLEDモデルと、Pimax Dream Air はパネル・光学系・アイトラ・6DoFヘッドトラッキング・描画ソフトウェア等が共通。
違いは外装や、Crystal Superの特徴である光学エンジン交換への非対応、オーディオやバンド形状となっています。
(Crystal Super の光学エンジン交換式は、ディスプレイパネルとレンズが一体化したモジュールを引き抜いて交換できる珍しい機構。
マイクロOLEDのほか、量子ドット+ローカルディミング対応マイクロLEDバックライトの液晶モデル(モジュール)があり、そちらは独自の非球面ガラスレンズの種類によりさらに57PPD版・50PPD版に分かれています。利点は水平120度(57PPD)または135度(50PPD)の広視野角やレンズの鮮明さなど)。
■ 有線PC VR用。テザーなし運用デバイス「Cobb」も予告
Pimax Dream Air はApple Vision Pro のような単体動作型ではなく、本体にバッテリーも自前のプロセッサもない、有線接続専用モデルです。
基本的には付属の5m USB-C / DPケーブルで接続してPC VRに使う製品ですが、PimaxではDream Airを動かすための小型デバイス「Cobb」の開発も表明しました。
Cobbはバッテリーとプロセッサを載せた小型デバイスで、腰などに着ければ外部のPCにテザーすることなくDream Air を使える製品。
こちらは詳細な仕様や機能が発表されておらず、出荷時期も未定。Cobbを経由したPC VRのワイヤレス化については、可能性も含めて検討中としています。
■ 価格は約35万円。前金22万円で試用できる「Pimax Prime」方式
Pimax Dream Air の出荷時期は2025年5月予定、価格は日本円で約35万円。すでに予約受付を開始しています。
初期費用を抑えられる「Pimax Prime」販売方式をとっており、まず22万6099円の頭金を前払いして本体を受け取り、返品可能な14日間の試用期間ののち、残金を5646円 x 24か月の分割または一括11万9244円を支払う仕組みです。
「Pimax Prime」方式の特典は、1年間の限定保証および2年間の1on1リモートサポートなど。一括払いすると残金部分が10%の割り引きになり、計34万5343円で購入できることになります。
Pimaxによれば、2025年5月という比較的先の出荷にもかかわらず先行して発表した理由は、すでに予約を受け付けているハイエンド製品 Pimax Crystal Super の出荷時期が近く、ユーザーに選択の余地を残すため。
また需要が多い高精細マイクロOLEDディスプレイの供給事情から、中国で旧正月の休みを挟むこともあわせると、5月の出荷に間に合わせるには1月より前に発注を完了する必要があるとも説明しています。
Pimaxによれば、(開発が順調に進んだ場合) 2025年5月に出荷できるのは「200から300台」になる見込み。
Crystal Super はQLED版が1月以降、Dream Airと光学系が共通のマイクロOLED版は5月に出荷予定。
視野角などの違いは多々あるとはいえ、大型の Crystal Super が届いた途端に小型軽量のDream Air が発表された、知っていればそっちを買ったのにという悲劇を防ぐため早めに発表し、すでにCrystal Super を予約したユーザーにはDream Airへの切り替えも受け付ける対応としています。
Pimaxの発表でも競合として、仮名ながら露骨に意識されているシフトールの MeganeX superlight 8Kは、マイクロOLEDパネルがほぼ同じ仕様。
MeganeXはソーシャルVRに特化して、すでにPC VR環境を揃えたユーザーを念頭に置くためか、トラッキングは外部にベースステーションを使う方式、オーディオもスピーカーを内蔵せず各自がUSB-C端子にヘッドホン等を接続します。
コントローラも同梱せず、シフトール製のFlipVR含め互換コントローラをお好みで併用する想定です。
アイトラッキングも備えませんが、185g未満と軽量な本体をフリップアップ(跳ね上げ)して、装着したままリアルで行動しやすい、一定範囲の近視でもメガネ無しでくっきり見える調整機構といった違いがあります。こちらは24万9900円で販売中、2025年1月から2月に発送予定。
2025年には各社が「8K」(片目4K)のVR/XRヘッドセットを出荷予定のほか、Googleが発表したAndroid XR対応の単体動作モデルが各社から登場予定。PC VR用にも使えるMeta Quest も新製品を開発中のほか、QuestのHorizon OSをライセンスした製品が他社からも登場します。
さらにいえばPimax自身も、超広視野角のPimax Crystal 12Kを予告していますが、こちらは解像度が高すぎ、現行の接続方式ではDisplayPortがボトルネックになること、12Kをレンダリングできる強力なGPUが必要になることなどから、時期も明示していない開発中扱いです。