Suno、Udio、Riffusion、そして最近ではYuEというオープンソースソフトも登場してきたAI作曲ソフトですが、完成形を作るのには向いていても、部分的な修正は苦手です。
このため、修正したい場合にはDAWソフトの力を借りる必要があります。
しかし、Sunoの新しいEdit機能によってDAWの出番は大幅に減りそうです。
では試してみましょう。
サンプルの「ワープドライブ」という曲ですが、4箇所も読み間違いがあります。
[Verse 1]
果てしない闇の彼方 輝く星の航路
静寂の中に鳴る 遠い鼓動 響いて
光の粒が流れ出す 時空(じくら→じくう)を裂く瞬間
僕の心も加速する 未知へのドライブへ
[Pre-Chorus]
瞬く記憶、昇る希望
無限の宇宙に溶けてゆく
[Chorus]
ワープドライブ 限界を超えて
光のトンネル 飛び込む未来
インパルスのリズム 導く旅路(たびじょ→たびじ)
前と後ろ 交わる軌跡
星の輝きに 夢を託して
[Verse 2]
振り返れば遠い日々 後方に残る影
時の流れに逆らい 思い出が蘇る
加速する瞬間(とき)の中 煌めく色彩
運命の交差点で 新た(もんた→あらた)な宇宙を描く
[Bridge]
深淵の闇も恐れはしない
胸に宿る光 未来を照らす
数字が奏でるビートに合わせ
果てなき銀河を 駆け抜ける
[Chorus]
ワープドライブ 星々の詩(うた)を紡ぎ
インパルスのリズム 胸に刻む
前方(ざんとう→ぜんぽう)の煌めき 後方の記憶
二つの世界が ひとつに溶け合う
新たな旅立ちへ 今、翼を広げ
[Outro]
速度の鼓動に 心を委ね
時空の彼方へ ただ飛び込む
従来でも部分的な修正は可能でしたが、修正がアバウトにしか(秒単位での指定)しかできず、「歌詞のこの部分だけ直す」のは困難でした。おまけに残りを丸ごと生成し直すために時間がかかります。
複数の修正箇所がある場合には歌詞の該当する部分をひらがなかカタカナに書き換えて作り直すのですが、この作業を数回繰り返すことになるため、たいていは諦めて別テイクを作ることになります。
その場合はせっかくうまくできたメロディーや伴奏が無駄に……。
では、新しいEditのやり方を見ていきましょう。

まず驚くのが、Edit画面の下部にある曲のタイムラインが、Intro、Verse 1、Pre-Chorus、Chorusといった、音楽的構造に分かれていることです。
これは、産業技術総合研究所の情報・人間工学領域 上級首席研究員である後藤真孝さんが20年以上前に研究されていた、「サビ区間検出手法」のAI版ではないですか。


▲Tokyo Music AI Gatheringで基調講演を行なった、後藤真孝さん
2月5日、大崎のソニーシティで開催された「Tokyo Music AI Gathering」という、音楽AI研究者の交流イベントがあったのですが、そこで後藤さんが基調講演をされていて、まさにこの技術がAI時代にも形を変えて使われているのだと実感しました。
SunoやUdioとは違うアプローチから、音楽制作を助けるAIツールを作ろうという意気込みにあふれた会でしたが、Sunoも制作サイドに寄り添ったアプローチをとってきたことには納得感があります。
画面左上には歌詞フィールドが表示されており、その場で選択して修正が可能。修正した部分は赤く表示され、領域選択したところは下部のタイムラインに表示されます。

白く反転された領域を再生成することが可能になります。限られた領域なので生成は数秒ですみ、2パターンが表示されます。

Apply Replacementボタンでどちらかを選べば、確定され、次の修正に進めます。
同じ領域で複数箇所の修正も可能です。

この曲の場合、合計12パターンの部分修正バージョンが作られましたが、ライブラリ画面に戻ることなく、このEdit画面内だけで修正作業を進められました。

▲Section表記があるものは、部分生成したもの
完成版はこちらです。
このおかげで、過去に葬り去ってしまった惜しい曲を復活させられるかもしれません。
そうそう。歌詞だけでなく、部分的な音楽スタイル変更も可能なので、ここだけ女性ボーカル・男性ボーカルに、ギターソロ入れるといったこともできそうです。
もう一つ、DAWのお世話になることが多いのが、フェードアウト処理。
AI作曲ツールによる楽曲生成では、Sunoは4分まで一気に生成できるため無事にエンディングを迎えることが多いのですが、もっと早くフェードアウトして終えたいこともあります。そんな時はいったんDAWに持っていって、フェードアウトのオートメーションを適用するか、もっと安易に、動画編集ソフトで音声だけフェードアウト処理するか、しています。
しかし、Sunoで動画出力したものをフェードアウトの状態で出すことは、ここままだとできないのです。
そして今回、Edit機能にフェードアウトも付きました。

フェードアウトの領域やカーブも変更可能。これまではクロップでぶった斬っていたのですが、自然に終わらせることができるように。

STEM出力してマスタリングするといった用途ではまだDAWの出番がありますが、簡単な編集くらいなら、Sunoの中だけで可能になり、ますますAI作曲が簡単になってきました。
そして、自分が執筆したSunoの本にない機能がどんどん増えていきます……。