ポケモンGOやモンスターハンターNowの運営元ナイアンティック(Niantic Inc.)が、ゲーム部門の売却と新会社 Niantic Spatial Inc. 設立を正式に発表しました。
ポケモンGO、モンハンNow、ピクミンブルームの3タイトルおよび、周辺アプリ Campfire と Wayfarer は、サウジアラビア政府系ファンド傘下の米国モバイルゲーム企業 Scopely に35億ドルで売却。
各アプリの担当チームと、ナイアンティックでプロダクトを率いてきた河合敬一氏、ポケモンGOの担当VP Ed Wu氏もそのまま移籍します。

一方、ナイアンティック社(Niantic Inc.)は地理空間技術プラットフォームを扱う新会社 Niantic Spatial Inc.を新たに設立。こちらはナイアンティックの創業CEOであるジョン・ハンケ氏が指揮します。資金はナイアンティックから2億ドル、Scopelyから5000万ドル。
Niantic Spatial は第三世代のデジタルマップ構築を通じて、「ジオスペーシャルAIの未来を牽引」することが目的。つまりは従来のナイアンティックのうち、ARや空間コンピューティング、デジタルツイン等々の位置情報技術とプラットフォームを開発・提供する部門です。
従来のナイアンティックが運営してきたサービス・アプリのうち、創業時からの Ingress (イングレス)と、AR技術のテストベッド的な意味合いが強いPeridot (ペリドット)は Niantic Spatial に残り、サービスを継続します。
ゲーム事業売却の取引は、当局の認可を待って2025年内にも完了見込み。
Nianticいわく、Niantic Spatial の長期的な目標は、機械やAIモデルが現実世界の地理空間情報を理解する助けとなる「大規模地理空間モデル」(Large Geospatial Model)を構築すること。
大規模ジオスペーシャルモデルとは「他のAI基盤モデルと連動し、AIエージェントがジオスペーシャルの観点から思考・推論できるようにするもの」とされています。
よく分かりませんが、自動運転やロボット、あるいはAIエージェントによる意思決定が普及してゆく時代へ向けて、現実の地理や空間、世界を機械やAIからより正確に理解できるようにするためのモデルのようです。
ペリドットとイングレスについては「ジオスペーシャルプラットフォームの最先端を示すリファレンスアプリケーション」として引き続き運営。収益化プレッシャーの高いゲーム専業の会社に移籍しても、渡された方もプレーヤーも困りそうなだけによく分かる話です。
ナイアンティックはもともとGoogleでマップやEarthなど地理情報部門を率いていたジョン・ハンケが社内スタートアップとして発足し、Googleから買い取って独立した経緯。
ポケモンGOは位置情報技術を応用してゲーム史に残るヒット作となりましたが、現実世界と高度に重ね合わせるAR要素とゲーム本編が密接に絡み合っているとは言い難く、「ポケモンと記念撮影できます」のAR写真はプレーヤーには嬉しくともあくまでオマケに近い要素でした。
ゲームの膨大なプレーヤーを動員して世界中のキャプチャと立体マップ化を進めるなど、AR / ジオスペプラットフォーム側の利益になるシナジーはあったものの、ゲーム開発側からは「同時にAR記念撮影できるポケモンの数が増えました!」や、ほとんどプレーヤーが使っていないARモードで「ポケモンが木の陰にリアルに隠れます!」に資金をつぎ込む余裕があったらゲーム自体に注力しろとの声があったのも事実。
ポケモンGOの責任者である Ed Wu 氏は、今回の取引について、ゲームとプレーヤーの将来にとってポジティブな一歩であるとして、買収するScopely 側にコミュニティへの深い理解があること、レイオフ等はなくチーム全員が移籍すること、そしてScopelyはゲーム運営に専業の組織であることを理由として挙げています(さらには、Scopelyが非公開企業であり、短期的な収益よりもゲームの長期的な運営を優先した判断ができるとも)。