みなさんこんにちは、香港在住の携帯電話研究家、山根康宏です。最近のスマートフォンは、すっかりAI機能が当たり前になりましたが、約1年前に登場した「rabbit r1」や「Humane AI」もAI特化型スマートデバイス時代の幕開けを象徴する製品でした。そして、また新たなAIデバイスが登場します。
韓国発のスタートアップ「Newnal」が開発したAIスマートフォンは、個人データを活用したAIアシスタント機能を特徴としたスマートフォン。現在、開発中ですが、最短で2025年5月に発売する計画があるそうです。

一般的なスマートフォンやAIデバイスは、ネットにあるデータを元に学習し、ユーザーの要求に応じた情報を提供します。一方、Newnalのスマートフォンは、情報ソースがユーザー個人。スマートフォンを使った検索履歴やショッピング、銀行取引情報、健康データなどをデバイスから取り込みます。鍵として顔、指紋、声などの生体データも取得。もちろん、これらは暗号化されて複数のクラウドに分散して保存、高いプライバシー保護の元で活用されます。

すでに気になっていると思いますが、デバイスの画面上部にキャラクターが表示されていますね。これは、ユーザーのアバター(分身)です。アバターがアシスタントとなり、自然言語で会話できます。完全なアプリレスで、個人の要求に応えてくれるそうです。これは「Another-I」(もう1人の自分)といい、個人のデジタルツイン機能とも言えます。OSはNewnalがAndroidベースに開発された「Newnal Personal AI」。Web3基盤で構築したブロックチェーンベースの独自OSとなっています。
アバターより下の画面は、一般的なAndroid端末と大差なく、自由にアプリを配置して使えます。

このようにAIの元になるデータが個人情報であるため、デバイスを購入した直後はユーザーの嗜好などを把握しておらず、使い続けることで精度が高まっていきます。ある程度、使い込む必要があるわけですが、数ヵ月もすれば、例えば夕食のデリバリーを頼むとき、的確な回答が得られるようになります。「水曜日のこの時間、仕事が終わっていないなら、あのお店のあのピザだよね」というふうに、注文履歴だけではなく個人の行動なども総合的に判断し、サジェストしてくれます。

なかなか面白そうなデバイスですが、高いプライバシー保護の元で活用できるとはいえ、全個人情報を蓄積される仕組みに抵抗を感じる人もいるでしょう。一方で、これまでのAIサービスでよくあった「これじゃない」というアシストは減りそうだと感じます。“真の”個人向けAIアシスタントとして、果たして使い物になるのかどうか、実際に入手してじっくりレビューしてみたいものです。
