1週間の気になる生成AI技術・研究をいくつかピックアップして解説する連載「生成AIウィークリー」から、特に興味深いAI技術や研究にスポットライトを当てる生成AIクローズアップ。
今回は、人工知能を促進することを目的とした国際的な学術団体「AAAI」(Association for the Advancement of Artificial Intelligence)が2025年3月に公開したレポート「AAAI 2025 PRESIDENTIAL PANEL ON THE Published March 2025 Future of AI Research」に注目します。

▲レポートのトップページ
このレポートはAAAI会長の指揮のもと25名のAI研究者によって作られ、さらに15名の協力者の支援を受けています。またAAAIコミュニティ全体の意見も取り入れるため、研究のトピックに関する広範な調査が実施され、475名の回答者が参加しました。回答者の大多数がAIを主な研究分野の1つとして挙げています。

▲参加メンバー(AAAIのレポート紹介ブログ記事から引用)
レポートは、AIの研究の現状と未来について17章で構成され、AI推論、AIエージェント、倫理と安全性、社会貢献、持続可能性などが含まれます。各章でAI研究に関連する1つのトピックを取り上げ、その歴史、現在の傾向、未解決の課題を概説しています。この記事ではAGIの章を取り上げ、その中でも475名へのアンケート調査結果にクローズアップします。

▲AGIの章のトップページ
調査によると、回答者の77%は「AGIそのものを直接的に追求する」よりも「適切なリスクと利益のバランスを備えたAIシステムの設計」を優先すべきだと考えています。この結果は、技術開発の速度よりも安全性と社会的影響を重視する傾向を反映しています。
また、AGIの所有形態についても明確な意見が示されており、回答者の82%が「民間企業が開発したAGIシステムであっても公的な所有下に置くべきである」と考えています。これはAGIが持ちうる潜在的な社会変革力と、その力が特定の企業や個人の手に集中することへの懸念を表しています。
興味深いことに、安全性について高い関心を示す一方で、研究の継続性も重視されています。安全性と制御の仕組みが完全に確立されるまでAGIに関する研究を一時停止すべきかという問いに対し、70%の回答者が反対の立場を示しました。これは、研究の進展と安全対策の発展は並行して行われるべきだという見解を表しています。
さらに、技術的な実現可能性についても現実的な見方が広がっています。現在の主流となっているAIアプローチをスケールアップすることでAGIが実現できるかという点については、76%の回答者が「可能性が低い」または「非常に可能性が低い」と回答しています。この結果は、AGI実現には現在の技術的枠組みを超えた根本的なブレークスルーが必要だという認識を示しています。