NASAは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の初めてのフルカラー高解像度画像を7月12日に公開する予定ですが、それを前に先週、Fine Guidance Sensor (FGS)がとらえた深宇宙の画像を公開しました。
FGSとは、望遠鏡本体を目標とする方向に正確に向けてロックするための機器のこと。そのために使用される機器に近赤外線イメージング機能が含まれています。5月に行われたJWSTの各種機器調整の際には、このFGSが32時間の間に72枚の画像を取得していました。
NASAの説明によると、FGSは”試運転”としてHD147980と呼ばれる星に焦点を合わせる作業を実施した際にこの画像を撮影したとのこと。JWSTの姿勢を細かく調整しつつとらえた近赤外線イメージは、白から赤までの波長で宇宙を描き出しており、白に近づくほど強い赤外線を発しています。また、鋭い針のような光が伸びるのは恒星で、そのほかに無数に見えるのが銀河の光とのことです。
NASAによると、FGSの目的は観測したい星や銀河の方向を望遠鏡が正確に指し示すのを助けることであり、それによってメインの観測装置による正確な測定が可能になります。そのためFGSで得た画像は、通常なら撮影後すぐに破棄されるのだそう。しかし、JWSTのFGSはそれ自体がかなり高性能であり、これを開発したHoneywell Aerospaceのサイエンティスト、ニール・ローランド氏は「初めてこの画像を見たとき、私はこれらの暗い銀河の詳細な構造をはっきりと見ることができて感激した」と述べたとのこと。
ビル・ネルソンNASA長官は、この画像はほんの手始めであり、7月12日に公開する画像はカラーフィルターも適用された、これまでで最も深い宇宙をとらえた画像になるため(FGSの)栄光は長続きしないだろうとしました。
JWSTは、宇宙で最も遠い(つまり最も古い)銀河を検出するために赤外線を使用します。というのも、これらの銀河はもともと可視光を放ってはいるものの、宇宙の膨張によって急速に遠ざかっているため、われわれからは光の波長が延びて赤方に偏移して見えるから。また当然ながら遠ざかれば遠ざかるほどその光は弱くなります。JWSTはこうした微弱な赤外線も感知するために、自らが赤外線ノイズを発しないよう超低温を保って駆動されます。
なお、NASAは金曜日に、12日に公開する画像のいくつかについての情報を明らかにしました。撮影された天体のひとつは太陽系から約7600光年離れたイータカリーナ星雲で、この散光星雲には太陽の数倍の大きさの恒星も含まれているとのこと。もうひとつの撮影対象は、2000光年離れた位置にある環状星雲NGC3132。南のリング星雲、8の字星雲などとも呼ばれ、中心にある白色矮星から放出されたガスが拡散し紫外線放射で輝いて見える星雲です。そのほか、木星によく似た巨大ガス惑星WASP-96 b(1150光年)のスペクトルデータ、ペガスス座の方向約2億9000万光年の彼方に見えるステファンの五つ子銀河の姿も公開の予定に含まれています。
最新技術で撮影されたこれらの天体が、どれほど美しく詳細にとらえられているのかが楽しみなところです。