月曜日にフロリダ州のケネディ宇宙センターから打上げ予定だったNASAの月探査ミッション「Artemis I」は、いったん打ち上げを延期することになりました。
理由は、Space Launch System(SLS)ロケットが4基そなえるエンジンのうちひとつが打ち上げに適した温度範囲に下げられなかったため。
延期の原因になった問題は打上げの40分前に発生しましたが、NASAのミッションマネージャーは先週「打ち上げの延期は様々な理由で起こりうる」と述べ「かならず月曜日に打ち上げられると約束するつもりはありません。天候、技術的な問題、あるいは数値的な条件や公共安全の確保さらにはそれらが複合した要因もあり得ます」としていました。
Artemis計画のミッションマネージャー マイケル・サラフィン氏はプレス向けブリーフィングのなかで、米国東部時間9月2日午後12時48分(日本時間9月3日午前1時48分)ごろの打ち上げに向けて作業を進めていると述べています。ただし、この時間に打上げができる可能性については「ゼロではない」という言葉を用いており、最終的な打ち上げの決定を下す前には今回の問題に関するデータを調べる時間が必要だとしました。
今回のArtemis I号探査機の打ち上げは、もともとは米国東部時間(ET)の午前8時33分に予定されていました。しかし未明に見舞われた雷雨によって発射台に数回の落雷があり、推進剤の充填開始が遅れたとのこと。充填を完了するとこんどは水素漏れが発見されました。これもすぐに解決されたものの、Orion宇宙船と管制との間の通信やエンジンの問題もみつかり、時間切れでこの日の打上げは中止になってしまいました。
なお、打ち上げ延期の決定打になったのはエンジンの故障ではなく、エンジンのブリードシステムの問題と見なすべきだとNASAは述べています。2日の新しいスケジュールに向けて問題を洗い出し対策を施すとしていますが、間に合わない場合、次の打ち上げウィンドウは9月5日になるとのことです。
Artemis Iミッションでは、打上げが成功すればSLSによってOrion宇宙船が月へ向かう軌道に投入され、その裏側を巡る軌道を30~42日かけて戻ってきます。船内には宇宙飛行士のかわりに3体のマネキンが搭乗し(縛り付けられ)て、ミッション中の宇宙放射線の影響や機体の振動、重力加速度などを調べることになっています。
1体はムーニキン・カンポス船長(Commander)と名付けられ、2024年以降に計画される有人探査で飛行士が着用するための、フライトスーツのひとつを試着して月へ向かいます。なお、定員外ではあるものの、今回Orion宇宙船にはESAからは8月上旬に『ひつじのショーン』(の人形)が搭乗することが伝えられていました。一方、NASAも8月19日に『ピーナッツ』からスヌーピー(の人形)を搭乗させると発表しています。
ちなみに、今回のArtemis IミッションはあくまでSLSやOrion宇宙船の無人試験飛行ですが、10基の小型探査機を搭載しており、それらによる探査や観測データを将来の有人ミッションに役立てます。その中には日本の探査機「OMOTENASHI」と「EQUULEUS」も含まれ、月面での放射線環境や、月のラグランジュ点への到達方法などについてのデータを採取する予定です。
訂正:8月30日17:30 アルテミスのつづりを修正しました。正しくはArtemisです。
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