NASA、液体水素漏れでアルテミス Iの打上げを再延期。10月後半にずれ込む可能性も

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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NASAの月探査ミッション「Artemis I」の打ち上げが再び延期になりました。今回は打ち上げ前に水素燃料の「大規模な」漏れが見つかり、燃料の充填が間に合わなかったのが原因とされています。

漏れがなぜ発生したのかについて、NASAのArtemisミッションマネージャーのマイケル・サラフィン氏は、ロケットのコアブースターへの燃料充填時になんらかの「誤った」コマンド送信があり、それによってごく短時間ながら「不注意な」圧力上昇があったとしました。これによって発生した水素漏れは規定された気中濃度の3倍近くに達し、NASAは時間いっぱいまで3度にわたってトラブルシューティングを実施したものの、打ち上げを見送らざるを得なくなりました。なお、SLSからは29日(日本時間30日)の打ち上げ準備の際も水素漏れがありましたが、今回ほどの漏れではなかったとのことです。

NASAの技術者らは、液体水素燃料の充填後、ロケットから素早く充電機材を切り離す「quick disconnect」システムの、漏れ防止用ガスケットを交換することを考えているとしています。そして、他にも問題がないことを確認するためにロケットを組み立て棟へ戻すか、発射台で作業を実施するべきかを判断するとしています。

もし、発射台にとどまって点検作業をするのなら、ロケット周囲を取り囲み、作業を行うためのエンクロージャーを設置する必要があります。一方、組み立て棟にロケットを戻せば、組み立て棟の建屋がその役割を果たすため詳細な点検が可能です。したがって問題が発生した部品以外の部分もしっかり点検し万全を期するなら、組み立て棟に戻すほうが良いのは間違いありません。ただし、ロケットの移動には非常に時間がかかってしまい、今回の9月6日までの打ち上げウィンドウには間に合いません。

また、8月16 日にロケットが発射台に移動してからのタイムリミットもあります。リフトオフ後に何らかの異常が発生した際、ロケットが落下して巨大な爆弾と化してしまわないよう、空中で自爆させるための強制終了システムの点検周期が25日間(以前は20日でした)と定められており、9月10日にその期限がやって来ます。そしてこのシステムの点検作業は組み立て棟でしかできません。SpaceNewsによると、NASAはすでに9月6日までのウィンドウでの打ち上げを除外したとのことです。

その次の打ち上げウィンドウは、NASAの資料によれば、9月20日から10月4日まで、さらにその次は10月17日から31日までの期間に開きます。ただ、10月初旬にはSpaceXのCrew-5ミッションで4人の宇宙飛行士がISSに向かう予定であるため、その月のArtemis I の打ち上げは10月中旬以降になると予想されます。

Artemis Iは、宇宙飛行士を月の大地に送り込むことを目標とするArtemis計画の、最初のテスト飛行です。打ち上げられた宇宙船は1か月ほど時間を掛けて、月を周回した後、地球に帰還する予定です。これが成功すれば、来年にはOrion宇宙船に飛行士が乗り込んで再び月へと向かう有人ミッションが待っています。ただしこれも、月への着陸は行わず、周りを巡って戻ってくるだけのミッションです。

最終的に月面着陸を含む有人探査を行うのは、2025年に予定されており、これには初めて女性飛行士が含まれることが計画されています。いずれにせよ、その最初の試験打ち上げをきちんとこなすには、もう少し時間がかかりそうです。


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