東京ゲームショウで来日していたマイクロソフトのゲーム部門幹部サラ ボンド氏と一瞬お話できる機会がありましたので、主に「日本でXboxってどうなの?」と、ゲーマー的な細かい話を訊きました。
サラ ボンド氏はマイクロソフトで「ゲーミング パートナーシップ&ビジネスデベロップメント」を担当するコーポレートバイスプレジデント。
ベセスダや、買収手続きの進むアクティビジョン・ブリザードなど多数のスタジオを傘下に抱えるマイクロソフトにとっても、サードパーティとの「パートナーシップ」は極めて重要な部分です。
▲TGS 2022で試遊するサラ ボンド氏。(フィル スペンサーとサラ ボンド、ファンの声を聴き、日本に寄り添う東京ゲームショウ - Xbox Wire Japan より)
かつてのXbox One世代、日本でのプレゼンスが極端に低下していた頃にも、ゲーム部門トップ / Microsoft Gaming CEOのフィル スペンサー氏は実は足繁く来日していました(取材を受けないので来ていた事自体があまり表に出ない)。
今年のTGSでもサラ ボンド氏と連れ立ってブースを回りファンと交流する姿には、大きく伸びる日本・アジア地域のプレーヤーと開発者にアピールする狙いがありそうです。
TGSタイミングの目玉は、いわゆる「タイムドコンソールエクスクルーシブ」の契約でマイクロソフト製のPS5独占ゲームになっていた『DEATHLOOP』と、『二ノ国 白き聖灰の女王 REMASTERED』『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』ほか日本発ゲーム多数のゲームパス追加。
さらに、幻想水滸伝シリーズのスタッフが手掛ける『百英雄伝』や『ペルソナ』シリーズ、コーエーテクモの新作『Wo Long: Fallen Dynasty』など、日本発・アジア発のタイトル多数が加わることも発表しています。
タイムループ暗殺FPS『DEATHLOOP』Xboxゲームパスで来週配信。「マイクロソフトのPS5独占作」から1年
TGSに来ることができてとても嬉しい。日本はゲーム産業の中心のひとつなので、こうして参加することはとても重要で光栄なことというサラ ボンド氏。
TGS速報ですでに掲載した点を含め、日本についての部分をざっくりまとめると、
TGSで披露したゲームは22本、うち18本はゲームパスで遊べる。15本はアジアの、うち13本は日本のクリエーターの作品。4本はTGSで初めてプレイアブル出展。
アジア全域で、Xboxコミュニティのプレーヤー数が大きく伸びている。その半数以上は安いほうの最新Xboxこと Xbox Series S。ボンド氏いわく
「これはマイクロソフトにとって非常に重要なことです。この世代のXboxの開発にあたっては、高性能なXbox Series Xだけでなく安価で手を出しやすい選択肢のSeries Sも同時に用意できるようこだわって設計しましたので、広く受け入れられていることとても嬉しく思います。」
アジア地域でのゲームパスの加入者は過去二年で二倍以上に増加。日本を含むアジアに全力で取り組むコミットメントは変わっていない。Xboxワイヤレスコントローラを自在にカスタマイズできるデザインラボを日本でも提供したことはその表れ。東南アジアでもPCゲームパスの提供を開始した。
引き続き日本を含むアジア市場に力を入れ、イノベーションを加速してゆく。個人的にはこの市場への投資を通じて、ゲーム開発者の皆さんと直接協力して働けることがなにより大事。
すでに250以上のクリエーターが現在Xboxのためにゲームを開発している。うち150はすでにゲームをリリース済み。
定額遊び放題サービスXboxゲームパスのライブラリのうち、100本以上は日本のクリエーターからの作品。
これからの1年でますます多数の日本発ゲームを追加してゆく。コーエーテクモのWo Long: Fallen Dynasty やペルソナシリーズなど。
われわれのミッションは、ゲームをプレーヤーにとってもっとアクセスしやすくし、クリエーターにとってもっと発見される機会を増やすことを通じて、ゲーミングコミュニティの楽しさを世界中の人に届けること。
―― 本日はお時間をありがとうございます。日本の開発者との協業を通じた成果が現れているとのことですが、では仮に私がゲーム開発者で、Xboxプラットフォームに参入しようかな?と迷っているとして、Xboxでゲームを作るべき!と売り込むピッチをひとつお願いします。
サラ ボンド:わかりました。世界のゲーム人口は30億人ですが、そのすべてにあなたの作品を届けるには、これまではPC向けや複数のゲーム機向け、モバイル向けなど別々のバージョンを作る必要がありました。
しかしXboxならば、ひとつのバージョンを作るだけですべてのゲーマーにリーチすることが可能です。また収益化の方法も多数用意しています。有料、基本無料、サブスクリプションなど。
開発でも収益化でも多くの選択肢から選べる柔軟性は、クリエーターとして求めるものを作る自由につながります。Xboxプラットフォームで開発すれば、もっとも多くのプレーヤーに、もっとも自由な方法でゲームを届けられます。
―― なるほど。開発環境や配信プラットフォームとして、一本のゲームをPCやXbox向けにビルドして配布しやすいということですね。
ひとつ質問させてください。世界のゲーム人口が30億人という言い方は、その大半がスマホでゲームを遊ぶ人を含めた数字だと理解しています。Xboxはクラウドゲーミングでスマホでもまったく同じゲームが遊べますから、それで全員にリーチできると。
ただ一方で、クラウドゲーミングを遊ぶには今のところ Xbox Game Passの最上位プラン Ultimate に加入している必要があり、ネットワーク的にも恵まれた環境が必要ですよね。果たしてどれくらいの「モバイルでだけゲームする」人口にリーチできるかどうか。
サラ ボンド:言いたいことは分かります。まず、ゲーム機やゲーミングPCなど特別な機器を持たない人にもゲームを届けるため、Xboxクラウドゲーミングの提供地域を拡大しているのはそのとおりです。今後も世界中の人が手持ちのデバイスでゲームを楽しめるよう、クラウドゲーミングを拡大してゆきます。
もうひとつ、世界中のゲーマーがどんな環境で、どんな方法で遊んでいるのかについて、われわれは広範な調査を続けてきました。高速なインターネット接続がどの程度の人口をカバーしているかについても。
Xboxクラウドゲーミングは、(すでに世界中に普及している) 4Gモバイル接続でもかなりしっかり遊べるんですよ。そしてもちろん、世界30億人のゲーム人口にゲームを届けるため、今後もさらに手を打ってゆきます。
―― では「30億人」についてもうひとつ。具体的な回答はいただけないと分かって訊きますが、ゲーミングPCやゲーム専用機を持っていない人や、熱心なゲーマー向けの定額サービスに加入していない多くの人にリーチするにはどんな方策がありますか。
たとえばテレビに接続する、クラウドゲーム用の安価なChromecast的デバイスのうわさもありました。あるいはスマホアプリやブラウザだけ、テレビのアプリだけでクラウドゲーミングができるなら、Xbox本体を持っている加入者が大半と思われる最上位プラン XboxゲームパスUltimate以外の、もっと気軽に手を出せる仕組みだとか。
サラ ボンド:具体的な計画についてはお話できませんが、われわれの究極の目標はプレーヤーをゲーム体験の中心にすることです。ゲームを楽しむ前にまず500ドルで専用の機器を買うことが必須、70ドルでゲームを買わないと遊べませんという状態が目標ではありません。
われわれのこれまでの取り組み、たとえばもっとも高性能なゲーム機と、もっとも購入しやすいゲーム機を両方とも用意すること、XboxゲームパスをPCゲーマーにも拡大したこと、ゲームパス加入者が同じゲームをスマートフォンでも遊べるようクラウドゲーミングの仕組みを作ったこと、すべては「プレーヤーが中心」という統一されたビジョンを目指しています。その目標のためには、これからも絶えず新たなイノベーション、新しい取り組みを続けてゆきます。
――では一人のゲーマーとしての質問です。マイクロソフトはベセスダなど大型買収で傘下のスタジオを拡大していますよね。そうした自社作品は原則的にPCでもXboxでも同時期に遊べて、片方を買えば両方で遊べること、進行も共有できるのは便利だなと思ってます。
マルチプラットフォームや時限独占のゲームは、どれで買うか悩んで結局両方買うことがよくあるので。あるいはXbox Series Sで気軽に手を出して、後からゲーミングPCを入手した場合も、買い直しや最初からプレイにならない利点もあるだろうし。
ただ一方で、同じゲームでもゲームパスやMicrosoft Storeではクロスバイ・クロスセーブでも、Steam版を買うとXbox版はついて来ませんよね。ビジネス的に当然といえば当然かもしれませんが、同じPC版のゲームを同じ価格で買うのに大きく差があるのは、Xboxゲーマー以外には直感的ではありません。
セーブやクロスプレイも、概ね問題ないとはいえ一部ではまだ制約があって買う前に悩んだり、プラットフォームの壁を感じることがあります。このあたりは解消すべき問題と認識されてますか。
サラ ボンド:まず言わせていただきたいのは、何ごとも最初から完璧というわけにはいかないということです。現在の仕組みで完成ではなく、絶え間なくイノベーションを続けて、質を高めてゆく過程であると思っています。つい昨日もPC版 Xboxアプリを改良して、新しい機能を追加しました。
いまでも確かに課題は残っていますが、われわれはプレーヤーが中心のゲーム体験という究極の目標を達成するために、そしてクリエーターの作品をプレーヤーに届けるために、今後もあらゆる障壁を乗り越えてゆきます。
―― ありがとうございます。これまで仕方ない、当たり前と思われていたような不便をプレーヤー目線で見直してゆく姿勢は、それが利益になるビジネス構造への転換も含めて、ゲーム業界では新鮮だしすばらしいと思っています。あ、これは質問じゃないです。
サラ ボンド:私も素晴らしいと思っています!(笑い)。
―― では最後に。マインクラフトやエルダー・スクロールズなど、大所帯になったマイクロソフト傘下スタジオのゲームは遊んだことがあっても、ゲーム機のXboxには手を出したことがない人は多いと思います。いま目の前に Xbox Series Sがあって、ちょっと気になるなと悩んでいるゲーマーがいるとして、売り込みのピッチをお願いします。
サラ ボンド:買わなきゃ!(迫真)
―― それはピッチじゃないですww
サラ ボンド:改めて。Xbox Series Sの良いところは、気軽に手を出しやすい価格帯でありながら、最新世代ゲーム機の利点がすべて得られるところです。クラウドゲーミングも含めたゲームへのアクセスしやすさ、複数のゲームを終了させず即座に切り替えて遊べるクイックレジューム、起動とロードの早さ、解像度優先かフレームレート優先か好みに応じて選ぶこともできます。
そのうえXbox Game Passが堪能できます。本体が購入しやすいだけではなく、100本以上のゲームが定額で楽しめて、ベセスダをはじめXbox Game Studiosの作品ならすべて発売日から遊べます。ゲームの世界に飛び込むために、一番簡単で始めやすい最短ルートです。買わなきゃ!でしょう?
――ありがとうございました!
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