先週、反ユダヤ的発言を繰り返してInstagramとTwitterからアカウントを一時的に凍結される処分を受けた人気ラッパーの「ye」ことカニエ・ウェストが、コンテンツ制限が緩いことで保守派の人々に人気のSNS「Parler」を買収することが明らかになりました。
プレスリリースで、Parlerの親会社であるParlement TechnologiesのCEO、ジョージ・ファーマー氏は「提案された買収は、すべての意見を受け入れ、取り消されることのないエコシステムを作るというParlerの将来の役割を保証するものです」と述べカニエによるParlerの買収が「世界を変え、言論の自由に対する世界の考え方を変える」ことになるだろうとしました。一方カニエ・ウェストはParlerのプレスリリースで「保守的な意見が物議を醸すとされる世の中では、われわれは自由に自分を表現する権利を確保しなければならない」と述べています。
Parlerが主張する言論の自由の重視という方針は、右翼や陰謀論者をサービスに引き寄せています。そして2021年1月に米議会が襲撃された事件の際は、このSNSが襲撃計画や調整を支援したとも言われました。そして事件の直後、GoogleやアップルはParlerを禁止アプリとしてアプリストアから削除し、ホスティング サービスを提供していた米Amazonもサービス提供ポリシー違反を理由にParlerのサイトをサービスから除外しました。
その後、Parlerはユーザーからの投稿をそれまでより厳しく管理することに同意したため、Googleとアップルは最終的にアプリストアにこのSNSアプリを復帰させています。またParlerはホスティング・クラウドサービスは自前で構築することとし、そのためにParlement Technologiesをサービスの親会社として新たに設立しました。
カニエとParlement Technologiesの契約は、年内にも買収の取り引きを完了させる見込みです。またその契約条件には、親会社からParlerへの技術面でのサポート、親会社のプライベートクラウドを利用することなどが含まれているとのこと。
なお、カニエがこのSNSを買収するのにいくらのお金を用意したのかはわかっていません。カニエ本人の純資産は20億ドルとも言われています。また、その収入の多くは自身が展開するスニーカーブランド「Yeezy」の収益や、GAP、アディダスとのパートナーシップによるものだとされています。
しかし、GAPは9月にカニエとのビジネスを終了すると発表し、アディダスもカニエがパリ・ファッション・ウィークで「White Lives Matter」のTシャツを来て物議を醸した後、関係を見直すと述べています。また最近になって、Yeezyブランドの銀行パートナーであるJPモルガン・チェースが、やはりこのラッパーとの関係を終了させることが明らかになっています。