かつてMicrosoft(以下、「MS」)のSurfaceシリーズは修理しにくいことに定評がありました。しかし最新のSurface Pro 9では非常に修理しやすくなったことが、ハイテク製品の分解でおなじみの修理業者iFixitの調べにより明らかとなっています。
ハードウェア設計が修理しやすくなっただけでなく、メーカーであるMSも、米国で2023年からSurface Pro 9の修理部品や修理ツールを独立系修理業者や一般ユーザーに提供するとの声明を出しました。
もともとiFixitは2021年末から、Surfaceシリーズを対象とするMS公認の修理ツールを販売しています。
つまり修理においてパートナー関係にあるわけですが、今回の分解では自腹を切ってSurfaceを購入し、他の製品と同じように修理しやすさの観点から長所と短所を評価しながら作業を進めたと断り書きをしています。
過去のSurface製品がどれほど酷かったかといえば、わずか数年前のSurface Pro 7に修理しやすさスコア10点満点中1点という最低スコアが付けられたほど。iFixitはしばらくの間、MS製品は修理不可能なデバイスだと見限っていたと言っています。
ところがSurface Pro 9では、まず内蔵SSDは本体からマグネット式のふたを取り外すだけですぐに手が届きます。
それからネジ1本を外せば、より大容量のストレージに交換できます。前モデルのSurface Pro 8でもSIMカード交換用のピンを小さな丸に押し込むだけでしたが、お手軽さを受け継いでいます。
次に、ディスプレイの周囲をピックで加熱しつつ外しています。前世代ではガラス製ディスプレイの下に接着剤が使われているため取り扱いが困難でしたが、最新のSurface Pro 9では画面の端がある程度曲がっており、実にスムーズに取り外せています。
その次はヒートシンクや内部の金属カバーですが、こちらもトルクネジを回してやるだけ。バッテリーも接着剤を使わず単にねじ込まれており、ヒートガンで温める必要もなくなり、交換が劇的にラクになっています。また他の部品もモジュール化されており、その部分だけ取り出して新品に替えることも容易いもの。
唯一の例外がハンダ付けされたRAMですが、コンパクトな電子機器では一般的であり、(プロセッサの)近くに置くことで省電力と性能アップに貢献するためとして大目に見られています。
さてMSがiFixitに送った声明文では、「デバイスの修理を可能にすることの重要性を認識しており、Surface Pro 9の開発でも主要な焦点でした」と認めています。
見かけは昨年のSurface Pro 8と変わり映えしないとの声も聞こえましたが、内部設計は意識して修理しやすく改良したようです。
また、ここでいう「修理可能」には修理手順(を書いたマニュアル)やスペアパーツを入手できることも含まれるそうです。
具体的には「ディスプレイ、バッテリー、マザーボード、ファン付き放熱モジュール、SSD、SSDドア、キックスタンド、Surface Connectポート、スピーカー、マイク付きWiFiデッキ、フロントカメラ、リアカメラ、電源ボタンおよび音量ボタン、バックカバー」といったところです。
ただしサービスが提供される地域は「米国の大手小売業者と協力して」とあるため、当面は米国だけになると思われます。
もっとも 完全な修理手順を含む Surface Pro 9 サービス ガイドは、MS公式サポートサイトで年内に一般公開の予定。こちらはダウンロード形式で、特に申込みの手続きなしに入手できる見通しです。
まだ日本など米国以外の地域で提供される時期、そもそも提供されるかどうかも言及はありません。が、「発売時期は市場によって異なります」とあるため、いずれ準備ができ次第(おそらく各地域の量販店との協力のもと)実現する可能性がありそうです。
上記のように、Surface Pro 8の時点でSSDを自力で交換するのは簡単となっています。が、「Microsoftの保証とサービスプラン」では、「Surface Pro X および Surface Pro 7+ を除き、SSD はユーザーが取り外すことはできませんが、熟練した技術者が Microsoft の指示に従って取り外すことができます」とあり、もしもDIY交換すれば製品保証の対象外となる可能性もあります。
MSの主張どおりSurface Pro 9の設計思想が「修理しやすさ」を重視するのであれば、ユーザーによるSSD換装後も正式に保証の対象とすることが望まれるかもしれません。