ソニーもMSも次世代ゲーム機の発売時期を「2028年以降」と大まかに予定していることが、規制当局に提出された文書から明らかとなりました。
これら資料は、MSがゲームパブリッシャー大手アクティビジョン・ブリザードを買収する計画を認可するかどうかをめぐり、両社が英競争市場庁(CMA, 公正取引委員会に相当)に申し立てを繰り広げているなかで提出されたものです。MSはこの買収は独占禁止法に違反しないと証明し、ソニーは違反すると主張するために、互いに「自社の方が弱い立場にある」と自虐を応酬していることは先にお伝えした通りです。
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さてソニーが10月28日(現地時間)に提出した書類によると、MS側はアクティビジョンの買収に成功した暁には、同社のゲームを2027年まではPlayStationに提供し続けることを保証すると提案したとのこと。
が、ソニーとしては「ひどく不十分」との判断。それでは次世代ゲーム機(PS6)がアクティビジョンの「Call of Duty」(以下、「CoD」)シリーズを初めとするタイトルなしに発売されることになり、ユーザーのXboxへの乗り換えや競争力の低下に対して極めて脆弱になる、と主張しています。
さらにPS6の発売時期にも言及していますが、その箇所は公開版では黒塗り。しかし「2027年でアクティビジョン(CoD)新作を打ち切られては、PS6から乗り換えが発生して困る」という文脈から考えて、おそらく2028年以降だと推測されます。
その3日後に、MSもソニーに応える形でCMAに文書を提出。同社もゲーム機が新世代に交代する時期にユーザーが乗り換える可能性に異論はないとしつつ、「およそ8年ごとに起こる出来事」「次世代ゲーム機の発売は、2028年秋以降になると予想」しているとのこと。
つまり、ソニーとMSともに次世代ゲームハードが投入されるのは2028年以降であり、2027年以前ではないことで一致しているわけです。
特にMS側は、半導体供給の制約によりPS5とXbox Series X|Sの生産も「(非公開の時期)」まで限られると見ています。要は物流や生産事情を含むサプライチェーン的に、まだしばらくは次世代ゲーム機を大量に生産する余裕はないと示唆しているようです。
また興味深いのは、10月末の時点ではMSがソニーに「CoDを2027年までPlayStationに供給」と述べている点でしょう。ここに書かれた時間軸を合わせて考えると「PS5世代まではCoD新作を保証する、PS6世代では保証しない」と言っているも同然、ということです。
そしてMSがソニーに「CoDシリーズをPlayStation向けに10年間は供給し続ける」と提案した、とメディア向けに明かした日付は11月21日。総合的に読み解くと、PS5世代に限った申し出を断られたため、改めて「PS6世代も含めてCoD新作の提供を約束する」と再オファーしたと推測できます。
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ちなみに、PlayStationとXboxどちらも中世代機、すなわち完全な次世代機までのつなぎとなる強化発展モデルの噂はいくつか出ています。たとえば中国の大手電機メーカーは新型テレビの発表会にて、なぜか「ゲーム専用機の世代」と題したスライドを公開。そこでは2023/2024年に「新型Xboxシリーズ」や「PS5 Pro」が発売されると書かれていました。
また、今年5月にはXbox Series X|SとPS5にチップを供給するAMDが「次世代RDNAファミリー」のグラフィックチップを開発するスタッフ募集を開始。ほか、ほとんどの大手ゲームスタジオが「中世代アップグレードの開発キットを受領済みか、年明けまでに受け取る」とのリーク情報もありました。
ソニーがPS4 Pro(2016年)を投入したのは、PS4発売(2013年)から約3年後のこと。またXbox one X(2017年)もXbox One(2013年)から4年後に登場しており、2023~2024年にPS5やXbox Series X|SのProモデルが登場してもおかしくはないでしょう。
今回CMAに提出された文書からは、MSとソニーともに「ゲーム機が世代交代する時期こそ勝負所」と考えていることが浮き彫りとなっています。互いに中世代機を投入して相手の出方や市場の反応を見きわめてから、次世代機を「2028年以降」のいつ発売するか検討するのかもしれません。