『サイバーパンク2077』CD PROJEKT RED本間氏インタビュー『サイバーパンク エッジランナーズ』制作秘話とこれから

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Tech Journalist. Editor at large @TechnoEdgeJP テクノエッジ主筆 / ファウンダー / 火元

特集

『サイバーパンク エッジランナーズ』とテクノエッジの「エッジつながり」コラボ企画、インタビューの第二弾はゲーム『Cyberpunk 2077』、アニメ『サイバーパンク エッジランナーズ』を制作したCD PROJEKT REDのジャパン・カントリー・マネージャー、本間覚さんにお話をうかがいました。

話題は『サイバーパンク エッジランナーズ』制作の経緯や反響から、ゲーム『サイバーパンク2077』で描かれる「もうひとつの日本」、原作TRPG『サイバーパンク2.0.2.0』のマニアックな話、ジャンルとしてのサイバーパンク復興、そしてCD PROJEKT REDの今後について。

(第一弾のトリガー宇佐Pインタビューはこちら)

CD PROJEKT REDジャパン・カントリー・マネージャー本間覚氏

本日はよろしくお願いします。そのサイバーパンクのシャツ、めっちゃかっこいいですね

本間氏:
これはグッドスマイルカンパニーさんが販売されている『サイバーパンク: エッジランナーズ』のロングスリーブ T シャツのサンプル品です。グッドスマイルカンパニーさんは(エッジランナーズを制作した)トリガーさんのグループ会社だったので事前に情報を共有しやすくて、早くからマーチャンダイジングに着手してもらっています。

ただCD PROJEKT REDとしてはアニメを制作するのは初めてで、事前にどこまでヒットするか読むことは難しいですから、マーチャンダイズ関連は一般的なアニメ作品よりも出遅れてますね。幸いにもトリガーさんにグッズ制作能力があるので、公式グッズの展開に力を入れていただいております。

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エッジランナーズの数字や反響は、やはり相当に好評だったんでしょうか。

本間氏:
そうですね。具体的な数字は開示できない、というか詳細はわれわれにもわからなかったりするんですけど、ソーシャルでの盛り上がりとかを見ると非常に多くの人に見ていただいてるなとは思います。

特にわれわれはグローバルでコンテンツを展開してるので、Netflixさんがパートナーで良かったなと思ってますね。もしこれが日本市場向けの作品だったらまたちょっと話が変わってくるのかもしれないですけれど。

作品としても非常に高評価で話題になりましたが、ここまでのヒットになる可能性は予想されてましたか?

本間氏:
まず第一に予想してなかった、というのがすごくありまして。繰り返しになりますが、われわれはアニメを起案して制作するのは初めてでした。もちろん私個人としても初めてですし。

会社としてはもちろん、アニメ配信のタイミングでエッジランナーズのコンテンツをゲームのサイバーパンク2077に入れるパッチ1.6は準備してましたし、ある程度備えてはいましたが、それも別にアニメ企画の起案時から予定していたわけではなくて、後付けの施策です。例えばロッテントマトで100%スコアがつくとか、各メディアで絶賛されるみたいなことは正直予想してなかったので、非常に驚いてますね。

日本の他のアニメ作品と比べてどうなのかは、Netflix配信の場合は定量的になかなか比較できないところがあるんですけれども、日本発のアニメ中では、グローバルで非常に良い数字を出していることはNetflix さんからも伺ってます。

エッジランナーズのプロジェクトは、もともとNetflix配信ありきで始まったんでしょうか。

本間氏:
もともと弊社がアニメを作りたいと進めてきたなかで、結果的にNetflixさんと独占で組むかたちになりました。

そこから4年ほどかけて制作してきて、良い結果が出せて、特にゲームの側でもセールスに結びつく盛り上がりができて。それはアニメの成功だけじゃなくて、ゲームの開発者たちが諦めずに改善を続けてきたことの結果でもあります。

ロンチにいろいろと問題があったサイバーパンク2077ですけども、そこから盛り返すくらい、ゲームの内容もブラッシュアップできているということだと思うので。各方面から皆でがんばって土台作りをしていたのが、最終的にはすごくいい形に全部まとまって良かったなと思っています。

「諦めずに」という言葉が出てきてちょっとドキッとしました(笑)

本間氏:
もちろん誰も諦めるつもりはなかったと思うんですが、やはり2020年12月のサイバーパンク2077のロンチを経て、CD PROJEKT REDとしては多くの学びを得ました。それからなかなか明るいニュースがなかったので、今回やはり、こうした盛り上がりが作れるまでになったことを、開発の現場ではすごい喜んでるんですよね。ずっとサイバーパンク2077のバグ修正や、追加コンテンツの制作をしてきたわけですから。

社内のSlackのチャンネルでも、エッジランナーズがきっかけになって、ゲームのほうで例えばSteamの同時接続が100万を超えたとか、みんな嬉々としてポストしていて。それを見てるのは嬉しいですね。

エッジランナーズの制作についてはトリガー宇佐さんのインタビューでも詳しくお伺いしていますが、ネトフリではWitcherのドラマが好評ですし、てっきりネトフリ側から話があったのかと思ったら、そうではなかったんですね。

本間氏:
基本的にそうですね。Witcherはまた複雑で、映像化の版権とゲームの版権が別になっていて、われわれはゲーム側の権利しか持っていないので、実写の映画もアニメもわれわれは作れないんです。よく誤解されるんですけど。

そうなんだ!知らなかった!

本間氏:
なのでエッジランナーズに関しては、CD PROJEKT REDがやりたいと思ってスタジオ探しから始めました。2018 年ぐらいですけど、当然アニメ化するなら配信先がないと難しいとなって。

さすがに日本の地上波は難しいですよね。内容的にもエッジーになるということで。まあそこは元々グローバルで、ネット配信でゆく方針があって、ドラマのWitcherでつながりもあったので Netflixさんになりました。

サイバーパンク2077の外伝アニメをトリガーが制作すると発表されたときに思ったのは、もちろん人気のスタジオだし個人的にも好きだけれども、とはいえ結構アニメアニメしたというか、日本の手描きアニメそのものの作風ですよね。

ゲームの緻密な印象の CG からすると、トリガーのアニメでは表情ひとつとってもぐにゃんぐにゃんに顔が変形するし、組み合わせが意外だったんですが、それが……

本間氏:
蓋を開けてみたら、ですよね

「こういうことか!」って。

本間氏:
これは他のインタビューでもお話してますが、エグゼクティブプロデューサー兼製作総指揮の立場に、私の元上司のラファウ・ヤキ(Rafal Jaki)という人物がいまして。

ビジュアル的な部分は当然、トリガーさんに1 から作っていただいてますし、監督としては今石監督がいらっしゃいますけども、CD PROJEKT REDとして作品に責任を持つ立場のラファウがもともとアニメが大好きで。

なかでも特に2Dアニメーションオタクで。なので昔ながらの手描きの2Dアニメを作りたいというのが、かれの個人的願望としてもすごく強くあったようです。最初に何社かお話させていただいたアニメーション会社も、2Dアニメで定評のあるところでしたね。

そうやっていくつかスタジオを回らせていただいたところで、トリガーさんが、制作にあたっての思いのようなものを、一番強くわれわれとしては受け止めることができました。

特にその当時だとダーリン・イン・ザ・フランキスという、トリガーさんがA-1 Picturesさんと合作で作られたアニメ、いわゆるダリフラが話題になっていたころです。ダリフラは日本でも人気がありますが、海外人気がすごいんです。ラファウもダリフラをひとつのベンチマークとして活用していましたね。

なるほど!つながった気がします。これはエッジランナーズにもゲームのサイバーパンク2077にも関係する話なんですが、サイバーパンクというジャンル自体、今はやりたくてもなかなかできないものだとか。トリガーさんも別のインタビューでお話されてましたが、それを聞いてびっくりして。

個人的には大好きだし、流行してた頃からずっと王道じゃないの?と思いこんでいたので。

本間氏:
今石監督が、サイバーパンクってある意味では過去のジャンルで、レトロだと捉えられている、そんな中それに全力投球できたのが面白いと他誌のインタビューでおっしゃってたたんですけど、やっぱり1980 年代90年代に一番花開いて、その時代にどうしてもアイコニックな作品もできちゃったので、黄金期を過ぎた、というような印象はありますよね。

とはいえそれはゲームでも一緒で。『サイバーパンク 2077』はサイバーパンクってジャンル名をそのままタイトルにするという、いわば禁じ手みたいなことをやるくらい、サイバーパンクの王道を行くことが設計思想やデザイン思想にもあったと思うんですけれど、発売前はゲームでもやはりサイバーパンクものってあんまり売れないみたいな風潮はありましたね。

ファンタジーRPGなんかでは分かりやすいですが、Witcherシリーズも成功していて、The Elder Scrollsシリーズも成功していて、もちろん日本発のファンタジー作品も成功してるんですけど、サイバーパンクで何千万本も売れているタイトルはまあないんですよね。『サイバーパンク2077』はそんな風潮に対するのろし、宣戦布告だったのかなと思っています。

……確かに!にもかかわらず、ファンタジーのWitcherの次にサイバーパンクをゲーム化したのはどんなきっかけなんでしょうか。『サイバーパンク2077』はティーザーが公開されたのが10年前、2011年くらいですよね。当時はWitcher 3がこんなに大成功して、大正義になるとは誰も分からなかった。

本間氏:
第一には、原作にあたるテーブルトークRPG『サイバーパンク2020』の世界観、クリエーターのマイク・ポンスミスさんの作り上げる世界観のファンがCD PROJEKT REDのスタッフにすごく多かったことですね。

RPGを作っている会社として、Witcherだけをずっとやってゆくわけにもいかない、次はなにをするかというところで、ファンタジーから180度反対方向に振ると、まあSF方面になりますよね。そういうことで、いつしかWitcherの次はサイバーパンクとなったようですね。

『サイバーパンク2077』の開発について。原作の『サイバーパンク』(Cyberpunk RPG)が好きで企画が始まったのなら、世界観だけではなく原作の年表上のどこを舞台にするかだったり、オリジナルのクリエーターのポンスミスさんとすり合わせが必要になりますよね。アラサカ家の人物が出てきたり。

本間氏:
そうですね。原作のいわゆるカノン、正史をちゃんとキープして展開することが求められてきますね。ポンスミスさんも、最近ではエッジランナーズのデイビッドがあんなに耐性が高いのはこんな解釈が考えられるだとか、原作的な視点からFacebookに書かれていたりして。

エッジランナーズという派生作品まで含め、もちろん配信前に見ていただいて、非常にご理解を示していただいてます。そこはうまくやれているのかなと思いますね。

面白いのが、マイク・ポンスミスさんも元々はバブルガムクライシスだとか、日本の昔のサイバーパンクアニメにも影響を受けて、TRPGの『サイバーパンク』を作られたんです。それが回り回ってまた日本発のアニメになったというのはすごく面白いですね。

当時、米国でも尖ったおたくが、日本のアニメをVHSとかで見てたころですよね。1980年代だとか。そういう意味で、もともとサイバーパンク自体が日本と切っても切り離せないジャンルでもある。

日本人にとっては微妙に現実とは違う日本のイメージが面白いこともあります。たとえばアラサカは実在の名字ですが、「キロシ」ってなんだよ!とか。

本間氏:
キロシは明確にあるんですよたしか。元ネタが。

ええっ!そうなんですか??

本間氏:
サプリメントの日本についてのソースブックで、もともとは単位のキロと視野でキロシヤ、それがキロシになったとか。

そうだったんだ……。原作のサイバーパンクRPGは好きなんですが、昔からキロシってどこから来た?と思っていて。設定上、上諏訪の時計作りから光学メーカーになったキロシヤがキロシに改名したのは知ってたんですが、キロシ屋という屋号だと思ってました。

いつかマイク・ポンスミスさんにお会いすることがあったらお訊きしようと思います。しかしこれ、インタビューを読まされてる人も一体何の話をしてるんだ??ってなりますねw

原作つきという話でいえば、舞台を一気に2077年にしたのも驚きでした。原作のTRPG的には、最新作のREDが出る前の年表では2030年代だったはずなので。

しかもサブロウ・アラサカという、サイバーパンク2020の時点でいちばん有名な大ボスが……

本間氏:
まだ生きてるっていう(笑)

大日本帝国の戦闘機乗りだったのが、敗戦で復讐を誓って世界を牛耳るわけだから、150歳くらいですよね。2077年時点で。

本間氏:
全然元気になってますよね(笑)。面白いのが、サブロウ・アラサカってゲーム中の回想シーンでも出てきますよね。生きてるジョニー・シルヴァーハンドと一緒に出てくるから、2020年代とかそんなんだと思いますけど、その時のサブローがゲームのアップデートで若返ったんですよね。

2077年だとサブロウは見た目はヨボヨボのおじいちゃんなんですけど、回想シーンでも同じモデルを使ってたのが、当時はまだ若かったってことで、ちゃんと髪の毛が足されるアップデートがどこかのタイミングで配信されてましたね。

原作の話でいえば、アラサカ家のお家騒動というのは2020の時点で設定としてあるんですが、2077になってサブロウが生きてたどころか、直球でアラサカ家をめぐるストーリーになることにもびっくりしました。

本間氏:
そこはやはり、原作ファンも唸らせるような作りというか。初めてサイバーパンクの世界観に触れる多くの人にとっては関係がないとしても。ただ原作の最新版、サイバーパンクREDもいますごく売れているというニュースは見ますね。

TRPG で洋書で重版がかかるのはやはりなかなかないらしくて。日本ではホビージャパンさんが出されてますけれど、エッジランナーズの人気もあって、日本でそういう形で原作の TRPG が盛り上がるのは嬉しいですね。

それはすごく意外でした。そういえば、細々と伝えられてきたようなTRPGが、いまでは遊んでる様子がYouTubeやTwitch配信でコンテンツになって、それでダンジョンズアンドドラゴンズなんかは大復活してという話はありました。

本間氏:
そうですね。特に海外で多いんじゃないですかね。それこそ俳優だとか、いろいろなバックグラウンドをもった有名インフルエンサー集団がチーム組んで実況プレイみたいな、クオリティがめちゃめちゃ高い映像が出てきます。ダンジョンズアンドドラゴンズは、人気ドラマのストレンジャー・シングスなんかの影響もあると思いますし。

日本でも劇団の人たちが、サイバーパンクREDをやって映像を流すようなことをやってらっしゃったり。そういうかたちでまたTRPGに焦点が当たるのは面白いと思います。

なるほど。ビデオゲームの『サイバーパンク2077』が売れてくれたおかげで、サイバーパンクのジャンル好きにとってはルネサンスというか。

本間氏:
TRPGのサイバーパンクでもエッジランナーズのミッションパックが出ることになったり、非常に盛り上がってるかなと。

元の質問に戻って、サイバーパンクってジャンルは死に体じゃないの? みたいなところに繋がってくるんですけど、全然そんなことはないんですよね。

たとえば『サイバーパンク2077』って中国ですごい人気があるんです。特にZ世代と呼ばれる若い人たちにとっては、サイバーパンクってそのまま現実の生き様みたいなこともあって。上海とか重慶とかの大都市って、もはやサイバーパンクを絵に描いたようなすごいことになっている。そこで暮らしてるZ世代の若者たちには、サイバーパンクの世界観がド直球らしくて。

中国の担当者によると、そういうことで中国のゲーマーとの親和性がすごい高いそうなんです。

コロナ禍がある程度落ち着くと海外旅行が再開するじゃないですか。もちろん日本に来る方もたくさんいるなかで、もっとサイバーパンクって求められているなと思っていて。観光客向けも含めて、日本はもっとサイバーパンクに振ればいいのにと。

例えば「サイバーラーメン屋」とか、たぶんもうあると思うんですけど、鬼のように人が入ると思うんですよね。ネオンギラギラのラーメン屋さんとか、めちゃめちゃ人気出ると思うんですけどあまりやってるとこはないので。ゲームのサイバーパンクとは無関係に、サイバーパンク的な世界観でね。

われわれもネオンチョップスティックってグッズを作ってましたけど、その光るハシでラーメン食ってインスタに写真投稿してみたいなのがめっちゃ来ると思うので、日本は早くそこに投資したほうがいいんじゃないかなと個人的には思ってます。

素晴らしい……サイバーパンクの復興が!

本間氏:
サイバーパンクが終わったというのは、われわれが終わったと思い込んでるだけで、世界ではむしろ始まってるみたいな感じですね。それはこの『サイバーパンク2077』が2000万本以上売れるというのも、ひとつの数字として物語ってると思います。

日本ではいわゆる洋ゲーって何十万本がほぼマックスなんですけど、グローバルでは2000万本以上も売っていて、サイバーパンクを認知しているその人たちは、もっとサイバーパンクに浸りたいと思っているはずなので。

もっとネオンラーメン屋をフランチャイズ展開したほうがいいと私は思ってます(笑)。日本はきっとこれから観光産業に力を入れざるを得ないだろうし、サイバーな日本をもっとリソースとして活用すべきだと思いますね。

サイバーパンクな日本といえば、大元のSF小説のサイバーパンクジャンルは、特に米国から見た1980年代の世相を投影していて、経済成長が著しかった日本が大きな存在になってますよね。

サイバーパンク2020でも2077でも、巨大企業が支配するディストピア世界で一番権力を持つのが日本のアラサカ社という設定です。現実の2020年代のわれわれからすると、残念ながら、日本企業が世界を支配してるのはなかなかリアリティを感じづらいけれど。GAFAとか全部米国企業ですし。

そうした「もうひとつの日本」が扱われる作品のゲーム化にあたって、日本人スタッフとして、ゲームの内容に何かインプットをしたり、相談を受けたりしたことってありますか?

本間氏:
まあ、あったとしてもディテールのレベルですね。エッジランナーズについてはこちらでハンドリングしているのでちょっと話が変わってきますけど、ゲームに関しては、私個人として開発に直接関わっているわけではありません。

ディテールのレベルでいえば、例えばタケムラというキャラクターがいるじゃないですか。そのタケムラが、こういう時にこういう行動をするのはサムライとしてどうだ?と開発者から訊かれたりだとか。

かれらは日本の作品のなかでも時代劇や任侠映画であるとか、高い評価を受けているものを見て育っているし、特にクリエイターたちはわれわれ以上に日本の作品をみています。

そのうえで、たとえばこの日本人キャラクターがこの建物でこんな動作、所作をするのはクロサワ映画的な観点からはどうか? キャラクターに合ってるか?みたいなことを訊かれたりはしましたね。

あとはアラサカ・ハナコの化粧はどう思う?と訊かれたり。でもその辺も、まあ言うても 2077年ですからね。どうなっているか分からないし、ましてや今から55年後の2077年じゃなくて、原作の設定が作られた1980年代から見ておよそ100 年ぐらい先の 日本人がどんな化粧してるかなんて、まあぶっちゃけ誰にも分からないし、極論なんでもいいじゃないですか。

そのころの日本人らしさがどうなっているか分からないし、ますます多様性を言われているであろうなかで、日本人らしくしろということもないと思って。

ハナコの化粧はある意味すごくステレオタイプでもあるんですね。くちびるの真ん中だけ赤い紅をさしたり、真っ白な白塗りだったりして。でも正直 2077年の世界じゃ1 周回ってそれが普通になってる可能性もあるので、開発がそうしたいなら、敢えてそこは強くいいませんでしたね。

あとは日本人ってすでに、日本人といえばこの姿ってものもあまりないと私は思っています。髪の色はバラバラですし、服装も全然違う。ましてやこの近未来の世界においてはその辺もサイバーウェアだとか、性別すらもおそらく希薄な考え方になってるんで、あまり日本人はこうだ、みたいなことは正直言いませんでした。

看板などもそうですけど、意味が分からないようなものも、サイバーパンクにおいてはそれが正解だったりするので。いわゆるなんちゃって日本語の変な看板もあるし、それが正解だから、絶妙なバランスで残さないといけないじゃないですか。それを全部取っちゃうとすごい綺麗な、猥雑さのない日本文化ができてしまう。サイバーパンクにおいてはおそらく成立し得ないような。

ではゲーム『サイバーパンク』の今後についておしえてください。大型の拡張として『仮初めの自由(原題:Phantom Liberty)』が2023年に配信予定ですね。

本間氏:
拡張というかたちでは一旦そこまでですが、Orionというコードネームで続編を作っていることは発表しています。ゲームエンジンがUnreal Engineになることもあり、新規に作るほうにシフトしてゆく感じですね。

『仮初めの自由』が完成したら、その人員を北米に送って、Orionを作るためのスタジオを新たに組む予定です。本社からスタッフが移住して。完成するのは正直何年後かわからないですけど、そんな感じで進んでます。

ということは、エッジランナーズもゲーム本編も大変好評だし、Witcherと比べられるか分からないけれども、サイバーパンクもメインの柱として今後も進めてゆくと。

本間氏:
さらに新規のIPを作ろうとしているので、それを加えて3本の柱ですね。弊社の中長期計画で発表したのが、OrionとWitcherシリーズの新作続編でPolarisというもの。あとWitcher 1 のリメイクというものも走ってまして、もうひとつSiriusってプロジェクトコードのWitcher作品も予定していて。

だから結構、長い時間のスパンになると思いますけれど、色々な外部のスタジオさんともパートナーシップを組んで進めています。

なるほど。ではWitcherファン、CD Projekt REDファンにとってはもちろん、サイバーパンクのジャンルのファンにとってもこれからずっと楽しみな時間が続くと。

本間氏:
どうしても時間感覚的には長いと思いますけどね。人気のFPSのシリーズみたいに、毎年出るということは多分ないと思いますけど、長いスパンでご期待いただければと思います。

おそらくうちの会社は、基本的な考え方としてはPC向け、ゲーム機向けに作っていくのと、あとはエッジランナーズがすごく成功したので、そういう形でのIP展開ですよね。アニメはもちろん、さまざまな媒体を通じて世界観を広げていくことが計画に入っています。

そんな風にサイクルを回していきたいと本社は言っているので、日本のわれわれとしても多少は力添えができると思いますね。

エッジランナーズの続編になるかはさておき、何か映像プロジェクトがあるなら、当然すでにかなり動いているということですよね。

本間氏:
何らかの形で、アニメは継続して作っていきたいと考えていますね。私としては、もちろん日本の会社と一緒にできればいいかなと思ってます。

本日ご説明させていただいたとおり、今後も中長期にわたって新しい作品をお届けしていきます。自分も可能な限り現場で参加したいので、身体に気を付けてがんばります(笑い)。

なるほど、大変楽しみです!私も健康に気をつけて長生きしようと思いました(笑い)。本日はありがとうございました!

海外ゲームと日本語ローカライズについてお聞きしたインタビュー後編はこちら


『サイバーパンク エッジランナーズ』トリガー宇佐義大プロデューサー インタビュー


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