米国の小惑星採掘ベンチャー企業Astroforgeが、2023年内に2回の探査機打ち上げを計画していることを発表しました。
まず最初は、4月に予定されるSpaceXのライドシェアミッション「Transporter-7」。宇宙技術企業OrbAstroの6U CubeSatに、AstroForgeの無重力精製・抽出技術の実証ユニットと「小惑星を想定した物質」を組み込み、地球低軌道上でプラチナを精製するための技術をテストします。
そして10月予定の2号機は、将来に採掘を予定する小惑星に向かい、表面の情報を収集する計画です。
これらのミッションは、Astroforgeが希少な金属を宇宙空間で精製することで採掘コストを引き下げ、さらに地球上で採掘する際に放出される大量のCO2の問題を軽減することを目的としています。
また現地で金属を精製する際に出る廃棄物はその場に残し、地球に持ち帰ることがないというメリットもあるとAstroforgeのCEO、Matthew Gialich氏は説明しています。
Gialich氏は、10月のミッションが(1件の例外を除いて)地球の重力圏外での初の商業的な深宇宙飛行ミッションになると主張しています。この1件の例外とは、2018年にイーロン・マスク氏がFalcon Heavyロケットで宇宙へ送り込んだテスラ・ロードスターのこと。ただ、Gialich氏は「イーロンはただ宇宙へ打ち上げてそのまま忘れてしまったので、ミッションとは呼べないと思う」と語っています。
10月の2号機は Space Exploration Technologies社のロケットに相乗りする格好での打上げになる予定で、Intuitive Machines社の月着陸船も同乗します。
月へ向かう途中で分離し、自らの目的地である小惑星に向かう計画ですが、記事執筆時点ではそれがどこのどれなのか明かしておらず、将来その小惑星での採掘を終えるまで公表することはないだろうとしています。
この最初の2回のミッションが成功すれば、Astroforgeは2度目のミッションで下見済みの小惑星に向けて、タッチダウンを予定する3度目のミッションを、さらに小惑星に降り立ち、金属の採掘から精製、帰還までを行う4度目のミッションを計画しています。
ちなみに、小惑星採掘を目指した企業は過去にもありました。Planetary Resources社とDeep Space Industries社は約10年前に設立され、小惑星採掘を目指していましたが、いずれも道半ばにして財政難に陥り、他の企業に買収されています。Astroforgeが同じ道をたどらないためには、かなり多くのハードルを越える必要がありそうです。
また、これまでに小惑星から最も多くの物質を採取したのはNASAのOSIRIS-REx探査機で約250gとされていますが、現在は地球に帰還途中であり、まだ「持ち帰った」とは言えません。