Twitter のCEOに就任後も活発にツイートを続けていた実業家イーロン・マスク氏が、すべてのツイートを非公開にしました。いわゆる鍵付きアカウント設定です。
フォローしていないユーザーからは一体何があったのかと思えますが、理由はツイッターの表示アルゴリズムをテストするため。
本人いわく、非公開にしたツイートが公開時のツイートと同じくらいフォロワーに表示されるかを試す目的です。期間はマスク氏にとっての翌朝、日本時間ではおそらく今夜未明以降。
タイムラインを「フォロー中」や「最新のツイート」に、つまりフォロー中ユーザーのツイートとリツイートだけが時系列順に並ぶようにしている場合は特に気にすることではありませんが、ユーザーの興味を引くようツイッター側のロジックで生成する「おすすめ」「for you」タイムラインの場合、フォロー外からの人気ツイートが並ぶことも、フォローしているユーザーのツイートが時系列を前後したり見えにくくなることもあります。
「タイムラインをごちゃごちゃに混ぜたり、フォロー外やLikeしただけのツイートも並べる」行為は、一定のツイッターユーザーからは万死に値する罪と思われており、マスク氏の買収に伴うレイオフでおすすめタイムラインのアルゴリズム担当エンジニアが解雇された際にはよくぞやってくれたと喝采する声すらありました。
しかしマスク氏は「おすすめ」タイムラインを廃止するために解雇したわけではなく、単にコスト削減のため最小限のスタッフを残して大量レイオフしただけであって、むしろアルゴリズムによるタイムラインの強化を図っています。
マスク氏の立場、あるいはツイッターの経営からすれば、「おすすめ」タイムラインはユーザーの興味を引くツイートを集めて並べることでエンゲージメントを稼ぎ、利用率と時間を伸ばし、ひいてはサービスの価値を増し広告を販売するために欠かせない機能。
ツイッターに限らず、広告が主な収益源であるネット企業にとっては、ユーザーにできるだけ頻繁に、できるだけ長くサービスを利用させること、少しでも多くタップさせクリックさせ再生させスクロールさせることがサービスの価値になり広告主への売り値になるため、ユーザーの利用を極大化するためのアルゴリズムが重要な価値を持ちます。
「ツイッターを長時間使いたいわけじゃない、自分で選んだ興味のあるものを効率的に見たいだけ、人気のツイートを見たいときはトレンドを見る」というユーザーからは不可解だったり無能の極みに思えても、そうでないユーザーを含めた全体では「おすすめ」のほうが食いつきが良く、利用につながるため、ツイッターにとって止める理由がありません。
とはいえマスク氏は「外国の話題のツイート挿入」以外にも「おすすめ」の改善に取り組んでおり、今回のテストもそうしたアルゴリズムの確認・調整の一環と考えられます。
ユーザーにとっての使い勝手としては、最近導入された「おすすめ」と「最新」、ピン留めしたリストをスワイプで素早く切り替えられ、以前に見ていた位置を覚えるのも、マスク氏が以前から予告していた改善のひとつ。
おすすめタイムラインの存在自体は別に気にならない、むしろ見たいときもある、不愉快なのは勝手に「おすすめ」に戻したり無理やり見せること、というユーザーにとっては、分かりやすく切り替えて見られるのは確かな改善です。
(以前はおすすめとの切り替えが分かりにくいアイコンだったり、いまどちらを使っているか意識させないようにしたり、名称もなんとか使わせようと頻繁に変えたり、手動で切り替えても勝手に戻る等々が頻発していました。)
マスク氏はいわゆるシャドウバンの話とも関連して、タイムラインを構築するアルゴリズム、ツイートの見えやすさ(ランク)を決めるコードもオープン化すると発言していましたが、現時点で具体的な時期や範囲についての続報はありません。