GoogleのCEOサンダー・ピチャイが、自然な文章で質問に回答するAIサービス『Bard』と、Google検索への組込みを発表しました。
ピチャイ氏によると、BardはGoogleが以前から研究してきたLaMDA (会話アプリケーションのための言語モデル)を元にした「実験的会話型AIサービス」。
Google検索にBardを組み込むことで、複雑なトピックについて文章で概要を答えたり、2つのものを比較したり、複雑な条件にあう答えを返すなど、従来の検索では難しかった答えが出せるようになります。
例のひとつでは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の新発見について、9歳児に話すならどんな内容にすべき?」という問いに対して、
「2023年、JWSTは「グリンピース」という愛称の銀河系を発見しました。小さく、丸く、豆のように緑色だったのでこの名前がつけられました」
「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、130億年も昔の銀河の姿を捉えました。遠くの銀河の光が、130億年かけて私たちのもとに届いたということです。 」
「JWSTはわれわれの太陽系の外にある惑星の撮影に歴史上初めて成功しました。そうした惑星はExoplanets (太陽系外惑星)と呼ばれています。「Exo」は「外の」という意味です」
こうした発見は、宇宙の無限の驚異について子供の想像力を掻き立てることができるでしょう。
という、まるで人間がそのテーマについて書いたウェブページをたまたま発見したかのような、首尾一貫した文章で回答しています。(※参考人力訳)
追記: 天文学者ほか多くの人の指摘によれば、「太陽系外惑星の(直接)撮影に初めて成功した」は誤り。ESOの超大型望遠鏡VLTが地上から2004年に2M1207bを撮影したのが初。
そのほかBardの使い道として挙げたのは「友達の出産前祝いパーティーを計画する」「アカデミー賞にノミネートされた二本の映画を比較する」「冷蔵庫の材料で作れるお昼ごはんの案を探す」など。
Google検索は一般的な地理や歴史、社会や文化についての知識を蓄えた「ナレッジグラフ」を持つため、簡単な質問であれば現在でも回答そのものを返すことができます。
しかしGoogleが Bardの用途として挙げたような複雑な例は、このナレッジグラフだけでは回答できないため、現状ではたまたま偶然同じトピックについて人間が書いたウェブページを探すことしかできません。
これに対して、Bardは世界の知識を「Googleの言語モデルの持つパワー、知性、創造性」によって組み合わせ、複雑な情報や多くの視点を分かりやすくまとめた体裁で提示し、ユーザーが全体像を掴む手助けをする、ウェブで得た情報から「高品質で新鮮な」答えを返すと表現されています。
Bardは本日より「信頼できるテスター」に限定的に公開しフィードバックを得たのち、今後数週間のうちにもより広い範囲で一般向けに公開する予定。
テストはまず、フルバージョンのLaMDAよりもかなり小さな軽量版の言語モデルを用いて実施します。理由は処理に必要なリソースを大幅に少なくでき、より多くのユーザーにスケールさせ、多数のフィードバックを集められるため。
Googleは外部からのフィードバックと内部のテストをあわせて、Bardの回答が品質と安全性、および現実世界の情報に基づくことについて高い水準を満たすよう万全を期すとしています。
Googleと同じ原理に基づく大規模言語モデルを使った会話AIのChatGPTは、誤った内容を確信を持って答えたり、知識がないにも拘らず「分かりません」のかわりにもっともらしい答えを捏造する傾向があり、「AIは作話するもの」を印象づけた感があります。
会話AIとみればあらゆる手を尽くして陰謀論やヘイトスピーチを喋らせようと努力するユーザーが大勢待ち構えているなかで、品質と安全性、事実に基づくことを掲げたGoogleの取り組みがどこまでの性能を見せるのか、ChatGPTの印象を覆せるのかは注目です。
GoogleはこのBardおよび他の言語モデルに基づくAI技術を検索以外の自社製品に導入してゆくほか、サードパーティの開発者に対しても生成言語APIやツール一式を提供しAIアプリケーションの開発を手助けします。
Googleは日本時間2月8日午後10時30分から、ライブ配信イベント「Google Presents」を開催予定。BardはCEOによるブログ更新でやや唐突に発表されましたが、イベントではもっと具体的な内容や検索以外への応用も披露されるかもしれません。