マイクロソフトが、ChatGPTで知られるOpenAIのAI言語モデルを統合したBing検索エンジンとEdgeブラウザーを発表しました。
このBingのプレビュー版はすでにBing.comで提供しており、サンプルクエリーなら誰でも試すことが可能です(ただ、自分でさまざまな検索をしたい場合はサインアップして順番待ちリストに並ぶ必要あり)。
まだ限定的な公開ではあるものの、マイクロソフトは今後数週間でこのプレビューを数百万ユーザー規模に拡大していくとし、モバイル版も間もなくプレビューを公開する予定です。
マイクロソフトはAIによって「より優れた検索、より完全な回答、新しいチャット エクスペリエンス、およびコンテンツ生成機能を提供」するとしこれらをウェブにおける「AIコパイロット」だと説明しています。そして、このAI副操縦士とチャット機能を搭載したBingおよびEdgeブラウザーで「人々が検索とウェブからより多くのものを得られるよう支援する」としています。
新しいBing検索では、従来のウェブ検索では答えを得ることが難しかった複雑な主題や、何度も検索を繰り返して情報を集めて判断する必要があった内容について、AIが多数のウェブサイトを出典として答えを組み立て、概要とともに文章のかたちで提示できます。
例を挙げれば、たとえばケーキを作る際に、卵を別の材料で置きかえれられないかと尋ねれば、左側には従来のウェブ検索結果を表示しつつ、右側には置き換えとして考えられる食材と、使った場合の風味変化や考慮点を箇条書きにまとめ、それぞれに出典をつけて表示するなど。
そのほか、欲しい条件を示しての商品比較や、ある国を代表する画家のリストと作風、代表作についてのまとめを作成するといったことも可能です。
また旅行計画を予算などを含め詳細な立案から予約までをこなしたり、なにかを購入する際に重視したい事柄(所定の場所に収まるか否かなど)や機能を調べるといった、より複雑な検索を容易にする新しいチャット機能を提供。詳細な情報、明確な情報、アイデアを求めることで、探している答えが得られるまで検索を絞り込めるとしています。
デモの例では、「家族とゆく5日間のスペイン旅行の日程を作って」に対して、滞在先や観光地、移動経路を含んだ旅程を生成したり、その結果に対して「メールで送れるサマリーを作って」「スペイン語版も作って」といった指示にも対応します。
さらにメールの作成、面接前の準備、クイズの生成といったいろいろな用途にBingは答えるとし、AIが回答するのに使用した引用元へのリンクも確認可能とのことです。
一方、外観も新しくなったEdgeブラウザーのほうでも新しくAI機能が使用可能になり、特にチャットと生成(Compose)という、2つの主要な機能が利用できるようになりました。
こちらはEdgeサイドバーから、現在見ているウェブサイトやコンテンツに対して、AIに調べさせたり指示できることが特徴です。
たとえば長くて読みにくい決算報告書を読んでいるとき、AIに要約を作成させて要点をざっと理解するのに役立てたり、その結果に対して競合企業と比較してと言えば、表のかたちで各項目を比べて示してくれるなど。
LinkedInへの投稿の執筆を手伝ってもらったりすることも可能で、ユーザーがいま見ているウェブページの内容から、より要求を深く理解して出力を適応すると説明しました。
マイクロソフトは新しいBingがChatGPTとGPT-3.5 からの重要な学習と進歩を取り入れた「次世代のOpenAI大規模言語モデル」で実行されると述べています。そしてこの次世代モデルが、既存のものよりもさらに高速かつ正確で、より機能的だと主張、これを活用するための独自の方法である「プロメテウスモデル」を開発したとしています。
またBing検索のインデックス化や、ランキングエンジンでもAIモデルを導入した結果、「検索結果の関連性が過去20年間で最大の飛躍を遂げた」と説明、チャットやコパイロットを使わない通常の検索結果の関連性も高めているとのことです。
OpenAIが昨年11月に公開して以来、ChatGPTは学術的なレポートからクイズまでさまざまなテキスト生成に利用できる能力で人々の興味を惹きつけています。マイクロソフトは今回、検索とブラウザーでこれを活用できるようにしましたが、さらにOfficeスイート全体にもこれを統合することを発表済みで、AI技術が今後人々の生産性を大きく改善する可能性を備えています。
ただ、AI言語生成モデルは確信がないことがらについてもっともらしい誤りの回答を作ったり、学習に使用したデータセットの誤りをそのまま出力することを指摘されています。ChatGPTを使った事例でも「まるでそれが事実であるかのように自然に嘘をつく」こともあり、とくに学術的な文章や医学的アドバイスを生成した際にエラーが含まれる場合、人々に悪影響をおよぼす可能性もあります。
マイクロソフトとAIといえば、2016年にTwitter上で「Tay」と呼ばれるAIチャットボットを公開し、18~24歳のユーザーを主要な対象にテストを実施したことが思い出されます。
Tayは、Twitter上でユーザーとのコミュニケーションを通じて学習するようになっていましたが、良い情報も悪い情報もすべて吸収してしまった結果、不適切な発言を教え込もうとするユーザーのおかげで、ほんの1日足らずで反ユダヤ主義の過激思想を回答するようになってしまいました。
マイクロソフトは発表の場で、AIの回答については出典に基づくこと、および安全性を重視しているとして、言語モデル自体の調整から、さまざまなフィルタを用いて危険な可能性がある内容を排除すること、さらにAIを騙してエラーやヘイトを含むコンテンツを生成させようとする「脱獄 (jailbreaking)への対策も施しているとしました。
しかし一方で、AIにも間違いは起こりうるため、事実を確認するとともにAIがさらに学び改善できるよう、フィードバックの共有を求めています。