ポーランドのスタントパイロット、ルーク・チェピエラ氏が、ドバイのランドマーク・タワー「ブルジュ・アル・アラブ」の屋上にあるヘリパッドに、飛行機で着陸するチャレンジを敢行、見事に成功しました。その様子は記事中の埋め込み動画で確認できます。
チェピエラ氏は、レッドブル・エアレースに参戦した初のポーランド人でもあり、チャレンジャークラスで世界チャンピオンに輝いたキャリアの持ち主。今回の企画もやはり、レッドブルによるものです。
チェピエラ氏は、Carbon Cubと呼ばれる軽量ながら強力なエンジンを備える小型プロペラ機を駆使し、56階建てのホテルのてっぺん、海抜212mにある27m大のヘリパッドへの着陸にチャレンジしました。
Carbon Cubを製造するCubCraftersの副社長、ブラッド・ダム氏は「このプロジェクトには計画段階を含め2年を要したと述べ、クラス最高のSTOL航空機と非常に有能で献身的なパイロットによってその限界を押し広げるものになった」と述べています。また今回機体を提供したのは、僻地への物資輸送を担うブッシュパイロットで、YouTuberでもあるマイク・ペイティ氏はプロジェクトの実行にも関わっています。
チャレンジの結果はご覧のとおりで、ホテル屋上のヘリパッドにCarbon Cub STOLの特性を活かした低速での着陸を試みたチェピエラ氏は、2回のフライバイを経た3度目の挑戦でみごと着陸を成功させています。時速47kmという超低速でヘリパッドに進入した飛行機は、21mの滑走だけで機体を静止させました。
そして、このヘリパッドのわずかな範囲でどうやって離陸するのだろう?という疑問を考える間もなく、軽飛行機は亜酸化窒素、いわゆる「ニトロ」の助けを借りて急発進、この6角形のステージからなかば飛び降りるようにして、また大空へ舞い戻って行きました。飛行機をヘリパッドから離陸させるために、エンジンにニトロをぶち込む行為もまた、初のことだったとチェピエラ氏は述べています。
なお2021年以来、この日のためにチェピエラ氏はシミュレーターでのトレーニングだけでなく、ポーランド、米国、ドバイといった国の飛行場でトータル650回もの着陸テストを実行してきたとのこと。その結果、地面を視覚的に参照することなく着陸できるほどに熟練度を高めたとしています(本当か、ものの例えかは不明)。
このようなチャレンジは成功したことがわかっているから安心して見ていられますが、実際は非常に危険が伴うものです。昨年には2機の飛行機が飛行中にパイロットを入れ替えるというチャレンジが行われましたが、片方の飛行機が1万4000フィート(約4300m)上空でコントロールを失い、墜落する事故がありました。幸いにもパイロットは脱出、怪我人もありませんでしたが、今回のチャレンジもヘリパッドに車輪を引っかけたりすれば大事故になりかねないものでした。綿密な計画や下準備を経て行われるチャレンジではあるものの、最終的なリスクの大半はパイロットが負うことには違いありません。
ちなみに、チェピエラ氏の本職はエアバスA320のパイロットだとのこと。この人の操縦する旅客機なら、乗客も安心かもしれません。