アップルはメンタルヘルスの分野に力を入れており、Apple Watchが定期的に呼吸を整えることを勧める「マインドフルネス」もその1つです。
まだ正式に製品化・サービス化されていないものの、数年前にもiPhoneを使ってうつ病や不安症、認知機能の低下などを検出・診断する方法を研究しているとの報道もありました 。
その最新の取り組みとして、ユーザーが日々の活動を記録できる日記アプリを計画しているとThe Wall Street Journalが報じています。
日記のように紙に言葉を書き出す「ジャーナリング」は、脳にプラスの影響を与えるとの研究がいくつも報告されています。たとえば1日に15分ポジティブな日記を書くだけで、数週間後には不安の症状が顕著に和らいだとの発表もありました。
WSJが見た(おそらくアップル社内の)資料では、このアプリはユーザーが自分の活動や考えを記録できる「Day One」など日記アプリのカテゴリーに投入予定としていました。
Day Oneは日記アプリの老舗であり、ひたすらテキストを書き殴ったり、日々の写真を添付できるというものです。ただ書いたものを記録するだけであればEvernote等でも事足りますが、起動してすぐに書けるジャーナリングに特化したことに強みがあります。
このアップル製日記アプリの開発コード名は「Jurassic」で、ユーザーが日常生活を記録することに役立つように設計。ユーザーの行動を分析し、平均的な一日がどんなものかを診断し、他の場所と比べて家でどれほどの時間を過ごしているか、特定の日に例外的な行いがあったかも教えてくれるそうです。
さらに個々人に合わせたパーソナライズ機能として、ワークアウトなど書くべき話題を提案。さらにユーザーと他人の物理的な近さを検出する「All Day People Discovery」機能により、職場の同僚と友人を区別することも目指していると述べています。これまでアップルが集めてきたユーザーの日常生活データが活かされるというわけです。
そればかりか、テキストメッセージや電話(履歴?)にもアクセス可能の予定。iPhoneを持ち歩く人のデータを根こそぎ吸い上げる仕様のようですが、それだけに「プライバシーとセキュリティがソフトウェア設計の中心になる」と強調。ユーザーの行動分析はオンデバイスで行われ、そのデータが「通常」外部に送信や共有されることはない、としています。
Day Oneアプリ創業者のPaul Mayne氏とアップル広報にコメントを求めたところ、前者は「最悪の事態だ」と述べ、後者は「これまでアップルは知的財産を尊重し、他社の製品をコピーすることはない」と定型的な回答をしています。
アップルが先行した他社アプリやサービスの長所を取り入れ、サードーパーティ企業や開発者を悩ませることは珍しくありません。たとえばiOS 12にスクリーンタイムを導入した後に、その機能とかぶるアプリを削除ないし機能制限したとして、EU規制当局に苦情申し立てされていました。
本アプリがいつリリースされるか不明ですが、早ければ6月の世界開発者会議WWDC23で発表され、次期「iOS 17」の新機能として搭載される可能性があるそうです。
ただ、気になる「課金があるかどうか」には言及がありません。
たとえばDay Oneはフル機能を使いたい場合は年額3800円、後発ながら多機能なJourneyは月額450円または年額3400円(2100円でのタイムセールもあり)とそれなりに掛かります。もしもアップルがiCloudの一部として、あるいはまとめ払いサービスApple Oneに統合すれば、サードパーティには大きな脅威となりそうです。
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