チェコ・プラハ化学技術大学の研究チームは、通常なら数十日はかかるビール醸造における麦汁の熟成、発酵工程を大幅に短縮するとうたう、酵母ビーズ「BeerBots」を開発しました。
ビールが大麦などの穀物から作られることはほとんどの人が知っていると思われますが、その製造において、麦汁と呼ばれる麦の糖分を抽出した液体の発酵過程が数十日~約1か月もかかることを知っている人はあまりいないでしょう。そして、この発酵の際に、もしも雑菌などが混入すれば、最終的な風味が損なわれたり、最悪は麦汁そのものを破棄することにもなりかねません。
そこでチェコ・プラハ化学技術大学のMartin Pumera教授らは、発酵作用を促す活性酵母を、磁性酸化鉄のナノ粒子、藻類由来のアルギン酸ナトリウムと混ぜ合わせた、塩化第二鉄の溶液に1滴ずつ滴下させてコーティングした2mm大の酵母ビーズに加工しました。さらにこのビーズを電気化学セル内のアルカリ溶液にさらすことで、片面を多孔質化しました。
これを麦汁に入れることで酵母を含むビーズが糖を発酵させ、ビーズの表面に二酸化炭素の泡を生成します。すると、その泡にのってビーズが水面まで上昇し、そこで二酸化炭素を空気中に放出し、また沈むという往復動作をし始めます。この動きは液体内の糖分がすべて発酵し尽くすまで繰り返され、それが終わるとビーズは麦汁内に沈殿します。
通常のビール製造工程なら、酵母細胞を除去するためにろ過する必要がありますが、BeerBotsは磁石を使って回収できるため、ろ過よりも簡単かつ素早く取り除けます。
具体的にどれぐらい発酵工程が短縮されるかについては様々な条件もあるのか明記されていませんが、ろ過工程でも時間短縮と作業の簡略化が見込める点は労力削減に貢献しそうです。
ちなみに、BeerBotsは一度発酵に使用したら終わりではなく、さらに3回まで発酵工程で使用可能だったと研究チームは報告しています。
もし、BeerBotsを使って発酵させたビールと通常の方法で作ったビールで風味が変わってしまったりしないのであれば、BeerBotsは特に小規模なビールメーカーが設備投資を抑えつつ生産量を増やすのに役立ちそうです。